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安心の連写速度と歪み少ない電子シャッター 動体に強いキヤノン「EOS R5 Mark II」で鉄道写真を撮ってみた

2024年9月8日(日) 鉄道コムスタッフ 井上拓己

8月30日に発売された、キヤノンの新型ミラーレスカメラ「EOS R5 Mark II」。ディープラーニング技術を活用した「デュアルピクセルIntelligent AF」を採用し、従来の製品からトラッキング性能を向上。登録した人物の顔の認識・追従や、サッカーなどのように人々の交錯が発生する場面での追従性の向上が実現しました。

キヤノンの新たなミラーレスカメラ「EOS R5 Mark II」
キヤノンの新たなミラーレスカメラ「EOS R5 Mark II」

そんなR5 Mark IIには、人物などの認識AFのほか、乗り物を検知してピントを追従する「乗り物優先モード」があります。先代の「EOS R5」にはなかった機能で、モータースポーツや鉄道の撮影が好きな人にとっては、まさに願ったりかなったりといえるでしょう。

このR5 Mark II、実際の使い勝手はどのようなものなのでしょうか。鉄道撮影においてストレスなく使えるものなのでしょうか。今回、筆者が実際に使い、その性能を確かめてまいりました。

高い順応性のAFと確かな連写速度 高速列車も安心の撮り心地

今回の撮影では、AFモードは被写体にピントを合わせ続ける「SERVO」を選択。AFエリアは「領域拡大AF(周囲)」に設定しました。フォーカスポイントを広めにすることで、走ってくる列車に食いつく範囲を広げ、先頭部分にピントを合わせやすくしています。フォーカスポイントは、中心部よりも少し左右に(列車の先頭部がくる方向に)ずらしました。

なお、R5 MarkIIでは、シャッターボタンなどを押した時のみにピントを合わせる「ONE SHOT」と、今回使用した「SERVO」のほか、両モードを自動で切り替えるAFモード「AI FOCUS」も搭載されました。今回の撮影では使用していませんが、R5では搭載されていなかった新機能です。

実際に撮影してみると、フォーカスポイント(黄緑色の枠、色を便宜上つけています)に車両が入った時点でカメラが被写体を認識し、すぐにピントを合わせるべき部分を検出。その後、車両の運転席部分などにピントが合い(水色の枠)、先頭部がファインダーから抜けるまで、カメラはそれを追い続けてくれます。ピントが合っている場所は、カメラのモニター内に青色の枠で表示されます。

撮影時のフォーカスポイントとピント追従のイメージ
撮影時のフォーカスポイントとピント追従のイメージ

また、R5 Mark IIの特徴的なAF機能が、「視線入力AF」。EVFを覗いた際、視線を向けている方向に、AFポイントを自動で動かしてくれるというものです。キヤノンでは、2021年に発売したプロ向けモデル「EOS R3」で本機能を初搭載していましたが、今回、フラッグシップモデル「EOS R1」とともに、R5 MarkIIにもこれを搭載。プロ向けモデル以外では初の搭載機となりました。

視線入力AFは、スポーツシーンなどの人物撮影で有用な機能と思われますが、鉄道撮影でも大きな威力を発揮してくれます。たとえば、編成写真を撮る際の「置きピン」。これまではサブセレクターでピントを合わせる場所を手動で設定していましたが、視線入力AFを使えば、目線だけでピント位置の指定が可能に。これまでの方法でもストレスを感じたことはありませんでしたが、この新機能はノンストレスの画期的な仕組みという印象を受けました。

次に、連写性能をみていきます。R5 Mark IIの電子シャッター使用時の連写性能は、メカシャッターと電子先幕で秒間最高約12コマ、電子シャッターで秒間最高約30コマ。メカシャッターと電子先幕は、すでに発売されている「EOS R6」や「EOS R6 Mark II」などと同等の連写性能を誇る一方、電子シャッターはR6 Mark IIの秒間最大40枚には及びません。この連写性能でどのように撮れるか、メカシャッター、電子シャッターの両方で試してみます。

