3月16日に金沢~敦賀間の延伸開業を予定している北陸新幹線。2月1日、関係者向けの試乗会が開催されました。
いよいよ福井県へ到達し、北陸3県すべてをカバーすることになる北陸新幹線。その新しい区間の模様をお伝えします。
試乗会列車は、越前たけふ、福井、芦原温泉の3駅に停車。福井県内は全駅に停車し、石川県内は金沢駅のみに停まるという停車パターンは、開業後の定期列車では設定が無いため、少しレアな列車です。
乗車する車両は、JR西日本のW7系。JR東日本のE7系と同じ仕様の車両で、W7系は2015年の長野~金沢間開業時から使用されています。なお、敦賀延伸開業にあたっては11本が増備されていますが、細かな仕様変更こそあれど、既存編成と見た目が大きく異なるといった差異は無いようです。
敦賀駅を出た新幹線は、まず短いトンネルを通過すると、続いて長いトンネルに突入します。これは「新北陸トンネル」。延長約20キロと、北陸新幹線では2番目に長いトンネルで、国内にある開業済みの鉄道トンネル全体と比較すると、6番目の長さだといいます。
在来線の北陸本線にも、敦賀~南今庄間に、延長約14キロの「北陸トンネル」が存在します。開業時は国内最長のトンネルで、現在も国内有数の長さをほこります。在来線特急の「サンダーバード」などは、このトンネルを最短7分で走破しているそうですが、これとともに嶺北と嶺南を結ぶ北陸新幹線の新北陸トンネルは、在来線より約1.5倍の長さとなったものの、最短5分で通過します。
そして、新北陸トンネルを通過すると、列車は越前たけふ駅に到着。駅間は12分。あっという間です。
北陸新幹線の延伸区間では、加賀温泉と越前たけふの2駅に、待避線が設けられています。両駅の構造は、中央にホームの無い通過線、その両脇にホームつきの待避線を持つというもので、いわゆる「新幹線型」の配置。新幹線全体では、東海道・山陽新幹線、東北・上越新幹線の途中駅でよく見られる構造ですが、北陸新幹線や九州新幹線、北海道新幹線(ただし奥津軽いまべつ駅、木古内駅は片側ホームのみこの構造)など、いわゆる「整備新幹線」の路線では、この構造はこれまでありませんでした。
再び動き出した列車は、9分ほどで福井駅に到着。途中、越前たけふ駅の停車駅が長めに取られていましたが、敦賀駅からは24分で到着しました。「サンダーバード」が敦賀~福井間を途中無停車でも約30分掛けていることを考えると、かなり速いという感覚です。
福井駅は、島式の1面2線というホーム構造。こちらも新幹線では珍しい配置で、待避線がある構造では東海道新幹線の三島駅、過去の例では東北・上越新幹線の東京駅開業時といったものがありますが、それらを除けば福井駅が唯一の存在です。
福井駅を発車し、しばらくすると、列車は九頭竜川を渡ります。この川を渡る「九頭竜川橋りょう」は、新幹線では唯一となる、鉄道と道路の併用橋。新幹線の線路の両脇を道路が挟むという構造です。乗っていればあっという間に通過してしまいますが、地上では新幹線観察の人気スポットとなりそうです。
この延伸区間に乗っていて気づくのが、トンネルの少なさ。近年開業した新幹線では、できるだけ最短経路のルートとするため、トンネルが多くなる傾向にあります。もちろん、北陸新幹線の金沢~敦賀間でも最短に近いルートが採用されているのですが、今回の延伸区間は比較的平坦な場所を通っているため、トンネルは延伸工事区間全体の30パーセント台にとどまるといいます。先述の新北陸トンネルを含む福井~越前たけふ~敦賀間、県境を越える加賀温泉~芦原温泉間はトンネルが多いものの、金沢~小松~加賀温泉間、芦原温泉~福井間は逆にトンネルがない区間です。
金沢への道中、新幹線の横を通る北陸本線を、同じ金沢行きの「サンダーバード」9号が走る姿が何度か見られました。大阪駅から金沢駅までの間、新大阪、京都、福井の3駅にしか停まらない、速達タイプの列車です。この特急は、福井駅を試乗会列車より5分早く発車しましたが、金沢駅に到着したのは4分後。試乗会列車は芦原温泉駅で3分弱停車していたわけで、それでもノンストップの在来線特急より(当たり前ですが)速いのです。新幹線の速達性をまざまざと見せつけられたという印象です。
今回の試乗会は往復での乗車。復路も往路と同じ停車駅で、所要時間は55分でした。ほぼ同じ時間で北陸本線では停車駅が多いタイプの「サンダーバード」22号が走っているのですが、こちらは金沢駅を約10分早く出発するにもかかわらず、敦賀駅の到着は試乗会列車の約25分後。停車駅の数が違うこともありますが、こちらも新幹線の速さが際立ちます。
なお、試乗会列車は最高速度の時速260キロをキープしていたわけではないようで、遅めの速度で走る場面もありました。延伸開業後の金沢~敦賀間の所要時間は、速達タイプの「つるぎ」で40~45分、停車タイプでも1時間弱で、いずれにしても、同区間は在来線特急より所要時間がこれまでよりも短縮となります。
また、在来線よりも快適だという印象を受けたのが、列車の揺れの少なさ。もちろん、新幹線でも全く揺れないわけではないのですが、在来線特急が最高速度で走った際の大きな揺れと比べれば、乗り心地の良さはかなり上です。
今回試乗した新幹線は、在来線と比べると、その速さ、というよりもスピード感は圧倒的。乗り心地も在来線特急より格段に良好です。北陸エリア内での移動、および首都圏方面~北陸間の移動であれば、これまでよりも便利かつ快適な移動が可能となります。