11月18日~19日、山手線の渋谷駅で、線路の切換工事が実施されました。
渋谷駅では2018年から、駅改良工事にともなう線路の切換が断続的に進められてきました。今回の工事は、その最終段階となる5回目。山手線の線路とホームをかさ上げする内容です。
高架駅の渋谷駅では、線路の下に連絡通路が設置されていますが、線路の位置の関係で、通路に最大14パーセントという急勾配がありました。加えて、埼京線の線路(すでにかさ上げ済み)下では高さが最低2.1メートルと高さが低い部分があり、これらをすべて解消し、フラットで天井が高い東西自由通路を構築するため、今回の工事が実施されました。
線路のかさ上げを目的とした今回の工事では、運休時間を最小限とするため、事前に着手可能な部分で作業が進められていました。ホーム部の大部分では、線路を仮設の桁の上に載せ、作業当日はジャッキなどで最大約0.2メートル上昇させました。また、ホーム区間外でも高さの変更があり、工事前までに最大0.3メートル、今回の工事で最大0.22メートル上昇。切換工事後も、最大0.41メートル上昇させるといいます。
線路のかさ上げ作業では、レールの位置だけではなく、ホームの高さも上昇させる必要があります。ここでは、ホームという構造物自体をジャッキで上昇させるのではなく、仮設の床をかさ上げする方法で、作業が進められていました。ホームの下には鋼管が配置されており、その上に木の土台を置くことで、ホーム高さを調整する仕組みです。もちろん、これは仮設の床のため、今後あらためて本設ホームの工事が進められる予定です。
また、今回の工事では、線路のかさ上げだけでなく、停車位置の変更も実施されました。ホームを新宿方に約26メートル(1両強分)延長し、停止位置を変更。大崎方のホーム約25メートル部分は通路化します。これにより、ハチ公口改札、国道南口改札につながる昇降設備を、それぞれ整備する狙いです。
今回の取材では、1月の工事で使用を終了した旧外回りホームに立ち入ることができました。現在も営業当時の面影を残すこのホームは、今後の再開発にあわせて順次撤去する計画だといいます。
渋谷駅では、今回の工事の前にも、2018年5・6月に埼京線南行(大崎方面)の線路を移設する工事、2020年5・6月に埼京線ホームを山手線ホームの並列位置に移設する工事、2021年10月に山手線内回りホームを拡幅する工事、2023年1月に山手線外回り線路を移設し内外ホームを統合する工事が、それぞれ実施されました。いずれも列車運休をともなうものでしたが、環状線である山手線の工事では、内外いずれかは本数を減らしながらも列車が運転されており、その横で工事を進めるという困難な作業が展開されました。
渋谷駅では、JR線のほか、東京メトロ銀座線でも線路切換工事が進められ、2020年1月に現在のホームの供用が始まっています。さらに振り返れば、2013年3月の東急東横線と東京メトロ副都心線の直通開始で、東横線渋谷駅が地上(高架線)から地下に移設されています。この10年間で、渋谷駅の線路は大きく変化しました。
今回の工事が終了したことで、渋谷駅の線路切換工事予定は完了したことになります。とはいえ、渋谷駅の工事自体が終了したわけではありません。かつての東急百貨店本店や同東横店の跡地には、再開発ビル「渋谷スクランブルスクエア」第II期(西棟・中央棟)が、2027年度の開業を目指し、建設される予定です。渋谷駅は、まだまだ未来に向けた工事が続いていきます。