R5 markIIの連写性能とは?(画像は電子シャッターで撮影したもの)
R5 markIIの連写性能とは?(画像は電子シャッターで撮影したもの)

まずは、秒間最高約12コマのメカシャッターで撮影しました。各列車の速度や構図にもよりますが、望遠で先頭部分を大きめに写す場合、1秒間に12コマもシャッターが切れれば、最低1枚は、ほぼ理想的な位置でシャッターが切れるように感じます。

続いて、秒間最高約30コマの電子シャッターで撮影。メカシャッターの約2.5倍もの数の写真を撮影することができます。結果、より理想的な位置でのカットを選びやすくなります。R6 Mark IIなどには及びませんが、秒間30コマの性能があれば、鉄道撮影には申し分ないと言えそうです。

メカシャッター(上)と電子シャッター(下)の連写枚数の比較。ともに0.5秒間シャッターを切りましたが、撮影できた写真の数は大きな違いがあります
メカシャッター(上)と電子シャッター(下)の連写枚数の比較。ともに0.5秒間シャッターを切りましたが、撮影できた写真の数は大きな違いがあります

さらに、電子シャッター使用時のみ設定できるのが、EVFのブラックアウトフリー表示。シャッターを切ったタイミングでも、EVFに常に撮影画像を表示し続けることができる機能で、流し撮りなどの連写時に重宝します。

歪みは驚きの少なさ!猛スピードも正確にとらえる電子シャッター

被写体が高速で移動するという特性上、連写速度の高い電子シャッターは、鉄道撮影において重宝できるものと思います。しかし、電子シャッターには弱点もあります。それは、「被写体の歪み」です。

電子シャッターの使用時における被写体の歪みは、「ローリングシャッター歪み」と呼ばれるもの。電子シャッターは、物理的なシャッター機構ではなく、電気的にシャッターを切る仕組み。イメージセンサーが受光した信号を上から下まで順に読み出して画像をつくるのですが、この間にタイムラグがあると、被写体が歪むことがあります。被写体の動きが速くなると歪みの発生も大きくなりやすいことから、「連写のために電子シャッターを使いたいが、歪みが怖くて使いづらい」というジレンマに悩まされることもありました。

しかしR5 Mark IIでは、新開発した裏面照射積層CMOSセンサーや、新型のエンジンシステムなどを組み合わせた「Accelerated Captureシステム」を採用。これにより、高速で信号を読み出すことを可能とし、歪みの低減を実現しました。歪みの量は、先代のR5に比べて4割程度にまで抑えることができたといいます。

では、R5 Mark IIの電子シャッターで発生する歪みは、どれほどのものなのでしょうか。R5 Mark IIのメカシャッターおよび電子シャッター、そして比較用として、R6 Mark IIの電子シャッターを用い、列車を真横から撮影してみました。

R5 Mark IIのメカシャッターで撮影
R5 Mark IIのメカシャッターで撮影
R5 Mark IIの電子シャッターで撮影。ローリングシャッター歪みが若干現れています
R5 Mark IIの電子シャッターで撮影。ローリングシャッター歪みが若干現れています

R5 Mark IIの電子シャッターで撮ったカットを見ると、メカシャッターで撮影したものと比べ、乗務員室扉などの輪郭が内側に少し傾いています。一方、車体の奥にかかっている架線柱は歪んでいません。この、高速で走る車両だけに発生している歪みが、「ローリングシャッター歪み」です。

R6 Mark IIの電子シャッターで撮影。R5 Mark IIよりも大きな歪みが現れています
R6 Mark IIの電子シャッターで撮影。R5 Mark IIよりも大きな歪みが現れています

R6 Mark IIの電子シャッターで撮影したカットでは、乗務員室扉などの傾きがより大きい、つまり被写体の歪みが激しいことがわかります。「列車のスピード感が出ている」……と言えなくもないですが、走っている車両を正確に記録したいと考える場合、この歪みを許容範囲とするかは意見が分かれるところでしょう。これを低減し、メカシャッターに近いカットを作るR5 Mark IIの性能は、鉄道撮影で重宝できるものといえます。

