ニコンが2023年9月に発表したミラーレスカメラ「Z f」。1982年に発売されたフィルムカメラ「FM2」をデザインモチーフとしたヘリテージデザインのカメラで、シャッタースピードやISO感度の設定用という、現代のカメラではあまり見られないダイヤルを、ボディ上面に設置しています。
デザインが注目されやすい「Z f」ですが、そのスペックは普及機なみで、機能面では普段使いでも問題ないレベルです。
ニコンは2021年にも同様のコンセプトの製品「Z fc」を発売していますが、こちらはAPS-Cサイズセンサーを搭載したモデルです。一方、今回の「Z f」は、フルサイズセンサーを搭載した上、画像処理エンジンはフラッグシップモデル「Z 9」などと同じ「EXPEED 7」を使用しています。機能的にも上位機である「Z 9」「Z 8」と同等、あるいはそれ以上。たとえば手ブレ補正機能は8段分で、「Z 9」「Z 8」の6段よりも上となっています。
センサー画素数などは2020年発売の「Z 6II」に近いのですが、機能は先述した通り新世代機相当。ヘリテージデザインのボディ+「Z 6」シリーズのスペック+「Z 9」「Z 8」並の機能を持たせたモデルで、一部では将来発表される「Z 6III」(?)のスペックを先取りしているのでは、とも噂されています。
そして、上位機譲りの機能を搭載しながらも、お値段は比較的控え目です。「Z 9」は80万円弱(ニコンのオンラインショップ価格、以下同)、「Z 8」も60万円弱ですが、「Z f」はボディ単品で30万円前後。センサー画素数が近い「Z 6II」と同価格帯の製品です。見た目や使い勝手はともかく、中身と価格は普及機帯なのです。
加えて、ニコンイメージングジャパンによると、「被写体を限定せず、自分の表現の幅を拡げ個性を示していただきたいという思い」から、オートフォーカス(AF)の被写体認識機能において「乗り物」を採用。鉄道車両のほか、クルマや飛行機などの認識が可能となり、「ぜひ多くのクリエイターに撮影を楽しんでいただきたい」(同社)という思いが現れた製品となっています。
であれば、鉄道ファンでニコン製品ユーザーでもある筆者が気になるのは、「『Z f』は鉄道写真撮影でも使えるのか」。ただ撮るだけならばどんなカメラでも(それこそ「写ルンです」でも)できますが、やはりカメラの使い勝手は良ければ良いほど、撮影時の満足度も上がります。
見た目だけでなく、スペックも最新機種らしく妥協していない「Z f」。はたして鉄道写真撮影に使えるのでしょうか。無謀にも鉄道写真撮影にも使用するカメラとして購入した筆者が、その結果をご紹介します。
見た目全振りのデザイン グリップの握り心地は?
まずはボディから見ていきましょう。
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見た目が特徴的な「Z f」。鉄道写真撮影ではどう活躍できる? プレミアム会員に登録すると、実際に鉄道写真を撮影したレビューがご覧いただけます。
この「Z f」の特徴は、なんといってもそのデザイン。先述したように、ボディ上面には大きなダイヤル2個を搭載し、いわゆる「ペンタ部」はフィルムカメラのようなカクカクした形。撮影に持ち出さずとも、眺めて触っているだけでも楽しいカメラです。一方で、デザインを重視した結果、グリップ性は他製品より大幅に低下し