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2018年の鉄道を振り返る[路線・総合編]

小田急の複々線化、平成の一大事業が完結

小田急電鉄で長年進められてきた複々線化工事のうち、最後の工事区間だった東北沢~世田谷代田間(約1.6キロ)の複々線が完成し、2018年3月3日に代々木上原~登戸間(約11.7キロ)の複々線が全面開業した。その2週間後の3月17日には、複々線全面運用にあわせたダイヤ改正が行われ、列車種別の再編、運転本数の増加、所要時間の短縮などが行われた。

同工事は、狛江地区、世田谷(経堂)地区、下北沢地区の3つに大別され、順次着工。狛江地区にあたる喜多見~和泉多摩川間は、1989年7月の着工後、1997年6月に高架式で複々線化された。世田谷(経堂)地区の世田谷代田~喜多見間(約8.8キロ)は1994年12月に着工され、2004年11月に複々線部分が完成。2013年3月には、下北沢地区を含む代々木上原~梅ヶ丘間(約2.2キロ)の上下線地下区間が暫定開業し、同区間の東北沢、下北沢、世田谷代田の3駅の地下化が実現した。下北沢駅や世田谷代田駅は地下3階を急行線、地下2階を緩行線とする2層構造としており、暫定開業では先に完成した急行線の運用を開始。緩行線については引き続き工事が行われ、2018年3月の全面開業に至った。東北沢~和泉多摩川間の複々線化事業が都市整備計画に決定されたのは1985年3月のことなので、事業期間は30年以上に及ぶ。平成時代と重なる一大事業だった。

3月のダイヤ改正では、「通勤急行」と「通勤準急」が名称として復活。いずれも平日朝の上りの運転で、通勤急行は新宿~唐木田間、通勤準急は本厚木駅発で東京メトロ千代田線への直通でそれぞれ設定された。平日朝の通勤時間帯では、千代田線直通列車を中心に旧ダイヤより21本多い105本の運転とし、大幅に増発。2018年8月の同社の発表では、上り最混雑区間のラッシュピーク時1時間の平均混雑率は、旧ダイヤでの192パーセントから151パーセントに低下したほか、ラッシュピーク時間帯の上り列車の所要時間も小田急多摩センター~新宿間で40分となり、最大14分の短縮が図れたとしている。

快速急行は、登戸駅への停車と多摩線内での運転を開始。本数も通勤時間帯を中心に増発し、主要駅間の速達化を図った。特急列車では、新型特急ロマンスカー70000形「GSE」の投入とともに、通勤客の着席需要に対応した列車として、上り通勤特急「モーニングウェイ号」、本厚木駅から千代田線に直通する通勤特急「メトロモーニングウェイ号」がデビュー。土曜・休日では、北千住~片瀬江ノ島間を結ぶ特急「メトロえのしま号」が新設された。新宿~小田原間をノンストップで走る箱根湯本駅行きの「スーパーはこね号」も増発。新宿~箱根湯本間は最速で73分で結ばれ、旧ダイヤよりも9分の短縮が図られた。

広がる交通系ICカード網

2018年も交通系ICカードの相互利用が拡大した。3月3日は、高松琴平電気鉄道が全国相互利用サービス対象のSuicaやICOCAなど全10種類のサービスを始め、3月17日には、広島県バス協会、広島電鉄、広島高速交通の「PASPY」エリアを対象に、新たに9種類の全国相互利用対象の交通系ICカードのサービスを導入した。4月1日には、湘南モノレールがPASMOのサービスを開始。自動改札機がない駅では、簡易改札機の設置がなされ、PASMOと全国相互利用対象の交通系ICカード全10種類が乗降時に使えるようになった。

