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2020年の鉄道トピックス[路線・総合編]

東京2020に向けて~駅の改良、大会期間中の動きなど

2020年夏に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会では、会期中に多くの人々が東京圏に集まり、移動することが予想されることから、鉄道各社でも鉄道利用者の増加を見越した対応が進められている。

取り組みの1つとして、利便性の向上や移動の円滑化を図るための駅の改良工事がある。JR東日本では、競技会場周辺の駅として、原宿駅、千駄ケ谷駅、信濃町駅、有楽町駅、新木場駅の5駅と、競技会場アクセス路線への乗換駅として、新橋駅、浜松町駅の2駅を対象に、ホームの増設、コンコースの拡張、ホームドアの整備などの工事を進めている。大会前にはこれらの工事が竣工する予定。

原宿駅では、新駅舎と新ホームの供用が3月21日に始まる。大正時代に竣工した現駅舎は、オリンピック・パラリンピックの終了後に解体された後、資材の一部を用いて、現駅舎の意匠を再現した施設が建造される予定。千駄ケ谷駅では、3月22日に新宿方面専用ホームが供用開始される。

このほか、東京臨海高速鉄道の国際展示場駅、東京テレポート駅でも大会にあわせた改良工事が完了する見込み。大会前に整備を終える工事としては、渋谷駅の埼京線ホームの移設もある。埼京線ホームは、現ホームから北へ約350メートル移動。山手線と埼京線のホームが並ぶ形になり、両線相互の乗り換えがしやすくなる。

オリンピック大会期間中の取り組みとしては、列車の混雑への対応、競技会場からの帰宅需要にあわせた深夜時間帯の運転がある。JR東日本、関東大手私鉄9社と、東京都交通局、横浜市交通局、東京臨海高速鉄道、横浜高速鉄道、埼玉高速鉄道、首都圏新都市鉄道、北総鉄道、東京モノレール、ゆりかもめは、7月24日から8月9日にかけ、各日深夜時間帯の運転を予定。山手線と、東京メトロ、都営地下鉄の各線では、概ね2時過ぎまでの運行が計画されている。

話題の新駅が開業

2020年3月14日のダイヤ改正にあわせて、山手線・京浜東北線の田町~品川間に「高輪ゲートウェイ」(たかなわげーとうぇい)駅が、東海道本線の袋井~磐田間に「御厨」(みくりや)駅が、予讃線の北伊予~伊予横田間に「南伊予」(みなみいよ)駅がそれぞれ開業する。

高輪ゲートウェイ駅は、田町~品川間の車両基地(東京総合車両センター田町センター)の再編を経て新設される駅。山手線の駅としては1971年開業の西日暮里駅以来、京浜東北線では2000年開業のさいたま新都心駅に次ぐ新駅となる。最新の駅サービス設備の導入、実証実験を進める予定もあり、警備、清掃、駅案内などの各種ロボットを試行や実験を兼ねて導入するほか、QRコードを使った改札機も採り入れ、評価実験を行う。

6月6日には、東京メトロ日比谷線の神谷町~霞ケ関間に「虎ノ門ヒルズ」(とらのもんひるず)駅が暫定開業する。東武東上線の東武竹沢~男衾間にできる「みなみ寄居」(みなみよりい)駅は、10月31日に開業する。このほか、2020年内に開業予定の新駅としては、三陸鉄道田老~摂待間の「新田老」(しんたろう)駅、高松琴平電気鉄道三条~太田間の「伏石」(ふせいし)駅がある。3月21日には、富山ライトレールでも停留場の新規開業などがある。

3月14日のダイヤ改正を機に、駅の廃止も行われる。対象は、根室本線の古瀬駅、釧網本線の南弟子屈駅、参宮線の池の浦シーサイド駅の3つ。5月6日には、札沼線の非電化区間(北海道医療大学~新十津川間)にある15駅が、同区間の鉄道事業の廃止とともに営業を終える。

常磐線、全線での運転が再開、直通特急も復活

2011年3月の東日本大震災により、一部区間の不通が長引いていた常磐線。運転再開区間を順次拡大し、富岡~浪江間を残すのみとなっていたが、2020年春に同区間が復旧し、9年ぶりに常磐線全線での運転が再開される。

全線再開に伴い、東京都区内と仙台市内を結ぶ特急列車の直通運転も再開。常磐線特急用車両E657系を増備して運転を始める。

2020年春には、常磐線の草野~浪江間の各駅と、小高駅、磐城太田駅でのSuicaサービスも始める。首都圏エリアに草野~浪江間を、仙台エリアに小高駅、磐城太田駅を追加。常磐線のSuicaエリア拡大にあわせ、「大都市近郊区間」も変更する。いわき~浪江間が東京近郊区間に、原ノ町~小高間が仙台近郊区間にそれぞれ追加される。浪江~小高間にある桃内駅はSuicaサービスの対象外で、どちらの近郊区間にも属さない駅となる。

東武アーバンパークライン、新たなステージへ

3月14日、東武アーバンパークラインのダイヤ改正が実施される。六実~逆井間の複線化を活かした改正で、急行運転区間の拡大などが行われる。

ダイヤ改正に伴う急行列車の運転は、停車駅の少ない速達タイプを全線で運行するもの。現行では春日部~船橋間で各駅に停車している急行の停車駅が変更され、運河駅以南の途中停車駅は、流山おおたかの森、柏、高柳、新鎌ヶ谷の各駅のみとなる。春日部~運河間は引き続き各駅に停まる。

