35mmフィルムの写真がA2サイズの大判プリントとして鮮やかに蘇った。GT-X970を使えば古い写真もこのようにして現在撮ったような高画質な作品に仕上げることができる。マウントの小さなコマからA2でまともにプリントできる画像にスキャンできるGT-X970の性能は驚異的だ。
次に35mmフィルムでスキャンした画像をプリントしてみる。プリントの方法や設定は前回を参照して欲しい。今回は前回と同じPX-5002を使用するが、A3ノビよりさらに大きいA2の用紙を使ってプリントする。プリントする用紙はエプソン「UltraSmooth Fine Art Paper」だ。このときの設定は第2回目でクリスピア用紙を使って印刷したものと同じにする。ただ、用紙の種類だけ「UltraSmooth Fine Art Paper」に変更しておく必要がある。
35mmフィルムで撮影した写真がA2の大判プリントで鮮やかつダイナミックにプリントされた。35mmの小さなフィルムが元とは思えないディテール感だ。これもGT-X970の6400dpiの高精細なスキャン性能があればこそ実現することができた作品と言えるだろう。
写真を撮影する
3回にわたって中井流の鉄道写真を楽しむテクニックを紹介したが、ここでおさらいとして、鉄道写真を楽しむ強い味方を紹介する。
まず、必要なのはカメラだ。そもそも元の画像が悪いと、どう頑張ってもその後の処理もよい作品は楽しめない。そこで、中井先生がお気に入りの一台として使っているのが、難しい環境でも優れた描写力と豊かな色表現の撮影ができるペンタックスの『K-7』だ。その描写力と色表現は第2回を見て頂ければ実感できるだろう。なお、PX-5002のようなAdobe RGB対応のプリンターで作品づくりをするなら、階調の幅が広く、AdobeRGBの色域を使えるRAWデータで撮っておくことを忘れずに。(詳細は第2回目参照)
AdobeRGBと12ビットのRAW撮影に対応しているため、PX-5002を使ったAdobe RGB色域での作品づくりに威力を発揮できる。上の中井先生の作品はK-7で撮られたものだ。夕闇というカメラにとっては難しい環境でも優れた描写力と豊かな色表現の撮影ができる。これを見るだけでK-7の底力がわかるというものだ。
撮影したデータを保存する・閲覧する
撮った後はデータを消さないように注意することが重要だ。CFを交換したらうっかりPCにコピーしていないデータまで消してしまったという経験がある方もいるだろう。そんな悲劇を生まないために、撮ったら電車の移動中などで、しっかりとフォトストレージにコピーを取っておこう。オススメはエプソン『P-7000』だ。160GBの容量を持っているため2GBのCFならば80枚分のデータを貯めておくことができるため、数日間撮影旅行に行ってもPCがなくとも十分にデータを貯めておくことができる。
160GBのバックアップストレージだが、USBケーブルでPCに接続するとサブモニターとしても使うことができる。しかも、液晶はAdobe RGBの色域をほぼカバーしているため、ノートPCなど色域の狭い液晶しか使えない環境でも、Adobe RGBの色域を確認することができる。
撮影した写真をプリントする
家に帰ってきたらプリントだ。とりあえず、すぐに撮った写真をみんなに配りたい、プリントして見てみたいというならば、カメラや『P-7000』をUSBでエプソン『EP-802A』に繋いでL版プリントしよう。撮影した写真から塗り絵を作ることもできる。詳細は第1回目を参照して欲しい。
プリントした写真を見ながら「これは傑作だ」と思うものが撮れていたなら、今度はエプソン『PX-5002』を使って、作品として飾れるようにA3ノビやA2の大きなサイズにプリントする。こうすることで、PCのモニターで見るよりも数段ダイナミックで見栄えのいい写真を楽しむことができる。詳しくは第2回目を参照して欲しい。
