9月28日に発売された、ニコンの新型カメラ「ニコン Z 7」。フルサイズセンサを搭載したミラーレスカメラとしてはニコン初の製品で、8月末の発表以来、多くの注目を集めてきました。鉄道コムでは、このZ7をお借りすることができました。これまでの一眼レフより軽くなったZ7、スタッフの我流ではありますが、その実力を鉄道撮影で測ります。
特徴
Z7は、ニコン初のフルサイズセンサを搭載したミラーレスカメラ。有効画素数は4575万画素を誇ります。オートフォーカス(AF)面では、像面位相差AF画素を493点搭載。撮像範囲の水平・垂直約90%をカバーしており、一眼レフカメラよりもフォーカスポイントが多くなっています。ボディにはマグネシウム合金を採用し、防塵・防滴性と堅牢製に配慮しています。
ミラーレスカメラの特徴とも言える電子ビューファインダーは、約369万ドットの有機ELパネルを採用。視野率は約100%、ファインダー倍率は約0.8倍です。同じフルサイズセンサを搭載した一眼レフ「D5」ではファインダー倍率約0.72倍、「D850」で約0.75倍となっているため、大きく見やすくなっています。
背面は、タッチパネルを採用したチルト式液晶や、フォーカスセレクタを配置。小型化を実現するためにボタン配置が変更されていますが、D850やD500といったフラッグシップ機と同等の操作性となるよう考慮されており、大きな違和感はなく使用できました。
レンズマウントは、ニコンがこれまで採用してきた「Fマウント」から、光学性能を追求した新開発の「Zマウント」に変更されました。2018年に発売されるZマウントレンズは「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」の3本のみですが、Fマウントレンズを装着できる「マウントアダプター FTZ」を使用することで、これまでのレンズ資産を生かした撮影が可能です。
実写
それでは、実際に撮影した写真をご紹介しましょう。撮影に使用したレンズは、「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」「AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR」「AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR」の3本。後者2本は、FTZを使用して撮影しました。
まずは横浜市営地下鉄でトライしました。AFは、カメラが自動で被写体に追尾してピントを合わせる、「オートエリアAF」の「ターゲット追尾AF」機能を使用。先頭車にフォーカスポイントを設定すると、難なく追従してくれました。マウントアダプタ使用によるAFスピードの低下が心配でしたが、こちらも気にならないレベル。
続いて京急線沿線へ。一部区間では最高時速120キロの列車が行き交う、在来線では速度が高めの路線。最大で秒間9コマとなる連写性能が役に立ちます。
連写性能は通常秒間5.5コマ、拡張で9コマ。露出固定とはなりますが、秒間9コマの連写性能はハイエンド機D850と同じスペックです。また、転送速度が速いXQDメモリーカードを採用しているため、かなりの枚数を連写した後でも、バッファ容量の制限で息切れしない点は嬉しいです。
車両基地に留置されていた車両を撮影。ドアに貼り付けられたホームドア制御用の二次元コードですが、バーコード下に書かれた文字まで読み取ることができます。4575万画素の威力を実感しました。
築堤を走る列車を見上げるように撮影。ファインダーをのぞくと厳しい体勢になってしまう場所でも、Z7ならチルト式液晶を使えば簡単に撮影できました。
さらに速い列車を撮影するため、東海道新幹線の小田原駅へ。この写真ではしっかりとAFが食いついてくれましたが、たまに新幹線の速度にAFが追いついてくれないことがありました。新幹線のような高速で動く被写体では、まだまだ難しいようです。
新横浜駅手前のカーブから、撮像範囲設定をDXモードにして撮影。これでもレンズの焦点距離が足りていませんが、400ミリのレンズでもAPS-Cセンサ搭載機相当の1.5倍にクロップして、35ミリ版換算で600ミリとして撮影できます。クロップしても約1950万画素と画素数が高いため、解像度が落ちたようには見えません。なお、時速約200キロほどで走行していると思われるこの区間ですが、電子ビューファインダー(EVF)はほぼ遅延を起こさず表示されており、一眼レフカメラのように違和感なく撮影できました。
品川駅の新幹線ホームから撮影。一眼レフカメラより小型のボディに比較的大きめのレンズを装着しての撮影ですが、縦持ちでも持ちづらいと感じることはありませんでした。
発車した新幹線のバックショット。競合機と異なりフォーカスポイントのセレクタを備えているため、構えると同時に思ったところへフォーカスポイントを持っていくことができます。また、1/80秒と比較的遅めのシャッタースピードですが、本体に内蔵した手ぶれ補正ユニット(VR)が強力に補佐。もともとVRの効きが強い200-500ですが、さらに安定して撮影できました。
続いて、暗い場所での性能を試すために向かったのは、上野駅地下の新幹線ホーム。AFのモードをいくつか試してみたのですが、どうやら暗所では難しい様子。AFが何度か迷ってしまいました。しかしながら、肉眼でははっきり見えない暗所でも、EVFなら撮れる写真と同じ明るさで映し出してくれます。ミラーレスカメラの大きな利点です。
ISO感度はISO12800に設定。ノイズは出ていますが、数世代前の一眼レフカメラよりもかなり低減されています。ちなみに、最大常用感度はISO25600です。
撮影で使用して、まず感じたのはその軽さです。フルサイズ一眼レフカメラであるD850と同等の性能を有していながら、軽めの標準レンズ1本分に近い約300グラムの重量差は、特に少しでも荷物を減らしたい旅行時などでは嬉しいです。
また、光学ファインダーの代わりに搭載されたEVFも、表示遅延はまったく気にならないレベル。現在の設定で撮影した写真とほぼ同じ画が表示されるなど、むしろ一眼レフカメラより使い勝手は良いのではないかと思わせてくれました。
電池の寿命も不満はありませんでした。カタログスペックでは、ファインダーのみ使用で約330コマが撮影可能となっていますが、使用した感覚ではさらに撮影も可能なよう。もちろん使用条件によって電池寿命は変化しますが、一眼レフカメラと比較しても大差はないように感じました。また、Z7ではUSB端子からの充電も可能。旅先で電池が切れそうになっても、手軽に充電することができます。
一方で、気になったのはAFの精度。日中の明るい場所では問題ないのですが、日没直後やトンネル内などの暗い場所、新幹線や航空機といった高速で移動する被写体では、AFが迷ってしまったり追いつけなかったりという場面がありました。特に暗い場所での性能を求めるのは酷ではありますが、筆者が普段使用しているカメラ「D500」と比較してしまうと、少し物足りなさがあります。AFについては、まだまだZマウントシステム自体が生まれたばかりなので、今後に期待したいです。
ニコンが満を持して送り出したZ7。同社の一眼レフカメラと比較すると残念ながら及ばない点もいくつかありますが、ミラーレスカメラの軽量性や便利なEVFは、それを補って余りあるように感じます。一眼レフカメラとミラーレスカメラの向き不向きを把握すれば、とても頼もしい相棒となってくれるのではないでしょうか。
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