大賞
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結果発表
鉄道コムとソニーマーケティングが共同で開催する「懐かしの鉄道写真コンテスト」の結果を発表します。
2019年8月5日~9月1日の募集期間で、数多くの作品のご応募をいただきました。誠にありがとうございました。
本コンテストの入賞作品は、鉄道コムと「αcafe」のWebサイトで掲載するほか、朝日新聞東京本社と大阪本社で開催の「鉄道コム×ニッポン写真遺産 懐かしの鉄道写真展」で一部を展示いたします。また、9月22日には、本コンテストの講評会を、朝日新聞東京本社内で開催します(参加無料、事前申し込み制)。ぜひ、写真展や講評会にもお越しください。
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25歳以下からの応募作品を対象に選定
咄嗟のシーンを捉えた作品ですが、構図がすばらしく、写真の構成を理解している人の作品だと思います。
線路を見ると画面の真ん中に配置したくなりますが、それをあえて右端に置いて、さらに左端にはシルエットとなった林を入れているのが、とてもいいアングルです。
最近撮影した作品かもしれませんが、どの世代から見ても懐かしさを覚えます。ユースという印象を超えた感覚を持っている撮影者だと思います。
ユース賞の対象ということで、ベテランの写真家と比べれば経験は浅いはずです。しかしながら、2階調にまとめるという表現や、黒の中にレールを2本引けば鉄道写真として成立するという表現ができるのは、年齢を感じさせないベテランの貫禄が現れています。
この写真を撮る際には、黄昏時の空が綺麗なことに目をつけたのでしょうか。そのような瞬間にレンズを向ける重要性を再認識させられる作品です。
鉄道コムユーザーの投票および鉄道コム編集部の選考により決定
489系が「ホームライナー」仕業を終えて、いよいよ「能登」として遠き彼の地へ向かう準備をしているところですね。現在のほとんどの列車はヘッドマークや種別表示を簡単に変更できますが、一昔前は人手を使って変えていました。このアナログ的な作業こそ、昭和から続いてきた鉄道の人間味を感じるワンシーンであり、鉄道の温かさでした。そのシーンを、奇をてらうことなく素直にカメラを向けて捉えたことが、レイルファンの心を強く打ったのでしょう。
何気ない風景がいつかかけがえのない宝物になる。そのことをこの作品は教えてくれます。
「α」で撮影された作品を対象に選定
満点の星空と列車という組み合わせは、狙って撮る人も多いでしょう。その中でも、星の存在感を列車と共に見せていて、星空と鉄道の写真の中では、相当綺麗な作品を見たと思います。
列車と星空を共存させ、列車の窓明かりを鉄道の描写として残せている技術性の高さ。他に光源が無い場所を選び、星と列車を目立たせた場所のセレクト。共に、作者の意図の現れでしょう。
「α7R Ⅱ」で撮影したということですが、このカメラの高解像だけでなく階調性や高感度特性の良さといった点を味方につけ、光を放っていない列車の外板デザインもデータとして残せている点は、機材の選択としても、とても良かったと思います。
「写真遺産」ともいえる貴重な写真を対象に選定
写真の重要性がとても表れている作品だと思います。この写真は、昔の上野駅の一つの風景ですが、後世に残す記録、真実を写す、という写真の意義の一つが凝縮されていると思います。
今でも大きな変化はない上野駅の構造に混じる懐かしさは、どの世代が見ても抱くものでしょう。そのような気持ちにさせるのが写真の良さであり、この作品の力強さでもあります。
都電が走っていた頃の街の様子が1枚に凝縮されていて、この1枚から色々と細かいところまで探してみたくなるような、楽しい写真です。
構図も良い作品です。この写真では、列車をメインとして真ん中に配置されています。しかし、その周囲を車や高架線が囲んでいて華を添えています。決して「日の丸構図」が悪くないと思わせる点は、匠の技だという印象を受けます。
15作品(順不同)
