鉄道コム

鉄道車両の仕組み

カーブで車体を傾けて走る「振り子車両」の仕組みとは?

2024年3月31日(日) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

日本の国土は、全体の7割以上が山地だと言われています。私たちは、残りの平野部に街をつくり暮らしているわけですが、その都市間を結ぶ中長距離鉄道路線は、海沿いを走る一部の路線を除き、山地を通ることを余儀なくされています。

現代であれば、全長約26キロの東北新幹線八甲田トンネルを筆頭に、山岳地帯を長大トンネルで貫くことが可能です。しかし、建設技術が今より未熟だった頃に建設された路線では、長大トンネルの建設を避けるため、スイッチバックやループ線などで峠を越えたり、あるいはわずかな平地を求めて右に左にカーブする線路を敷くことで、山地という障害を乗り越えていきました。

カーブが連続する鉄道路線
カーブが連続する鉄道路線

列車は、カーブで速度を出しすぎると脱線してしまいます。また、脱線までいかなくとも、カーブを猛スピードで通過すると、外向きに遠心力が掛かるため、乗り心地が悪化してしまいます。そのため、列車は急なカーブを通過する際には、速度を落として進入します。そのため、カーブが多い路線では、スピードアップが困難となってしまいます。

そのようなカーブが多い路線でも、スピードを落とさずにカーブに進入できれば、所要時間の短縮は可能です。そうした経緯で誕生したのが、「振り子式車両」などの「車体傾斜式車両」です。

鉄道路線の急なカーブには、制限速度が設けられるのが一般的です。仮に速度を出しすぎたまま列車がカーブに進入してしまうと、乗客に大きな遠心力が掛かり、乗り心地が悪化します。加えて、列車の安全性も損ない、最悪の場合は脱線という大事故につながってしまいます。

ただし、安全性が第一とはいえ、列車がカーブに入るたびに減速していると、スピードアップの弊害になります。カーブを通過する際に問題となるのは、先述した通り、乗客の乗り心地と通過列車の安全性の2つです。しかし、乗客が乗り心地を悪く感じる速度は、安全性を損なう速度よりも下です。乗り心地さえ解決できれば、安全な範囲で制限速度の向上が可能となります。

残り13378文字/全文:14654文字

日本の山間部を走る特急列車などで活躍する「車体傾斜式車両」。プレミアム会員に登録すると、その仕組みの解説がご覧になれます。

プレミアムサービスのご案内 / 会員の方はチェックイン

プレミアム会員の入会はこちらから

遠心力を小さくするための線路の工夫が、外側のレールを高くし、内側のレールを低くすることで、線路を傾ける「カント」です。カントがあると、カーブを通過する車両は車体が内側に傾くため、乗客に掛かる遠心力は緩和されます。そのため、理論上はカント量を大きくすればするほど、遠心力の緩和によるスピードアップが可能

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

アンケート

このリポート記事について、よろしければ、あなたの評価を5段階でお聞かせください。

鉄道コムおすすめ情報

画像

ラストランは2月10日

「青胴車」5001形は2月10日にラストラン。引退前の「乗車会」開催や、引退記念グッズ発売も。

画像

「T4編成」展示へ

1月で引退の「ドクターイエロー」T4編成、先頭車がリニア・鉄道館で保存へ。6月に展示開始予定。

画像

幻の東京圏「改良計画」とは?

1950年代の国鉄は、東京圏を今と違った形に改良する計画を持っていました。その中身とは?

画像

「サステナ車両」5月デビュー

元小田急の西武8000系が、車両基地を出場。デビューは2024年度末から2025年5月末に変更。

画像

撮影スタイルとレンズ選び

撮影スタイルにあったレンズ選びについて、プロカメラマンが解説! 今回は、標準~望遠・超望遠レンズ編です。

画像

1月の鉄道イベント一覧

2025年も鉄道コムをよろしくお願いします。1月の計画立案には、イベント情報をどうぞ。

画像

イベント投稿写真募集中!

鉄道コムでは、臨時列車や基地公開など、さまざまなイベントの投稿写真を募集中! 投稿写真一覧はこちら。