ニコンは6月21日、新レンズ「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」を発表しました。発売予定は8月で、ニコン公式オンラインショップでの価格は24万9700円となっています。
同社では、2015年に「AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR」という望遠レンズを発売していました。200-500mmはデジタル一眼レフ用(Fマウント)、180-600mmはミラーレスカメラ用(Zマウント)という違いはありますが、今回製品は事実上の200-500mmの後継機種と言えます。
鉄道コム編集部では、この180-600mmを、短期間ながらお借りすることができました。その使用感を中心にご紹介します。なお、使用したレンズはベータ機のため、製品版とは異なる箇所がある可能性もあります。
まずボディを見てみると、600mmや800mmの単焦点レンズほどではないとはいえ、その大きさが目を引きます。レンズの全長は315.5ミリ。200-500mmよりも大きく、カメラバッグを選ぶことになりそうです。一方、質量は約2140グラム(三脚座リングを含む)となっていますが、見た目ほど重い印象はありません。
ズームリングは、70度でテレ端からズーム端まで回る設計で、一気にズームしたい場合の取り回しが良くなっています。200-500mmではこの角度が大きく、ズーム時に苦労していたのですが、新レンズではこの点が改善されました。また、180-600mmはインナーズーム機構を採用しており、ズーム時でも全長が変化しない設計となっています。
では、実際の写真をご紹介しましょう。下の写真は敷地外から撮影したものですが、600mmとあって、離れた場所からでも車両の顔を写すことができました。
下の写真は、上の写真と同じ位置で撮影したもの。600mmという焦点距離を実現していながら、テレ端は180mmで、編成写真撮影にも対応可能です。
レンズはテレコンバーターの接続にも対応。「Z TELECONVERTER TC-1.4x」を接続すれば最大840mm、「Z TELECONVERTER TC-2.0×」では最大1200mmでの撮影が可能です。
鉄道写真の撮影にも使える本レンズですが、その他にも、飛行機、野鳥など、超望遠レンズが必須なジャンルでも重宝しそう。先述したように、本レンズではズームリングの回転角が70度となったので、戦闘機が縦横無尽に飛び回る航空祭のように、ズームリングをよく動かす場面では、200-500mmより使い勝手が向上しているのではないかと感じます。
鉄道写真ではありませんが、夜間撮影のものもご紹介。180mmでは最小でf/5.6、600mmでは最小でf/6.3と、決して明るいレンズではありません。ただ、レンズ内5.5段、加えてボディ側も含めた手ブレ補正機構は優秀で、スローシャッターでもブレが少ない写真が撮影できます。加えて、強い光源にレンズを向けた場合のフレアは、この価格帯の製品としてはよく抑えられている印象を抱きました。
レンズの全体的な描写については、他の「Zレンズ」同様、不満のないもの。高品質な「S-Line」群のレンズではありませんが、200-500mm同様、上位機種のように精細な描写を実現しています。
気になる点を挙げるとすれば、レンズの大きさのほか、オートフォーカスの動作スピードでしょうか。決して速いわけではなく、特にテレコンバーターを装着すると、もたつき感が出てしまいます。とはいえ、先代の200-500mmと同程度という印象で、個人的には大きな不満ではありません。
この180-600mmは、やはり超望遠レンズのため、70-200mmクラスのレンズのような編成写真撮影にピッタリな製品とは、使い勝手が異なります。とはいえ、この画角で撮影できるという点は、よく見られる300mmクラスのレンズにはない魅力です。約25万円という価格もかなりお得感があり、鉄道写真のみならず、旅客機、軍用機、野鳥、馬など、遠くの被写体を狙う撮影者にオススメなレンズです。