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上位機種ユーザーも満足? ニコンから新型エントリーモデルが登場! ミラーレスカメラ「Z50II」を鉄道撮影でトライ

2024年12月7日(土) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

ニコンは11月7日、新型ミラーレスカメラ「Z50II」を発表しました。2019年に発売された「Z50」の後継となる、エントリーモデルの製品で、12月13日の発売を予定しています。

ニコンの新型ミラーレスカメラ「Z50II」
ニコンの新型ミラーレスカメラ「Z50II」

本モデルはエントリーモデルと謳ってはいますが、エントリー層はもちろんのこと、すでにニコン製品を使用しているユーザーのサブ機としてのニーズも想定しています。筆者が実際に使用してみると、「本当にエントリーモデルなの?」と思うことも。そんな、エントリー機ながらエントリー機らしくない本製品について、鉄道撮影の観点からご紹介しましょう。

なお、本記事でご紹介するモデルは、製品版の前に製造されたサンプル機です。掲載している撮影画像は、製品版のものとは異なる場合があります。

「Z50II」は、2088万画素のAPS-Cサイズ(DXフォーマット)CMOSセンサーを搭載したエントリーモデル。映像処理エンジンは、「Z9」「Z6III」などの上位機種と同じ「EXPEED7」を採用しています。

「NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR」を装着した「Z50II」(右)と、望遠レンズ「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」(左)。今回は、主にこの2本のレンズで撮影しました
「NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR」を装着した「Z50II」(右)と、望遠レンズ「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」(左)。今回は、主にこの2本のレンズで撮影しました

先代の「Z50」では、既存ユーザー層の使用も想定していたとはいえ、初めてミラーレスカメラに触れる層を重視したのか、画面の拡大・縮小などの一部操作がタッチパネル端の「タッチキー」によるものとなっていました。これに対し、今回の「Z50II」では、背面ボタン配置が「Z8」や「Z6III」などの上位機種と同様のものに。タッチパネル操作は先代同様に対応していますが、上位機種ユーザーでも違和感なく使えるものとなりました。

背面モニターは、「Z50」のチルト式から、バリアングル式に変更されました。背面ボタン配置も「Z8」や「Z6III」などに類似したパターンに変更され、上位機種との併用に配慮されています
背面モニターは、「Z50」のチルト式から、バリアングル式に変更されました。背面ボタン配置も「Z8」や「Z6III」などに類似したパターンに変更され、上位機種との併用に配慮されています
グリップ部も改良され、先代モデルよりもホールド性が向上しています
グリップ部も改良され、先代モデルよりもホールド性が向上しています

また、近年のミラーレスカメラでは標準装備となりつつある「被写体認識AF」機能は、上位機種同等のものを搭載しました。検出モードは「オート」「人物」「動物」「鳥」「乗り物」「飛行機」の6種類で、対応する被写体は「人物」「犬」「猫」「鳥」「車」「バイク」「自転車」「飛行機」、そして「列車」の9種類です。先代の「Z50」では、人物と動物(バージョンアップ対応)のみが認識対象でしたが、今回の「Z50II」では、上位機種同様、乗り物などにも対応。ニコンのエントリーモデルでは初めて対応した製品となります。

ちなみに、鉄道撮影とは関係ありませんが、「Z50II」では、ニコン製品で初めて、被写体検出で「鳥」が独立したモードとなりました。ニコンによると、上位モデルの「Z6III」(「鳥」モードが独立していないモデル)の「動物」モードよりも、鳥の検出率は向上しているということです。

エントリーユーザーにも、上位機種ユーザーにも

鉄道撮影での「Z50II」の実力は?
鉄道撮影での「Z50II」の実力は?

