鉄道コム

助川康史の「鉄道写真なんでもゼミナール」

撮影スタイルに合ったレンズを選ぼう! 後編 ~標準、中望遠、そして望遠レンズはどう選ぶか~

2024年12月29日(日) 鉄道カメラマン 助川康史

レンズの特徴を知ることで作品の幅と撮影の楽しみが広がる!

最近のデジタルカメラは機能や画質の向上が著しく、カメラ雑誌やSNSのコメント欄などで話題になることが非常に多くなっています。「失敗せずに撮れるようになる」「プロと同じ技が簡単に再現できる」「今まで難しかった撮影がお手の物に!」など、撮影していて顕著に実感できるところが多いからではないでしょうか。たしかに、新たな技術によって、今までよりもひと回りもふた回りも良い作品が撮れると、腕も上がったように感じます。もしそれが本当にカメラのおかげだとしても、自身が撮影を楽しく感じ、より写欲が増してくるのであれば、それは良い事なのです。

私も、写真教室やイベントなどのトークで、「写真は何より自己満足の世界。心から楽しむべき!」と言っています。写真撮影はまさに「自身の自身による自身のための文化的活動」なのです。我ながらリンカーンもびっくりの名言です(笑)。

しかし、その自己満足を達成するには、カメラだけでは到底成しえません。やはり、カメラの相棒であるレンズの存在が重要なのです。しかし先述した通り、どちらかというとカメラの性能が注目されがちで、レンズ性能はあまりこだわらないという声も多く聞かれます。

写真を撮る上で欠かせないのが、カメラ本体、そしてレンズ。今回は前回に引き続き、レンズの選び方についてお話しします
写真を撮る上で欠かせないのが、カメラ本体、そしてレンズ。今回は前回に引き続き、レンズの選び方についてお話しします

そこで今回は、前回の「撮影スタイルに合ったレンズを選ぼう!」前編に続き、標準レンズと望遠・超望遠レンズを中心に解説をしていきたいと思います。それぞれのレンズの特性を生かした撮影の考え方もお話しするので、ぜひ明日からの撮影にヒントにしていただければと思います。

写真撮影の基本中の基本は標準レンズ

各レンズの焦点域に関しての明確な定義はありませんが、フルサイズ35mm換算で35mm~50mmの焦点域を持つレンズが「標準レンズ」と言われています。また、同じくズームレンズの場合は、24mm~70mm前後の広角側も含むレンズを「標準ズームレンズ」と言います。よって、70mm~80mm前後までを標準レンズと考える人もいるので、焦点域の呼称はそれほど限定しなくても良いかと私は感じています。

標準レンズを装着したカメラ(編集部撮影)
標準レンズを装着したカメラ(編集部撮影)

さて、標準レンズの特徴ですが、まず「人の視野角に近い自然なパースペクティブ(遠近感)で表現ができる」という点が挙げられます。ここで注意なのが、「人の視野角=標準レンズの画角」ではないということです。標準レンズの基本と言われるのは50mmですが、画角は47度です。対して、人間の視野角(水平視野角)は両目を合わせれば最大で200度にもなり、かなり差があります。

では、なぜ50mmが人間の視野角と同等と言われるのかというと、それは「パースペクティブ(遠近感)」のことを指しているからです。たとえば、広角レンズで近くの物と遠くの物を一緒に見ると、肉眼以上に近くの物は大きく、遠くのものは小さく表現されます。またその逆に、望遠レンズは圧縮効果によって、手前のものと奥の物の大きさが同じくらいの大きさに見えたりします(ボケ具合は考えず)。それがそれぞれのレンズが持つ遠近感の特性なのですが、標準レンズは人間の肉眼のパースペクティブに近くなっています。

ちなみに、私が現在愛用している「Z6III」はファインダー倍率が0.8倍ですが、やはり56mm前後で肉眼とドンピシャに重なります。

このような自分の肉眼とレンズとのパースペクティブの一致を知る方法ですが、両目を開けた状態で片方の目をファインダーに、もう片方の目をそのまま開けた状態で同じ被写体を見てズームしてみてください。ステレオグラフの様に見えるよう調整していくと、ある所で肉眼とファインダーの被写体の大きさ(背景も含めて)が完全一致する焦点距離があります。それが、肉眼とレンズの焦点距離のパースペクティブが同じになったということになります。デジタルカメラでしたら、一回撮影するとレンズの焦点距離を何ミリに合わせて撮影したか記録されるので、細かく確認することができます。

もちろん、これは個人差もありますし、カメラのファインダー倍率によっても肉眼と同じパースペクティブの焦点距離は変わります。自分の肉眼とカメラ&レンズのパースペクティブを知ると面白いので、是非一度試してみてください。また、この方法で動体を見ると、ミラーレス一眼のEVFの表示タイムラグの差も顕著にわかるので、覚えておくと便利です。

さて、ここで標準(標準ズーム)レンズのメリットとデメリットを挙げてみましょう。

残り8677文字/全文:11583文字

標準レンズや望遠レンズのメリット・デメリットとは? プレミアム会員に登録すると、さまざまなレンズについての解説がご覧になれます。

プレミアムサービスのご案内 / 会員の方はチェックイン

プレミアム会員の入会はこちらから

メリット人間の視野角の自然なパースペクティブに近い被写界深度が深い写真と浅い写真の両方が撮れる小型&軽量で持ち運びも楽々ボケが柔らかく、明るいレンズが多いデメリット説明的な構図になりやすい(標準ズームレンズでは)便利すぎて撮影者のフットワークが悪くなる標準レンズのメリットといえば、先述した通り、やは

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

アンケート

このリポート記事について、よろしければ、あなたの評価を5段階でお聞かせください。

鉄道コムおすすめ情報

画像

京成の新型車「3200形」詳細

実は「ギリギリ」な設計だった? 京成電鉄の新型車両「3200形」を深掘りします。

画像

西武山口線に新型車

4両編成3本を2025年度~2027年度に順次導入し、8500系を代替。デザインは各編成別。

画像

「T4編成」展示へ

1月で引退の「ドクターイエロー」T4編成、先頭車がリニア・鉄道館で保存へ。6月に展示開始予定。

画像

幻の東京圏「改良計画」とは?

1950年代の国鉄は、東京圏を今と違った形に改良する計画を持っていました。その中身とは?

画像

1月の鉄道イベント一覧

2025年も鉄道コムをよろしくお願いします。1月の計画立案には、イベント情報をどうぞ。

画像

イベント投稿写真募集中!

鉄道コムでは、臨時列車や基地公開など、さまざまなイベントの投稿写真を募集中! 投稿写真一覧はこちら。