「EP-802A」はL判~A4までの印刷に対応したスキャナーを内蔵した多機能プリンターだ。ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの他に、ライトシアン、ライトマゼンダの6色の染料インクを採用しており、成田エクスプレスの赤や24系や14系のボディの青20号も鮮やかに再現できる。
また、中井先生によると、プロから見ても黒の締まりがとてもよく、高品位な印刷ができるという。無線/有線LANを搭載しているため、家に複数PCがあるような場合でも家族みんなで共有することができるのが特長だ。中井家のように「手書き合成シート」や「塗り絵印刷」など、家族みんなが楽しめる機能が満載だ。
Adobe RGB出力に対応したA2プリンター。現在、中井先生は自身の作品作りに実際に使用している製品だ。ビビッドマゼンタ・ビビッドライトマゼンタインクにより、従来機では再現が難しい青系統や紫系統の色を再現できるようになった。鉄道でいえば、14系/24系ブルートレインなどに使われている青20号の微妙な色に効くといったところだろうか。歴代のエプソン機を使っている中井先生によると、発色性は極めて優秀とのこと。また、インクの価格が高めだと言われているが、その分枚数を多く刷れるようになっており、決して割高ではないというのが中井先生の感想だ。
また、古い写真は暇を見つけてスキャナー『GT-X970』を使ってスキャンしてデジタルデータにしていこう。デジタルデータにして修復作業をすれば、データさえ消さなければ劣化することなく、保存することができる。詳細は今回ご紹介した通りだ。
これらは全て中井先生が実践されている手法の1つだ。いま自分が撮っている作品に満足できないならば、撮影からプリントまでのフローのなかでどこかの部分が上手くいっていない可能性が高い。その回答がこの3回の講座の中にきっとあるハズだ。ぜひ今後の鉄道写真を楽しむ手法の参考として役立てて欲しい。
鉄道写真を楽しむためのワークフロー。撮影からバックアップ、プリントまでしっかりと環境を揃えて快適で質の高いプリントを目指そう。
人気ブログ『1日1鉄!』より、本コンテンツのために、中井先生が特別に撮り下ろしてくださいました作品をお楽しみ下さい。
僕が鉄道写真を撮り始めるきっかけになったのは、
中央線の201系電車の登場だった。
小学校のころ
阿佐ヶ谷から飯田橋まで
電車通学していた僕は、
あの真っ黒なマスクに一目惚れ。
父親のお下がりのカメラで夢中で撮った。
「省エネ」って言葉も、なんか新しかった。
はじめて乗ったとき、
たしか先頭車だけにあったつかまり棒みたいなものに、
意味もなく抱きついた。
「サイリスタチョッパ!サイリスタチョッパ!」
意味はわからないけど、叫んだ。
あのワクワクした気持ちは、今も忘れない。
そんな僕の黒マスクのヒーローも、
たくさんの想い出と一緒に、この春引退する。
中井 精也(なかい せいや)
鉄道写真家の真島満秀氏に師事。雑誌、広告撮影のほか、テレビ出演、「JAL旬感旅行」の鉄道写真ツアー講師など幅広く活躍している。2004年春から毎日必ず一枚鉄道写真を撮影する「1日1鉄!」(ブログ)を更新中!
鉄道の旅の臨場感を感じさせる写真を撮りたいといつも考えている。
社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
日本鉄道写真作家協会(JRPS)副会長
ブログ『1日1鉄!』>>
・写真展「ほのかたび」
4月末より東京 新宿の「ペンタックスフォーラム」にて中井先生の写真展が開催されます。
詳しくはこちら >>
201系の原型がまだ最も多く見られるのがこの京葉線だ。新習志野~海浜幕張間にある「京葉車両センター」には4編成が所属している。
京葉線は他にも209系500番代や京葉線でしか見られない205系の前面改造車、試験的に投入された連接型通勤電車E331系など、今や東京圏の通勤型の宝庫と言ってもよい場所だ。