初心者向けにお話しすると、APS-Cサイズセンサーを搭載したモデルは、フルサイズセンサーを搭載したモデルよりも、一般論として「ボケが出にくい」「ノイズ性能で劣る」といったデメリットがある一方、「本体やレンズを軽くできる」「望遠方向の焦点距離を稼げる」というメリットがあります。

後者のメリットはどういうことかというと、APS-Cサイズのシステムでは、レンズの焦点距離はフルサイズ機の1.5倍(キヤノンの場合は1.6倍)の数字となります。たとえば、APS-Cサイズ機でレンズの焦点距離を18mmに合わせた場合、フルサイズ換算では24mmに、200mmの場合は換算300mmとなります。

つまり、今回使用した18-140mmのレンズは、フルサイズ換算では27-210mm相当に、50-250mmのレンズは75-375mm相当となります。後者の「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」は質量約405グラムですが、フルサイズモデルで同じだけの焦点距離を持つレンズを探すと、「NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S」の約1435グラム(三脚座含む)あたりとなり、一気に重量が増します。ライトユーザーにはもってこいのシステム、それがAPS-Cサイズセンサーを採用したDXフォーマットなのです。

「Z50II」については、本体の質量は約550グラム。上位機種を見ると、ニコンのフルサイズセンサー搭載最新モデル「Z6III」は約760グラム、最軽量フルサイズミラーレスの「Z5」でも約675グラムですから、レンズの軽さと相まって、システム全体を軽くすることができます。特にカメラに不慣れな初心者にとっては、本体やレンズが軽く、しかも手が届きやすいレンズで遠くまで撮影できるというのは、大きなメリットではないでしょうか。

焦点距離18mm(フルサイズ換算27mm)で撮影
焦点距離18mm(フルサイズ換算27mm)で撮影
焦点距離250mm(フルサイズ換算375mm)で撮影。上の写真の中央に写る橋を拡大したものです。上で挙げた軽量レンズ2本の組み合わせでも、ここまでの範囲で撮影できます
焦点距離250mm(フルサイズ換算375mm)で撮影。上の写真の中央に写る橋を拡大したものです。上で挙げた軽量レンズ2本の組み合わせでも、ここまでの範囲で撮影できます

ピント合わせを補助してくれる機能も、エントリーユーザーの味方です。ニコンのカメラでは今や当たり前となった、9つの被写体を認識してくれる被写体認識AF機能。「Z50II」でもその能力は健在で、上位機種同様、走ってくる列車にピッタリとピントを合わせ続けてくれます。

被写体認識AF機能のイメージ(画像は合成)。「乗り物」モードを選んだ場合、車両の先頭部を認識し(緑枠)、ピントを合わせ続けてくれます
被写体認識AF機能のイメージ(画像は合成)。「乗り物」モードを選んだ場合、車両の先頭部を認識し(緑枠)、ピントを合わせ続けてくれます

また、「Z50II」のAFモードは、ピント位置を固定する「シングルAFサーボ」(AF-S)と、被写体の動きにあわせてピント位置を合わせ続ける「コンティニュアスAFサーボ」(AF-C)のほかに、状況をカメラが判断し、両者を自動で切り替えてくれる「AFサーボモード自動切り換え」(AF-A)もあります。試しにこのモードでも撮影しましたが、全く違和感なく撮影ができました。「Z50」では、奥行き方向の動きが大きく変化した時のみの切り替わりでしたが、「Z50II」では、水平垂直方向の動きや、奥行き方向の動き検知の最適化により、被写体判定性能が向上し、被写体の動きが小さくても最適なモードに切り替わるようになったといいます。

編成写真を撮影する場面。このような場合は「置きピン」をすることもありますが、今回は被写体認識AF機能でトライ
編成写真を撮影する場面。このような場合は「置きピン」をすることもありますが、今回は被写体認識AF機能でトライ
上の場面からこの位置まで、ズームリングを動かしても、ピントを合わせ続けてくれます
上の場面からこの位置まで、ズームリングを動かしても、ピントを合わせ続けてくれます

では、「Z50II」はエントリーユーザー以外には物足りないのかというと、決してそうではありません。

上位モデルのユーザー目線では、「Z50II」は小型軽量で持ち運びやすく、かつボタン配置が上位機種同様のものになっているため、操作時の違和感はありません。連写性能については、「Z50」から引き継き、秒間最大11コマ(高速連続撮影(拡張)設定時)。さらに、秒間最大約30コマの「ハイスピードフレームキャプチャー+」も搭載しています。最大で秒間約120コマ(ハイスピードフレームキャプチャ+設定時)も撮影できる「Z9」「Z8」などの上位機種にはさすがに及びませんが、鉄道などの「動きモノ」の撮影では、十分に活躍してくれるのではないでしょうか。