今度は、駅近くの踏切で、速度の異なる列車を正面がちにとらえてみます。比べてみると、スピードの遅い普通列車はもちろん、猛スピードで走る優等列車でも歪みが気にならないことがわかります。

メカシャッターで撮影した優等列車
メカシャッターで撮影した優等列車
電子シャッターで撮影した普通列車。速度が遅いためか、正面がちに撮影すれば、歪みはあまり気になりません
電子シャッターで撮影した普通列車。速度が遅いためか、正面がちに撮影すれば、歪みはあまり気になりません
速く走る優等列車も電子シャッターで撮影。こちらも気になるレベルの歪みは現れませんでした
速く走る優等列車も電子シャッターで撮影。こちらも気になるレベルの歪みは現れませんでした

側面、正面の2つの視点で検証してみましたが、ローリングシャッター歪みを最小限に抑えているR5 Mark IIの電子シャッターは、秒間最高約30コマという連写性能とあわせて考えると、高速で移動する被写体のフォルムをより正確に写すうえで、非常に有効な手段です。必ずしも「メカシャッターと同レベル」とはなりませんが、それにかなり近づいたという点で、非常に優秀なものといえるでしょう。

ISO感度のノイズ、どこまで許せる?暗い場所でいろいろ撮ってみた

次に、暗い環境でどのように撮影できるのかを見ていきます。近年は夜間やトンネル内といった暗い場所で撮影する人も増えていますが、こうした写真は高いISO感度での撮影に耐えられる機材が必要です。R5 Mark IIの高感度撮影でどれほどノイズが目立つか、順にISO感度を上げながらみていきます。なお、撮影した画像は、すべて後処理なしのいわゆる「撮って出し」。画像の明るさや色温度の調整、ノイズ除去などの対応は一切しておらず、撮影時は三脚不使用です。

まずはISO2000で撮影。この程度であれば、写真を拡大してもノイズはほとんど気になりません。パソコンで明るさを上げても、あまり問題にはならないものと思います。

ISO2000で撮影
ISO2000で撮影

続いてISO8000で撮影してみました。拡大すると、多少のノイズが目につきますが、それでも「この程度なら、まだまだ許容範囲」と考える方が多いのではないでしょうか。なお、車両のヘッドライトがまぶしい環境でしたが、カメラは被写体を感知し、しっかりとピントを追従してくれました。

ISO8000で撮影
ISO8000で撮影

今度はISO20000まで上げて撮影。ここまで来ると、さすがに画像の暗い部分でノイズが目立つ印象です。

ISO20000で撮影
ISO20000で撮影

最後に、常用ISO感度で最も高い、ISO51200でシャッターを切ってみました。画像の明るい部分でもノイズが目立っていることが、ハッキリとわかる結果となりました。一方で、この写真を撮影した際の絞り値はF7.1、シャッタースピードは250分の1。ノイズは目立ちますが、暗い環境でここまでシャッタースピードを上げることができるのは、大きな強みといえます。

ISO51200で撮影
ISO51200で撮影

ちなみに、R5 MarkIIの手ブレ補正機構は、最高で中央部8.5段、周辺でも7.5段を実現。低いISO感度を設定し、シャッタースピードを遅くした場合でも、高度なブレ補正が可能です。

先にも述べたとおり、R5 Mark IIは電子シャッター使用時の連写性能は、R6 Mark IIに及びません。しかし、被写体のフォルムを正確に記録するという点では、歪みの少ないR5 Mark IIが圧倒的に優れています。撮影の細かさと記録の正確さ、どちらに重きを置くかで、選ぶべきカメラが決まってくるといえるでしょう。

人物やスポーツ向けの要素が強いR5 Mark IIですが、その性能は鉄道撮影にも十分応用できるものと感じました。あらゆる動体に強い機種として、重宝される機種になりそうです。

 

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