鉄道車両の「寿命」は、新幹線では15~20年ほど、在来線では短いもので約30年、長寿車でも約50年と言われています。もちろん、この年数に達したらすべて引退となるわけではありませんが、古い車両はメンテナンス費用がかさんだり、新型車両よりも取り扱いに手間がかかることがあるため、鉄道事業者としては置き換えを検討してもおかしくはありません。
そのようなベテラン車両たちは、すでに鉄道事業者が置き換えを発表したものもあれば、「そろそろ引退かも?」と噂が立ちつつも使われ続けているものもあります。しかし、いざ引退が発表されれば、多くの鉄道ファンが乗り納め・撮り納めのために現地へ訪れ、時折トラブルも起きています。「最後に乗りたい・撮りたい」という気持ちはファン共通のものですが、引退間際の荒れる現場を避けるには、普段からの乗車・記録も重要です。
まだ引退が発表されていない、あるいは中長期計画では示唆されているものの、あまり注目されていない、そんな車両たちをご紹介します。今回は国鉄型車両編です。
国鉄型気動車の大ベテラン 今も置き換え進むキハ40系
キハ40系は、国鉄時代の1977年から1982年にかけて888両が製造された、一般型の気動車。両運転台片開き扉のキハ40形、片運転台両開き扉のキハ47形、片運転台片開き扉のキハ48形の3形式(新造時)からなるグループです。
全国のローカル線などに投入されたキハ40系は、国鉄分割民営化に際しても、JR旅客6社全社に引き継がれます。各社では、効率性に課題のあったエンジンや変速機を換装するパワーアップ改造や、ワンマン運転に対応する改造などを実施。さらに、後継車両の導入によって余剰が生まれると、観光列車用に改造された車両が多数登場しました。
そんな全国各地で見られたキハ40系も、製造から40年以上が経過し、老朽化による置き換えが進んでいます。
JR東海では、キハ25形の導入により、2016年に置き換えを完了。JR東日本でも、GV-E400系などの後継車両で置き換えを進め、2021年に観光列車用・波動用車両を除く全車両の運用を終了しています。
JR北海道では、2020年にH100形の営業運転を開始し、同時にキハ40形の置き換えを始めました。2023年現在、函館本線の長万部~小樽間、根室本線の新得~釧路間などは、ワンマン普通列車は基本的にH100形の運転となっており、キハ40形による運用は以前より減少しています。一方で、2018年には「北海道の恵み」シリーズ、2019年には「山紫水明」シリーズが登場。一般仕様のキハ40形を改造したもので、大規模に手を加えられた車両ではありませんが、観光列車での使用を想定した内装となっています。
北海道では、今後もH100形の投入が続く予定です。また、現在H100形が投入されていない函館地区でも、2023年11月に旭川地区からキハ150形が転配されたことが確認されています。今後、新型車両の導入と、キハ40系より若い車両の転配で、置き換えがますます進むことが考えられます。
JR西日本では、まだまだローカル線での主力車両として活躍。「ベル・モンターニュ・エ・メール」(べるもんた)や「〇〇のはなし」といった観光列車用に改造された編成も存在します。2021年に導入された電気式気動車のDEC700が仮に量産されれば、キハ40系の置き換えも進むことが考えられますが、2023年現在は量産計画も不透明です。
一方で、北陸エリアの氷見線や城端線では、JR西日本からあいの風とやま鉄道への路線譲渡に向けた動きが見られており、譲渡にあわせて電気式気動車の導入も検討されています。これが実現した場合は、北陸を含む本州東側において、JRのキハ40系による定期普通列車は消滅する見込みです。
JR四国では、観光列車「伊予灘ものがたり」用に改造された車両を除き、国鉄から引き継いだ全車両が今も現役です。しかし同社は、2025年度から2030年度にかけて、新型のハイブリッド気動車の導入を予定しています。導入両数は確定していませんが、58両~70両を予定。51両在籍するキハ40系の両数を上回るため、同形式は遅くとも2031年までに全廃となることが考えられます。
JR九州においては、まだまだ九州全土で活躍中。ローカル線だけでなく、日豊本線に乗り入れて小倉駅に入線する日田彦山線の列車のように、都市部での運用も見られます。また、観光列車(D&S列車)に改造された車両も数多く存在。「はやとの風」は2022年に「ふたつ星4047」に再改造されたほか、「いさぶろう・しんぺい」も久大本線用の観光列車「かんぱち・いちろく」に再改造されるなど、これらのグループはまだまだ使用が継続されるようです。一方で、JR西日本とは異なり、JR九州ではDEC819系やYC1系といった後継車両を導入済み。2023年現在は製造が中断されていますが、今後の導入次第では、さらに運用範囲が減少することが予想されます。
JR各社で運用を終えた一部の車両は、私鉄に譲渡されて、第二の人生を歩むものもあります。2023年現在、譲渡された車両が活躍している日本の事業者は、道南いさりび鉄道、会津鉄道、小湊鉄道、北条鉄道、錦川鉄道の5社。決して新しい車両ではありませんが、道南いさりび鉄道は同社全車両がキハ40系で、小湊鉄道では既存車両よりも車齢が若い車両となっています。会津鉄道と錦川鉄道は観光列車用、北条鉄道では列車増発用としての導入。絶対安泰とは言えませんが、各社での活躍はまだまだ続きそうです。
国鉄通勤型車両の名車も残存数1% 西日本・九州で細々と走る103系
1963年にデビューした103系は、21年間で3447両が製造された通勤型電車。改造編入車を含めると3503両という巨大形式グループで、日本の旅客用車両の製造数としては、最も多い記録となっています。
そんな日本の鉄道史に残る103系も、デビューから60年が経過した2023年現在は、ほとんどの車両が置き換えられています。登場時のデザインを残す最後の編成だった和田岬線用のR1編成が営業運転を終了したことで、定期運用に就く車両は49両のみに。残存率は製造数の1%程度となってしまいました。
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103系や185系はいつまで走る? プレミアム会員にご登録いただくと、今後が危ぶまれるベテラン車両たちについての分析がお読みになれます。
2023年現在、103系が運用に入るのは、JR西日本の播但線と加古川線、JR九州の筑肥線・唐津線に限られています。播但線用の車両は、パッと見は登場時と同じような非貫通低運転台というデザイン。しかし、同線用の3500番台は、もとは中間車だった車両に運転台を接合する改造を受けたグループで、登場時のデザイ