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新車両リポート

東京メトロの「同形式なのに別物」な中間車ふたたび! 9000系8連化用増結車が公開

2023年12月13日(水) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

東京メトロは12月13日、8両編成となった南北線用の9000系を、報道陣に公開しました。

8両編成となった9000系
8両編成となった9000系

9000系は、1991年の南北線開業時にデビューした車両。これまで路線の延伸などにあわせて断続的に増備されており、デビュー時は4両編成、1996年以降は6両編成で運転されてきました。現在は南北線内のみならず、埼玉高速鉄道線や東急目黒線、東急新横浜線へも乗り入れる車両です。

今回導入した増結車は、南北線の混雑緩和を目的に製造したもの。編成あたりの定員は、6両編成時代の882人から、1200人へと増加しています。

9000系の増結車は、既存の6両編成の中間に組み込まれます。外観のデザインは前後の車両とそろえていますが、車内は新型車両に準拠したものとなりました。

今回組み込まれた増結車
今回組み込まれた増結車

増結車は、今回公開された09編成の既存車と同じ、川崎車両(旧・川崎重工)が製造。そのため、川崎車両が製造した東京メトロ向け車両として最新である、千代田線用の16000系を、車体設計や車内デザインのベースとしました。

車内では、袖仕切りが既存車より大型となり、木目とガラスを採用した16000系と類似した形状に。座席モケットのデザインも変更されました。また、車端部には各車1か所ずつフリースペースが設けられており、車いすやベビーカーの利用者などに配慮しています。そのほか、防犯カメラの設置、脱線検知装置の搭載など、現在東京メトロが導入している新型車と同様の設備・機器を搭載しています。

増結車の車内。16000系をベースとしたデザインです
増結車の車内。16000系をベースとしたデザインです
大型袖仕切りや新しいモケットを採用した座席
大型袖仕切りや新しいモケットを採用した座席
各車1か所にフリースペースを設置
各車1か所にフリースペースを設置
貫通路扉にはラインカラーをイメージしたデザインが
貫通路扉にはラインカラーをイメージしたデザインが

外観では、16000系をベースにしたということで、ストレートな車体裾部や、万が一の脱線時の衝突対策として車体角を強化する「オフセット衝突」対策を盛り込んだ妻面など、既存車両とは外観が異なります。9000系は、1988年にデビューした05系の流れを受け継ぐ設計で、増結車のベースとなった16000系(2010年デビュー)とは、設計に20年以上の差が。この製造年による違いが、連結部に表れています。

既存車(左)と増結車(右)
既存車(左)と増結車(右)
車体裾部が、既存車(左)では斜めになっていますが、増結車(右)ではストレートな形状です
車体裾部が、既存車(左)では斜めになっていますが、増結車(右)ではストレートな形状です

東京メトロでは、前身の営団地下鉄時代にも、半蔵門線用の8000系を10両編成化する際、世代差のある増結車を組み込んでいました。「同形式なのに別物」という存在が、30年越しにふたたび現れたことになります。

半蔵門線用の8000系。左が初期製造車(1981年デビュー)で、右が8両編成化の際に増備された車両(1994年製)。車体裾の長さや窓の寸法などに違いがあります
半蔵門線用の8000系。左が初期製造車(1981年デビュー)で、右が8両編成化の際に増備された車両(1994年製)。車体裾の長さや窓の寸法などに違いがあります

また、南北線へ乗り入れてくる東急の3000系も、8両編成化の際に、増結車を新造し連結しています。組み込み先編成と新造車で製造年が20年以上も離れているこちらも、5000系列に準じた車体と、2020系列に近い内装で製造されており、東京メトロ9000系に近い状況が生まれています。

ただし、16000系と全くの同一設計というわけではなく、既存の9000系に仕様をそろえた部分もあります。たとえば、妻面の貫通路について、16000系などでは9000系よりも幅が広く、貫通路扉の両側もガラス張りとなっていました。一方、増結車では16000系より狭い貫通路幅の9000系既存車と連結するため、貫通路幅を16000系よりも狭いものに。現在の新型車両ではガラス張りとなっている部分も、こちらでは単なる壁となりました。