運転本数は、朝と夕夜間のラッシュ時間帯に柏~船橋間で1時間に2本、日中時間帯には大宮~船橋間で同2本。所要時間の短縮が図られ、夕夜間ラッシュ時間帯の柏~船橋間は現行で30分のところ19分に、日中時間帯の運河~船橋間は現行で49分のところ34分となる。

平日夜間には、柏駅から春日部方面に向かう特急「アーバンパークライナー」が新設される。使用車両は、500系「リバティ」。通勤時の着席需要に応える列車として運行される。また、朝・夕などに、大宮~柏間で「区間急行」が新設される。

運行体系の変化~富山での南北接続、札幌市電の上下分離など

2月22日、富山地方鉄道と富山ライトレールが合併する。富山地方鉄道を存続会社とする合併で、富山ライトレールは同社の路線の1つとなる。

両社の合併に先行して、富山地方鉄道市内軌道線と富山ライトレールとの「南北接続」のための工事が2016年度から実施された。2015年3月に開業した富山駅高架下の停留場を両線の接続ポイントとしたうえで、富山ライトレールの線路を富山駅北停留場から同停留場まで延伸する工事、インテック本社前~奥田中学校前間に永楽町停留場(仮称)を新設し、永楽町~奥田中学校前間を複線化する工事などが進められている。南北接続後、富山駅北停留場は廃止される。

南北接続を記念して、3月20日には開通式などが開催。21日に開通し、一体的な運行が始まる。同日は、富山地方鉄道の路面電車が乗車無料となる。南北接続に伴う直通運転のルートは、南富山駅前~岩瀬浜間、大学前~岩瀬浜間が中心。朝のピーク時にはそれぞれ1時間に3本運行され、そのほかの時間帯は、環状線~岩瀬浜間が1時間に2本などの設定となる。

4月1日には、札幌市交通局の市電区間(軌道事業)が上下分離される。札幌市交通局は、軌道施設、車両、土地の保有と更新、軌道の新設などを担当。実際の運行、施設・車両の維持管理については、札幌市交通事業振興公社が担うようになる。

北神急行電鉄でも動きがあり、北神急行線(新神戸~谷上間)の神戸市への譲渡が行われる。譲渡は、北神急行電鉄の筆頭株主である阪急電鉄と、神戸市との間で検討が進められたもの。北神急行線と地下鉄西神・山手線とは相互直通運転を行っているが、運賃なども含めた一体的な運行が譲渡によって可能になる。両線の一体化は、10月1日までに行われる予定。運賃の低減も図られ、谷上~三宮間の大人運賃は280円を見込んでいる。

札沼線、非電化区間が閉幕

札沼線の非電化区間、北海道医療大学~新十津川間(47.6キロ)が、5月6日をもって営業を終了し、7日に廃止となる。

札幌~石狩沼田間を結ぶことから札沼線の名がついた同線だったが、1972年に新十津川~石狩沼田間が廃止されたことで、実態と異なる路線名が長く続いていた。実際の路線は、桑園~新十津川間(76.5キロ)。このうち、桑園~北海道医療大学間は、2012年に電化されるなど整備が進む一方で、北海道医療大学~新十津川間は辛うじて維持する状態が続き、2018年度の輸送人員は1日あたり62人と極めて少なくなっていた。同区間では大幅な赤字が累積しており、JR北海道では将来的に収支の改善が見込めないと判断。沿線の4つの町との度重なる協議の末、2018年12月に同区間の廃止が合意され、同月中に鉄道事業の廃止届が国土交通省に提出された。

北海道医療大学駅以遠の現行での運転本数は、1日15本。末端区間の浦臼~新十津川間に至っては、1日1往復のみの運転となっている。

廃止区間に並行するバス路線がない当別町、月形町、浦臼町には、新たなバス系統が設定され、4月1日に運行を始める予定。

気仙沼線、大船渡線、被災区間の鉄道事業が廃止へ

2011年3月の東日本大震災では、気仙沼線、大船渡線でも大きな被害が出た。太平洋沿岸やその周辺を中心に、長期にわたり不通となり、気仙沼線では柳津~気仙沼間、大船渡線では気仙沼~盛間が、鉄道路線としては復旧の見通しが立たない状態に。JR東日本は、両区間の鉄道による復旧を見送るとともに、2019年11月に鉄道事業の廃止届を国土交通省に提出した。2020年内に廃止となる見込み。

JR東日本仙台支社、盛岡支社では、気仙沼線、大船渡線の不通区間のうち、一部の鉄道用地をバスの専用道として整備するなどしたうえで、一般道路を含めたルートでBRT(バス高速輸送システム)の運行を開始。気仙沼線BRTは、2012年8月に暫定運行を始めた後、同12月に正式な営業運行に入った。大船渡線BRTは、2013年3月に運行を開始。その後、両BRTとも停留場の新設、移設、専用道区間の拡張など整備が進められてきた。2020年も気仙沼線BRTで1つ、大船渡線BRTで4つの停留場が新設される。

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