JR西日本では、ICOCAの利用可能エリアの拡大が進んだ。3月17日のダイヤ改正にあわせ、草津線の貴生川~柘植間、和歌山線の高田~五条間でICOCAサービスを開始したほか、9月15日には、北陸本線の近江塩津~大聖寺間、山陽本線の和気~相生間、赤穂線の長船~播州赤穂間でそれぞれ導入。9月の導入日では、「岡山・広島・山陰・香川」、「近畿圏」、「石川・富山」のICOCA利用各エリアを1つとし、地域別としていたエリアを横断して利用可能にするサービスも始めた。同社では、その前段として、3月17日以降、ICカードにより各エリア内で乗車できる距離を営業キロ200キロ以内に制限。ただし、米原~相生間などの大阪近郊区間内相互間、岡山~出雲市間などの在来線特急列車停車駅相互間、尼崎~新宮間などの大阪近郊区間内の駅と在来線特急列車停車駅相互間については、200キロの制限対象外とした。

JR3駅、私鉄3駅が新たに開業

2018年3月17日のダイヤ改正にあわせ、おおさか東線(JR長瀬~新加美間)の「衣摺加美北」駅、JR京都線(摂津富田~茨木間)の「JR総持寺」駅、伊賀鉄道(桑町~猪田道間)の「四十九」駅、あいの風とやま鉄道(高岡~西高岡間)の「高岡やぶなみ」駅が在来線新駅として開業した。このほか、4月1日には、両毛線(富田~足利間)に「あしかがフラワーパーク」駅、10月20日には、秩父鉄道(永田~小前田間)に「ふかや花園」駅が開業。大船渡線BRTでも、新駅設置、既存駅の移設などが行われた。路面電車では、伊予鉄道本町線、長崎電気軌道で、既存停留場名の変更に伴う停留場の設置があった。

廃止された駅は、3月16日をもって営業を終えた根室本線の羽帯駅、4月1日の路線廃止とともに廃駅となった三江線の中間駅33駅がある。

20年前のあのとき

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1998年は、3月14日にダイヤ改正が行われた。同日のダイヤ改正にあわせて開業した駅は、JR東日本で3駅、JR四国で1駅。東北本線日詰~古館間に紫波中央駅、常磐線牛久~荒川沖間にひたち野うしく駅、武蔵野線新八柱~市川大野間に東松戸駅、高徳線志度~造田間にオレンジタウン駅が開業した。

進む駅の高架化

3月17日、熊本駅の在来線高架ホームが全面供用を始めた。旧0~2番のりばを高架化して1~3番のりばとし、鹿児島本線下りと、豊肥本線が高架ホームでの発着に変更。2015年3月に高架となった4~6番とあわせ、同駅の在来線ホームはすべて高架化された。

4月15日には、新潟駅の在来線高架化のうち、第1期の開業として、高架ホーム2~5番線が供用を始めた。5番線と新幹線11番線は同一ホーム化し、在来線と新幹線との平面乗り換えも同日に開始。「いなほ」と「とき」の一部列車間での乗り換えが円滑になった。地上ホームの1~4番線は廃止された。

大手私鉄では、相模鉄道の天王町~星川間で、11月24日に上り線が高架化され、天王町駅付近~星川6号踏切付近と、星川駅の全面高架化が完了。これを受け、12月8日にダイヤ改正が行われ、上りの一部特急・急行列車の所要時間短縮などが図られた。9月23日には、東武スカイツリーライン竹ノ塚駅の上り線ホームが高架線に切り換えられた。

20年前のあのとき

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1998年は、3月26日に西武線の練馬駅が高架化された。開業当初は単線だった西武有楽町線(練馬~新桜台間)の複線化も完成し、地下鉄有楽町線と西武池袋線との直通運転が始まった。

ありがとう三江線

三次駅と江津駅を結んだ三江線が、3月31日に営業運転を終えた。一級河川の「江の川」に沿いながら、広島県の内陸部から中国山地に入り、島根県の日本海側に抜ける路線で、全長は約108キロ。全線単線の非電化路線で、起点、終点を除く駅数は33あった。