増結車の貫通路まわり
増結車の貫通路まわり

今回の増結車の連結にあたっては、既存の6両についても大規模改修が施されました。全車両へのフリースペース設置、セキュリティカメラや脱線検知装置の搭載、扉上へのデジタルサイネージ搭載など、設備・機器類は増結車とそろえられています。座席モケットの変更はありませんが、座席の袖仕切りには、ポリカーボネート製の板が設置されています。

リニューアルされた既存車の車内
リニューアルされた既存車の車内
袖仕切りにはポリカーボネート製の板を設置。従来のリニューアル車では大型袖仕切りを設置することもありましたが、9000系ではコスト削減のため、このような改造となりました
袖仕切りにはポリカーボネート製の板を設置。従来のリニューアル車では大型袖仕切りを設置することもありましたが、9000系ではコスト削減のため、このような改造となりました
座席モケットはそのまま
座席モケットはそのまま

足回りについても、大きく手が加えられました。走行用機器としては、SiC素子を使用したVVVFインバータ制御装置を搭載。補助電源装置(SIV)も新しいものに交換されました。ちなみに、SIVは新世代のハイブリッドSiC素子を採用しており、17000系・18000系よりも省スペース化・小型化を実現しています。6両編成のまま大規模改修を受ける編成があり、その際の機器搭載スペースが課題となったことから、小型化できる新世代素子の採用に踏み切ったのだといいます。

VVVFインバータ制御装置
VVVFインバータ制御装置
補助電源装置(SIV)。17000系や18000系よりも小型となりました
補助電源装置(SIV)。17000系や18000系よりも小型となりました

加えて、運転台も改造され、速度計などの計器類が、従来の指針式メーターから液晶ディスプレイに更新されました。

速度計などが液晶ディスプレイとなった運転台
速度計などが液晶ディスプレイとなった運転台

南北線との直通列車を運転する東急では、2023年3月の東急新横浜線開業と、これによる相鉄線との直通運転開始を前に、目黒線車両の8両化に着手。2022年4月に8両編成の運転が始まり、現在は同線用の3000系、5080系、3020系の全編成が8両編成となっています。

8両編成に増結された、東急目黒線用の5080系
8両編成に増結された、東急目黒線用の5080系

また、南北線とともに東急目黒線へ直通している都営地下鉄三田線でも、2022年5月に8両編成の新型車両、6500形の営業運転を開始。既存の6両編成を一部置き換えることで、8両編成化を進めました。

都営地下鉄三田線用の6500形。当初から8両編成で製造されています
都営地下鉄三田線用の6500形。当初から8両編成で製造されています

東京メトロでも、南北線用車両の8両編成化を計画し、2021年には今回公開された9109編成の増結車が甲種輸送されていました。しかしその後、他の編成用の中間車は現れず、甲種輸送された車両も使われないまま。新横浜線の開業から9か月が経過し、ようやく今回のお披露目となりました。

東京メトロ 車両部設計課 課長補佐の渡辺智也さんは、車両製造から2年が経過したタイミングでの増結の実現について、車両改造を実施した新木場CR(新木場駅付近の車両工場)側のスケジュールが影響したためと説明しています。

9000系の8両化は、現在のところ、09編成から21編成までの13本が対象となるということ。2016年から2019年にかけて大規模改修が実施された08編成以前の編成は対象外になるようです。また、大規模改修(リニューアル)と8両化は別メニューのようで、先述したように、6両編成のまま大規模改修を受けて出場する編成もある予定だといいます。

増結車を連結した9000系8両編成は、12月16日に営業運転を開始する予定。渡辺さんは、今回の大規模改修は車両寿命の半分が経過したタイミングで実施しているといい、今後20~25年ほど使用することになると説明していました。

 

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