列車を「流し撮り」しましたが、しっかりとピントを合わせ続けてくれました
列車を「流し撮り」しましたが、しっかりとピントを合わせ続けてくれました
夕方の薄暗い時間でも
夕方の薄暗い時間でも

また、2023年に発売された「Zf」で初導入となり、「Z6III」にも搭載された、ピクチャーコントロールの「ディープトーンモノクローム」「フラットモノクローム」は、「Z50II」にも当然のように搭載。クリエイターなどが作成したレシピを自分のカメラに取り込める「イメージングレシピ」も、「Z6III」から引き続き搭載しています。さらに、自分好みの色表現を追求できる機能「フレキシブルカラーピクチャーコントロール」も、「Z6III」同様に搭載。エントリーモデルという立ち位置ながら、上位機種ユーザーが求める「自分の画づくり」の追い込みも可能となっています。

「ディープトーンモノクローム」で撮影した写真
「ディープトーンモノクローム」で撮影した写真

筆者手持ちの超望遠レンズ「NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S」を装着した撮影も試してみました。かつてのエントリーモデルでは、超望遠レンズを装着した際、レンズが重すぎて本体が耐えられるか心配……と感じることがメーカー問わずありましたが、「Z50II」ではそんな不安を感じることは皆無。グリップが改良されたためか、手持ち撮影でも非常に安定感がありました。

鉄道写真ではないのですが、100-400mmで撮影した写真をご紹介。小型ボディと超望遠レンズの組み合わせですが、終始安定して構えることができました
鉄道写真ではないのですが、100-400mmで撮影した写真をご紹介。小型ボディと超望遠レンズの組み合わせですが、終始安定して構えることができました

なお、「Z50II」のセンサーは、「Z50」と同じものを採用しています。2088万画素というセンサーの性能は他社製品よりも少し物足りない数字ですが、ニコンによると「他社よりも一段上の高感度性能を実現するため」などの理由で、このセンサーを使用しているとのこと。また、かつてAPS-Cセンサー機フラッグシップモデルとして販売されていたデジタル一眼レフ「D500」と比較すると、画素数自体は減少しているものの、その他のセンサー性能は「Z50II」の方が上とのことです。ちなみに、「Z50」と比較しても、高感度性能は向上しているそうです。

エントリーモデルはここまで進化した

エントリーモデルに位置付けられる「Z50II」ですが、その中身は上位機種ユーザーも満足させるもの。筆者個人の感想としては、「エントリーモデルでここまで!?」という驚きすら与えてくれました。

上位機種の「当たり前」ができるエントリーモデル、「Z50II」
上位機種の「当たり前」ができるエントリーモデル、「Z50II」

実は「Z50II」は、先代の「Z50」よりも、質量が約100グラム増加しています。ニコンはその理由について、「3.2インチバリアングルモニターの搭載」「上位モデル同等の操作性の確保による設計変更」「『EXPEED7』搭載による基盤の増加」「動画性能強化による放熱部材の追加」を挙げています。

とはいえ、実際に使用してみると、重量増というデメリットを感じさせないほどの好印象。もちろん、初めてカメラを触るというユーザーにとって、重量は少しでも軽い方が良いとは思いますが、そのおかげでエントリーモデルとしては破格の性能が奢られた「Z50II」は、エントリーユーザーでも長く使うことができるカメラとして仕上がっています。

Z50II 基本情報

基本スペック

  • センサー:2088万画素CMOSセンサー(APS-Cサイズ)
  • 画像処理エンジン:EXPEED7
  • AF被写体検出:9種類(人物、犬、猫、鳥、車、バイク、自転車、列車、飛行機)
  • 連写性能:秒間最大11コマ(高速連続撮影(拡張)設定時)
    秒間最大約30コマの「ハイスピードフレームキャプチャー+」も搭載
  • 動画性能:5.6Kオーバーサンプリングによる4K UHD 30p撮影、ハイレゾズームなどに対応
  • EVF:236万ドット・1000cd/m2・ファインダー倍率0.68倍
  • 背面モニター:3.2型104万ドット(バリアングル式)
  • 本体質量:約550グラム

市場想定価格

  • Z50II(本体のみ):14万5200円
  • Z50II 16-50 VR レンズキット:16万6100円
  • Z50II ダブルズームキット:19万8000円
  • Z50II 18-140 VR レンズキット:19万9100円

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