厳しい冬を越え、生命の喜びを感じる春が到来!
今年の冬は雪も多く、また冬将軍が度々やってくる近年まれに見る厳しい冬でした。だからこそ、その厳しい冬と鉄道を撮るべく撮影に臨んだ方も多かったのではないでしょうか。
かくいう私は豪雪に怖気づき、今年は雪の少ない地域へ撮影に行きました。しかし、それはそれで冬の清々しい朝の風景や澄み渡る青空など、雪国とは違った冬の絶景も撮れました。冬の撮影は遭難などの危険も伴いますので、皆さんが無事に撮影でき、良い作品が撮れたのでしたら、今冬も実に素晴らしい冬だったのではないでしょうか。
さて、そんな冬も過去の記憶。一気に気温も上がり、かなり春めいてきました。春は彩の季節。厳しい冬を乗り越えた木々が、生命の喜びを謳歌し始めます。動物も人も活動的になり、日に日に変わりゆく彩が、また美しい日本の原風景を生み出します。そんな風景を、是非鉄道と一緒に捉えたいものですね。春は冬以上に撮影に忙しい季節です(笑)。
日本の春の花と言えばやはり桜!
日本の春を代表する花と聞かれれば、多くの人は「桜」と答えるのではないでしょうか。
2月下旬時点での2023年の桜の開花予想は、3月18日頃の東京を皮切りに、約一カ月半かけて桜全線が北上するようです。この桜と列車の景色を求めて、桜前線と共に北上する人もいるのではないでしょうか。
さて、そんな桜の撮影ですが、ポイントをいくつかご紹介しましょう。
8分咲きなどの満開間近の場合は、木に近寄って標準レンズで撮影するよりも、離れて望遠レンズで撮影することをおすすめします。桜花がボリューム感に欠けるときに近づいて撮影すると空が多く写ってしまい、せっかくの桜がスカスカに見えてしまいます。
このような状況の場合、第3回の望遠レンズで撮影する編成写真について解説した、圧縮効果表現が有効になります。望遠レンズで圧縮し、桜の花同士や桜の木々同士を重ねることによって桜花の間に見える空間を無くすことで、桜花によりボリューム感を見せることができます。
また、天気は晴れも良いですが、もちろん曇天もおすすめ。晴れると、花の影や間から見える枝や背景が黒く写りがちで、美しさも半減。しかし、曇天のフラットな光は花や枝の影を無くし、全体的に柔らかな光となることで桜がふわっとした感じに写ります。
ただし、曇り空の場合は、空を入れることは厳禁。明るくて白い空が入ると、空よりも暗い桜は、くすんだ灰色に見えてしまいます。そのため、曇りの時は俯瞰して撮影できる場所を選びましょう。ちなみに、これは散りはじめの桜でも同様です。桜花のボリュームに物足りなさを感じたら、望遠レンズを使うということを覚えてください。
そして、いよいよ桜が満開になった時は、木に近づいて、広角~標準レンズで堂々たる桜を写すのがおすすめです。広角~標準レンズは、空間の広がりを見せるために使います。そのため、いっぱいに広がった桜の木を表現するのに適しています。
また、木の近くに行っても花が密集しているため、8分咲きのように、近づくとボリュームを損なうということはありません。なお、標準レンズでの撮影はどうしても空が入るので、できるだけ晴天時を選びましょう。
沿線に咲き誇る菜の花を狙う!
桜とほぼ同時期に見られ、また桜よりも比較的長く鑑賞を楽しめるのが菜の花です。
全国各地の鉄道路線沿線には、菜の花が植えられていることも多く、中には観光目的で線路脇に菜の花畑が作られている場所もあります。桜よりも比較的撮りやすい春の花ではないでしょうか。
そんな菜の花の撮影も、少しだけポイントがあります。菜の花も桜同様、満開の時期がベストです。ただ、桜と比べると花と花の隙間が大きいので、茎や葉などの緑が目立つ植物でもあります。
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時折見る構図が、広角~標準レンズを使い、立ちながら足元の菜の花まで向けるアングル。菜の花畑が足元から広がっていく風景を見せたい気持ちはわかりますが、その構図では、黄色い花よりも茎などの緑が目立ってしまい、花がスカスカに見えたりします。そのように撮影して、せっかくの黄色いじゅうたんが、少し物足りなく感