10月26日から11月5日まで開催される「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」。2019年までは「東京モーターショー」として開催されていたイベントですが、従来は自動車がメインだったところ、今回は対象をモビリティ全般に拡大。従来の自動車展示は残しつつ、ロボットや「空飛ぶクルマ」、ドローン、そして電車までが展示されています。
今回展示されている電車は、JR東日本のFV-E991系。「HYBARI」の愛称を持つ、水素燃料電池の試験車両です。
「HYBARI」が展示されているのは、「Tokyo Future Tour」というゾーン。モビリティが変える未来の東京を体験できるエリアとなっています。走行する車両としてはお目見えしていますが、まだまだ営業運転段階には至っていない、まさに未来の乗り物である「HYBARI」。このゾーンにぴったりの展示コンテンツです。
この車両の床下には、トヨタ自動車が開発した燃料電池装置を搭載。水素と空気で発電した電力で走行し、排出物は水だけという、クリーンな走行システムとなっています。装置はトヨタの水素燃料電池自動車「MIRAI」のものがベース。1つのユニットに「MIRAI」4台分の装置が載っているということです。
現地にいたJR東日本の担当者によると、「HYBARI」は12月以降にも試験を再開する予定があるということ。試験車とはいえ、現役の車両がこのようなイベントで展示される事例は、なかなか珍しいのではないのでしょうか。
JR東日本では、水素燃料電池車両以外にも、蓄電池電車やハイブリッド式気動車、電気式気動車を導入し、非電化路線を走る従来型の気動車を置き換えてきました。他のシステムの後を追う「HYBARI」ですが、実証実験はおおむね順調だといいます。同社では今後、2030年ごろをめどに、水素燃料電池車両を営業運転に投入する予定。担当者は、既存のシステムと比較しつつ、このシステムを最適な路線に投入していくことになるだろうと説明していました。
鉄道媒体の「鉄道コム」ではあまり深く触れませんが、今回の「JAPAN MOBILITY SHOW」では、自動車各社が展示したコンセプトモデルの多くがEV(電気自動車)。環境への配慮が求められる昨今、各社ともそれを意識したであろうラインナップとなっていました。業界も方式も異なりますが、水素で走る「HYBARI」は、環境対策という面ではEVと同じ方向を向いています。
今回のイベントでは、HYBARI以外の公共交通機関の車両も、いくつか見られました。いすゞ自動車では、電気バス「エルガEV」を展示。既存の路線バス「エルガ」をEV化した車両で、エンジン搭載車と比較すると車両後部床下の機器搭載スペースに余裕が出るため、フルフラットな車内を実現しています。
EVモーターズ・ジャパンも、EVバスを展示しました。こちらはすでに販売されているモデルで、展示車は大阪メトログループの大阪シティバスが運行する車両。2025年の「大阪・関西万博」開催時に活用される予定となっています。