透き通るような空気感が美しい冬!撮影は計画的に!!
前回の「鉄道写真なんでもゼミナール」は、「秋編」と題して、秋の鉄道写真撮影の準備や心構えなどをお話ししました。
今年は、真夏日や夏日の日数が更新されるほどの猛暑でした。そのため、秋の到来が例年より遅くなり、紅葉も全国的に数日ほど遅れてしまったようです。夏が暑いと、木々の水分と体力が無くなり、紅葉の色付きは悪くなると言いますが、比較的標高の高いところなどでは、逆に鮮やかな色合いを見せていたとか。皆さんは、紅葉を入れた鉄道風景写真を撮影されたでしょうか。
さて、今回の「鉄道写真なんでもゼミナール」は、「冬編」に突入!彩り豊かだった木々は葉を落とし、やがて無彩色の世界へと変わります。一見華やかさが無いように見える季節ですが、そんなことはありません。私は冬の風景が大好きです。なんといっても透き通るような空気感が光の表情をより際立たせてくれます。
冬と言えばやはり雪ということで、今回の作例やお話は雪にちなんだものが多くなりますが、皆さんの撮影のご参考になると幸いです。
雪の鉄道風景写真撮影は一苦労も二苦労も……
冬の鉄道風景写真と言えば、やはり雪景色!白銀の大地を列車が走りゆく姿は何とも言えません。日本人の魂を揺さぶる、演歌のような世界です。冬の鉄道風景写真といえば、このような作品を思い浮かべる方も多いでしょう。私も全く同じで、北海道や東北などで雪の便りが届くとそわそわ……、というか焦りを覚えてしまいます(笑)。
とある気象予報士が言っていたことではありますが、夏が猛暑だと、冬は大雪になりやすいとのことです。私の経験でも、確かにそれはあるなと感じています。今年はたっぷりの雪と鉄道写真の素晴らしい作品が撮れるチャンスかもしれません!
雪景色で大切なのは、雪の積もり具合です。特に木々への雪のかかり具合が「き」にかかります。「木」だけに……(笑)。
雪晴れの日に雪景色を撮影したいという気持ちは私もありますが、枝葉に着いた雪は、太陽の光を浴びると途端に溶けて落ちてしまいます。運が良ければ、列車の通過前まで降雪があって、列車がくる数分前に雪が止んで太陽が顔を出す、ということがあるかもしれませんが、そんな経験は私もほとんどありません。高望みをせず、雪晴れの景色を狙うか、木々にこんもりと雪が積もった風景を狙うかの、どちらかに絞りましょう。
木々に雪が積もった撮影をしたいと思っても、これまた難しいのが雪の降り具合。陽光を望まないとしても、せめて雪が止まないと視界が降雪で遮られてしまい、撮影もままなりません。冬に雪が降りやすい地域は、北海道から東北、北陸、そして山陰地方にかけてですが、冬型の気圧配置が強くなる時は、降雪が強まり視界もままならないことが多くなります。
撮影のタイミングとしては、冬型が強くなって雪が積もり、その後に冬型が弱まる時が狙い目です。気圧配置が西高東低ならぬ「東高西低」になる時がそれで、雪の降り方も弱くなり、晴れ間も見える時があります。天気予報を細かくチェックしておくことも大切です。
いよいよ、電車や車で現場の近くまで来ました。さあ、これからがまた大変です。雪景色の綺麗な場所へのアプローチルートは除雪されていないことが多く、ラッセル(雪を掻きわける行為)しながら現場へ向かうことになります。雪の無い季節だと歩いて3分程の場所が、ラッセルして進むとなると10分以上かかることもあります。少しでも早く安全に撮影地に着くためにも、スノーシューやかんじきを用意しておきましょう。
スノーシューは値段が張って手を出しにくいですが、かんじきはかなりリーズナブル!ホームセンターなどで、プラスチック製のものが1000円前後で購入できます。しかもなかなか丈夫で、ヘビーウエイトな私ですら4年間使っていても未だに壊れません。
かんじきが用意できたら、あとは体力の用意を!先述した通り、ラッセルはかなり体力を消耗します。時にはラッセルに時間がかかってしまい、お目当ての列車に間に合わなかったなんてことも……。常日頃から体力づくりも大切です。ラッセル前に栄養ドリンクやエナジードリンクを飲むのも有効かも!?鉄道写真撮影はスポーツなのです!
最後に撮影のコツですが、雪景色はほかの季節に比べて露出が明るめです。それは、曇っていたり降雪した状態でも同じです。特に、雪原ではレフ板効果もあって、列車は明るく照らされます。普段の季節よりも、1/3~2/3段アンダーの露出を心掛けましょう。
冬はつとめて!
「冬はつとめて。 雪の降りたるは、言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、また、さらでもいと寒きに……」。皆さんご存じ、清少納言著「枕草子」の一節ですね。「冬は早朝が良い。雪が降っているとなおさら良い」という意味から始まります。ちなみにその後に続く文は「女中が暖を取るため炭を各場所へ忙しそうに置いて回っている」と書かれています。そんな風景を見た清少納言は、これこそ冬のワンシーンということで趣がある、「いとおかし」と感じたのですね。
さて、枕草子の一節だけでなく、冬の鉄道写真撮影で最も狙いたいのは、朝の風景。一番冷え込んだ朝の空気は透明感があり、ほかの季節ではなかなか見られない澄み具合です。また、日中や夜中に大気中へ放出された水分が冷え込んで霜となり、草木を覆います。特に冷え込みが厳しいと、凍り着くことで霧氷にもなります。そんな風景を狙えるのは冬の朝だけなのです。
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そんな霜や霧氷の風景を撮る上で大切なのは、光線状態。順光では、霜や霧氷は枝や草の色に負けて、なかなか写りません。霜や霧氷は逆光で撮影しましょう。そうすれば、草木のまわりにふわっとした霜や霧氷が現れます。また、朝日の赤味を活かせば、一面が赤い大地の風景となって、ほかの季節では見られないような光景になり