全線開業したのは1975年8月。比較的歴史は浅かったが、利用者の減少や、自然災害に伴う路線維持の困難さなどから、2016年9月に廃止が決まり、2018年4月1日付で廃止された。2012年10月~12月には、三江線の鉄道ダイヤの間にバスによる運行を加える形で、沿線の活性化と三江線の利用促進を図る社会実験を実施するなど、三江線活性化協議会による取り組みもなされたが、利用者減少の歯止めにはつながらなかった。

三江線は、主に山間部を走ることから、自然災害の影響を受けやすく、大規模な自然災害で長期間の運休が、2006年、2013年にあった。2018年にも1月半ばの大雪により、一時期は全区間が不通となった。全線再開まで1か月以上を要したが、廃止日の前の乗車需要には間に合う形となった。JR西日本は、3月17日のダイヤ改正で、日中時間帯の運行が分断していた浜原~口羽間で1往復を設定。全区間を直通する列車を増やし、需要にこたえた。

廃止後は、三江線の廃駅、廃線を観光資源として活用する取り組みが、江の川鐵道を中心に行われ、旧口羽駅や旧宇都井駅などで各種イベントが開催されている。

市営から民営へ、大阪メトロ(Osaka Metro)誕生

2018年4月1日、大阪市営地下鉄が民営化され、愛称「Osaka Metro」として新たなスタートを切った。新たな運営会社は、大阪市高速電気軌道。大阪市から地下鉄8路線129.9キロと、ニュートラム7.9キロを引き継いだ。

大阪市による公営交通事業は、公営としては最初の路面電車を1903年9月に築港~花園橋間で開業したことに始まる。1933年には公営初の地下鉄として、御堂筋線(当時の1号線)を梅田~心斎橋間で開業し、その後は、四つ橋線、中央線、谷町線、千日前線、堺筋線、南港ポートタウン線(ニュートラム)、鶴見緑地線、今里筋線の順で開業。国内の公営の地下鉄として、最長の営業距離を誇った。2003年以降は、黒字経営を続け、2018年度の民営化に至った。

民営化と引き換えに、交通局のロゴ、表記などは順次見納めに。局章である通称「マルコマーク」にも注目が集まった。3月には、御堂筋線の一部列車に「サヨナラヘッドマーク」が掲出されるなどの「市営交通ご愛顧ありがとうキャンペーン」も行われた。

民営化初日には、記念企画として、南港ポートタウン線にゴールド(金色)の200系車両が登場。交通局時代に恒例だった車両工場での催しや、御堂筋線、四つ橋線などでの沿線イベントも引き継がれている。

1927年に運行を始めた大阪市営バスも民営化され、4月からは大阪シティバスが運営している。

進化する鉄道博物館~新館オープンと本館リニューアル開業

7月5日、さいたま市にあるJR東日本の鉄道博物館が、新館を開業した。あわせて、リニューアルした本館も全面的にオープンした。

新館は地上4階建てで、本館の南に新たに建設された。新館の展示面積は約3500平方メートル。新館と本館を合わせた全館の展示面積は、約1万3500平方メートルに広がった。新館1階には、日本で初めて営業最高時速320キロを実現した、E5系新幹線車両のモックアップ(グランクラス車両)と、日本初の新幹線・在来線直通運転対応の山形新幹線400系新幹線車両(411-3号車)の実物を展示。同階には、209系を使った車掌シミュレーターや、駅・指令・保守の仕事を体験できるコーナーも設けられた。新館2階は、E5系のほか、在来線車両の運転シミュレーターが設置。1階の展示とあわせ、「仕事ステーション」として展開している。2階には、来場者が自身のアバターを通じ、未来の鉄道などを疑似体験できる「未来ステーション」も設けられた。3階には、日本の鉄道の歴史を大きく6つに分けて紹介する「歴史ステーション」が開設。本館2階にあった歴史展示を移し、バージョンアップしたもので、時代ごとの鉄道技術を概観できるようになっている。4階にはレストランと、屋上展望スペース「トレインテラス」が設けられた。

