現工場の敷地跡はどうなる? 新京成車の宗吾入場は実現する?
先述した通り、今回の拡充工事は、工場の老朽化対策と、空港アクセス列車増強対策の2点が目的です。そのためには、車両の検査設備だけでなく、車両の留置設備も増強する必要があります。順当に考えれば、新工場が竣工した後に既存工場のスペースへ留置線を整備することとなりそうですが、京成電鉄の担当者は「現段階で明確に答えられることはない」と説明します。
一方で、担当者は「教育施設の整備」という構想にも触れていました。京成電鉄の社員研修施設は、現在は宗吾車両基地の横にあります。将来的にはこれを移転、あるいは拡充するという構想があるようです。
また、京成電鉄では、同じ京成グループの新京成電鉄を、2025年4月に吸収合併する予定となっています。現在の新京成電鉄では、くぬぎ山駅付近の車両基地で全ての検査を実施しています。しかし、京成と新京成が同じ会社となり、かつ宗吾車両基地の検査機能が向上するのであれば、大規模検査機能は宗吾車両基地へ統合した方が、コストパフォーマンス面で有利となります。この点について担当者は、「現在は合併に向け調整中。合併後の対応については今後検討していく」と説明。車両基地を再編するという回答はありませんでした。
ただ、ここからは筆者の想像ではあるのですが、くぬぎ山車両基地自体は、今後何かしらの動きがあるのではと考えられます。現在整備計画が進められている、外環自動車道と成田空港方面を結ぶ国道464号線バイパス「北千葉道路」は、自治体の都市計画図によると、くぬぎ山車両基地の位置で新京成線と交差する計画となっています。また、千葉県による「第9回北千葉道路連絡調整会議」の資料では、北千葉道路と新京成線の交差部は、専用部(高速道路)が地下、一般部が高架構造となるようです。少なくとも建設工事中、場合によっては道路竣工以降も、北千葉道路がくぬぎ山車両基地に影響を与えることが考えられます。
実際のところ、道路建設の支障となるのは1週間程度の周期で実施する検査などのための建屋で、大規模検査を実施するための工場設備は直接影響を受けません。とはいえ、事業者の組織再編を機に、車両基地にメスが入れられてもおかしくはありません。
起工式には、京成電鉄や戸田建設、鉄建建設、京成建設の役員らのほか、酒々井町の小坂町長らが出席。祈祷や鍬入れによって、工事の安全を祈願しました。
宗吾車両基地の拡充工事は、2028年度末の竣工を予定しています。現工場の敷地については、2029年度から撤去する計画です。