今回入賞した作品、また漏れてしまった作品も含め、どの応募作からも「鉄道愛」をひしひしと感じました。その鉄道に対し、どのようにアプローチしているかが、作品によって異なります。
入賞した各作品は、どれも狙いが明確です。写真というものは、作者の意図するものがしっかりと表現されていなければなりません。空気感や時間、あるいは作者が持つ「思い」を入れる人もいます。うまくメリハリをつけ、その狙いがしっかりと画面の中に構成されている作品が、上位に入賞しています。
鉄道ファンの中には、列車も風景も大きく、というように、欲張ってしまう人がいます。しかし、主役がどれかを明確にし、題名一つ取っても、しっかり自分の中でかみ砕いて表現できている物がよかったかなと思います。
このコンテストではどのような作品が入賞しているのか、という傾向を感じていただいて、また違った見方の作品が応募されるといいですね。
「懐かしの鉄道写真」がテーマということで、古い写真が多く応募されていました。「よく撮影していたなあ」というシーンの写真や、「こんな所を撮っていたら今の時代はとても貴重だ」という写真です。
今撮れる写真も、いつかはそのような見方ができるようになります。そういう意味では、審査する側としても楽しめるコンテストでした。
一方で、古い写真ではなく、現代の写真を撮って懐かしさを表現する作品もあり、両者の対比という2局的な見方もできるコンテストでした。
全体的な作品の印象としては、鉄道要素を大きく主張している作品は比較的少なかったと思います。車両を美しくかっこよく、という作品よりも、情景や人、風景を含めた写真が数多く応募されていました。
「鉄道写真 撮影上達セミナー ~懐かしの鉄道写真コンテスト講評会~」
鉄道写真コンテスト審査員を務めた助川康史氏と山下大祐氏が、一歩上をいく作品作りの方法を教える、特別セミナーを開催します。
「懐かしの鉄道写真コンテスト」の応募者は、ご自身の作品の「生講評」を聞くことができるチャンスもあります。
開催日は2019年9月22日(日)。参加は無料です。詳細やお申し込みはこちら。人数限定につき早めにお申し込みください。
「鉄道コム×ニッポン写真遺産 懐かしの鉄道写真展」
「懐かしの鉄道写真コンテスト」の受賞作品と入賞作品を展示する写真展を開催します(大阪会場では入賞作品の展示は一部のみ)。
開催期間と開催場所は、2019年9月14日(土)~27日(金)に朝日新聞東京本社 2階コンコースにて。10月4日(金)~17日(木)に朝日新聞大阪本社 中之島フェスティバルタワー13階 スカイロビーにて。
朝日新聞社「ニッポン写真遺産」でデジタルデータ化した鉄道写真を展示します。ぜひご覧ください。こちら(ニッポン写真遺産のサイト)
審査員講評(助川康史氏)
この作品で一番いいなと思ったのは、空間の表現です。このような写真では低く構えて撮りたくなりますが、そうすると子どもの首から上が白い部分に掛かって浮いてしまいます。
撮影者の方は、構えて撮ったのではなく、とっさに風景を切り取ったのでしょう。
門司港駅は昔からよく撮影される場所です。その有名どころで作品性を際立たせるには、「出会い」しかありません。この作品は、親子との出会いを的確に捉えています。写真とは、その瞬間を捉える一期一会の世界です。まさにそれを活かして撮られた作品です。
審査員講評(山下大祐氏)
門司港駅のホームで撮影したというこの作品。ノスタルジックで、懐かしさを演出としても醸し出している駅ですが、その舞台を利用して、時代は現代ながらそれを前に出さず、うまく処理している点がポイントとしては高かったと思います。
シンメトリーで整った構図、狙いをつけてカメラを構えていたところに出会いがあったのかはわかりませんが、登場人物も親子という的確な被写体が画面に入ったと思います。
電車は今の時代を象徴するようなオシャレな車両ですが、その見せ方や舞台のセレクトが上手です。また、時代によって服装は替わりますが、親子の姿はいつの時代も懐かしさを感じさせます。その光景が、他の作品からは一つ抜けた描写となって現れています。