本館では、2017年より順次開始したリニューアル工事により、主に展示の再構成を実施。4月には、旧「ヒストリーゾーン」を「車両ステーション」と名称変更し、車両中心の展示に転換した。屋外展示では、3月にE1系新幹線車両を加えた。

豪雨、台風、地震~鉄道は「災」を越えて

2018年は、列島各地が大規模な自然災害に見舞われ、鉄道にも大きな影響が出た年となった。

1~3月には大雪に伴う長期不通が北陸、北海道エリアを中心に生じた。廃止を控えた三江線も大雪で長期運休を余儀なくされた。6月に発生した大阪府北部地震では、関西エリアを中心に各線で運休が発生。同月の大雨では、高山本線の 7月の豪雨では、中国・四国エリアを中心に、九州北部、北近畿エリアなど各地で甚大な被害が出た。JR四国では、予讃線卯之町~北宇和島間が2か月以上を経て復旧し、同社管内の全線が再開。広島エリアでは12月に入り、呉線と福塩線が全面的に運行を再開した。芸備線ではなお三次~狩留家間の不通が続き、工事が順調に進捗した場合、2019年秋ごろに再開する見込みとしている。高山本線では、6月の大雨で飛騨萩原~上呂間が不通となった後、7月の豪雨で白川口~猪谷間に不通区間が拡大。全線再開まで5か月余りを要する影響を受けた。

9月には、台風21号・24号の直撃に伴う被害が生じた。21号では、関西空港へのアクセス区間、叡山電鉄の一部などが長期間不通になり、24号では、山陽本線、山陰本線の一部区間などに影響が出た。山陽本線は柳井~下松間が7月豪雨、台風24号で二度にわたり長期不通となり、同区間を通る貨物列車にも影響が及んだ。このため、JR貨物とJR西日本は、伯備線、山陰本線、山口線を経由するう回ルートで貨物列車を運行。同区間が復旧した10月半ばまで続けられた。9月には、北海道胆振東部地震も発生。一時は、北海道の全鉄道路線が運休となった。

12月下旬時点で、2018年の自然災害に伴い運休が続いている区間は、三次~狩留家間のほか、筑豊本線の桂川~原田間、大井川鐵道の閑蔵~井川間がある。そのほかの区間は、いずれもその年のうちに復旧した。

運休、不通が多発した一方で、2017年7月豪雨での被害からの復旧を果たし、久大本線が約1年ぶりに全線で運転を再開。2011年7月の豪雨以来、不通が続く只見線会津川口~只見間では、6月に本格的な復旧工事が始まった。

20年前のあのとき

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1998年も台風被害があった。9月24日~、台風7号の水害に伴い、土讃線繁藤~高知間が不通になった。再開したのは3か月後の12月25日だった。

関電トンネルトロリーバスが廃止

「関電トンネルトロリーバス」が、その歴史に幕を閉じた。

扇沢(長野県大町市)~黒部ダム(富山県立山町)間を結ぶ関電トンネルで、関西電力が運行していたトロリーバスが、11月末をもって運行を終えた。同社のトロリーバス事業は、1964年8月にスタート。長野県と富山県を結ぶ「立山黒部アルペンルート」の一翼を担う乗り物として、54年にわたって運行された。

運行最終年に在籍していた車両は、1993年から1996年にかけて導入されたもの。年数が経ち、今後の車両更新に費用を要することに加え、運行ルート上の国立公園への環境影響などを考慮し、同社はトロリーバスの廃止と、電気バスへの転換を決めた。

鉄道事業としてのトロリーバスの廃止は2019年3月としているが、アルペンルートが11月ごろから翌年4月ごろまで運休となることから、運休期間に入るのにあわせての営業運行終了となった。関西電力では、2018年を「トロバスラストイヤー」とし、車両のラッピング、各種イベントなどのキャンペーン企画を展開。運行最終日には、ラストラン出発式が開催された。

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