2018年の「鉄道フェスティバル」(日比谷公園)で行われた、鉄道写真家・山下大祐氏と鉄道タレント・伊藤桃さんのトークショーの内容をご紹介します。
カメラを片手に伊藤さんが乗車したのは地元に近い秋田・岩手ののどかなローカル線
――本日は山下さんと伊藤さんに、「旅と写真で語る、鉄道の魅力」をテーマに、撮影していただいた作品を紹介しながらお話を聞いていきたいと思います。伊藤さんはソニーのカメラとともに旅に出たそうですね。
伊藤さん(以下敬称略):はい。「秋田・岩手 ローカル線の旅」をしてきました。私は実家が青森県の野辺地町にあるので、実家に帰る時に久しぶりに鉄道の旅をしようと決めていて。その時に撮った写真をご紹介したいと思います。最初に秋田新幹線で角館に出て、そこから秋田内陸縦貫鉄道に乗ってきました。
伊藤:これは列車から降りて車両を撮影したものです。田園風景など、大自然の中ではカラフルな車両が映えますよね。秋田内陸縦貫鉄道は赤やブルーなどカラフルな車両が多いので、風景とのコントラストを楽しめる写真も撮れるんですよ。
山下:秋田の内陸線には「秋田 犬っこ列車」が走っていますからね。秋田犬をイメージしたラッピングなのですが、車両ごとに基調の色がちがうんです。そういう列車との出会いも旅の楽しさですよね。
伊藤:車窓からだけでなく季節の景色の中を走る車両も撮りたいので、乗り鉄をする時はなるべく駅に降りるようにしています。駅に入ってくる車両を正面から撮れますし、駅周辺を散歩して地元の方とお話しすると、路線のことをより深く知ることができますから。
伊藤:この駅、ご存知の方がいらっしゃったら手を挙げていただけますか。山下さんは見ただけでわかったみたいですが。
山下:でも意外と手を挙げている方は少ないですね。ここは有名なアニメ作品に登場する駅のモチーフになったと言われている駅ですね。
伊藤:実はこれ、けっこう撮るのが難しかったんですよ。線路がとても近いじゃないですか。駅から50mくらいのところにある踏切から撮影したんですけど、そこからだとズームを効かせないとこの写真が撮れなくて。今回はRX100 VIという200mmまでズームができるカメラだったので思い通りの写真が撮れました。ポケットに入るくらい小さいのにここまでズームアップできたのでビックリです!
グリップがよく、撮りたい時にすぐ撮れる。軽くて小さいカメラは鉄道の旅に最適
伊藤:ここからは三陸鉄道ですね。来年、北リアス線と南リアス線が繋がるので、その前に一度乗っておかないと、と思って行ってきました。今回私が使ったのは一駅だけ降りられる旅の切符。北リアスでは田野畑駅に降りることにしました。かなり迷いましたが、震災後、完全復旧する前に行ったことがあったので、完全復旧した今、もう一度降りてみたいと思って。この辺りは、津波の被害が大きかったところですから。
山下:これは海に入って足元を撮ったわけですね。
伊藤:田野畑駅の近くには海もあるので、せっかくなので入ってみました。足を海に浸けながら、三陸の海をのんびり眺めて、きれいな海が復活してよかったと一人思いを馳せていたので、周りの人にはちょっと怪しい人に見えたかもしれません(笑)。
山下:伊藤さん、こんなに豪華な車両にも乗ったんですか?
伊藤:これは「さんりくしおさい」の愛称で知られるレトロな列車の内装ですね。観光列車として使われることも多いですが、通常運行でも走っていて。本当に内装が素敵なんですよ。ゆったりした椅子と大きなテーブルでリラックスしながら鉄道の旅を楽しめました。
山下:普段からこの仕様ですからね。普通に旅をしていてこんな豪華な列車に乗れるなんて、伊藤さん、ツイていますね。
伊藤:田野畑駅に降りたことで出会えた電車ですね。おかげでちょっと「いい旅、夢気分」を味わえました(笑)。
――今回、伊藤さんにはコンパクトカメラのRX100 VIとミラーレス一眼のα6000を使っていただきましたが、実際に使ってみていかがでしたか?
伊藤:乗り鉄の旅はずっと荷物を持ったままなので重いカメラだと大変ですが、今回使ったカメラはどちらも本当に小さくて軽いので助かりました。RXは想像以上にズームが効くし、αはグリップが良くてすごく持ちやすい。構えてからすぐにシャッターを押せたのでとても使いやすかったです。
山下:どちらも女性でも扱いやすいサイズ感ですよね。しかも、グリップが少し前に出ていて、ひっかかりのある形をしていますから。意外とそれだけで、シャッターを押す時のブレなども抑えることができます。さすが伊藤さん、見るポイントが違いますね! α6000はAPS-Cサイズのセンサーを搭載していますが、フルサイズミラーレスと同じレンズを使えるのが魅力です。レンズはそのままで気軽にステップアップできるので、ぜひ伊藤さんにもαのフルサイズ機を試してほしいと思います。
α7R IIIはISO感度12800も常用できる高画質。暗がりでもドラマチックな作品が撮れる
――山下さんは伊藤さんが使用したα6000よりもイメージセンサーが大きいカメラを使っていますよね? どのようなカメラを使っているのですか?
山下:フルサイズセンサーを持ったミラーレス一眼、α7R IIIで撮っています。ピクセルを多く持つ高画素であり、連写性能も高くて動く被写体にも強い。バランスのとれた万能なカメラです。
――α7R III には5つのポイントがありますので、今回はそれに基づいて山下さんに作品を紹介していただこうと思います。
山下:はい。まずは「高画質」についてです。それがわかる作品からご覧いただきましょう。
この作品は群生するアジサイ越しに走るサンライズエクスプレスを写したものです。日没から30分後くらいだったので、撮影時は暗がりの中でした。注目していただきたいのはISO感度。ISO12800で撮影しています。サンライズエクスプレスは走っていますから1/1000秒のシャッタースピードが必要です。そのため感度を12800まで上げたわけです。
α7R IIIはISO12800を常用感度として使えるほど高感度性能を誇ります。こんなに暗い状態で撮影しても手前の花はきっちり写っているところがすごい。
列車の窓明かりを出すためには、かなり暗い状況で地明かりとの露出が揃わないといけません。日中に撮ると露出が落ち込むため、列車の窓明かりは写りませんから。オレンジ色の車内の明かりが表現できるのは、かなり暗い状況ということです。その暗さで撮っても高感度で高い解像力を見せてくれるのは本当に見事です。
頼りになる最高10コマ/秒のスピード性能。機動性が高く流し撮りでも被写体を逃さない
山下:次は「スピード」について。下の作品はそれがなければ撮れなかった1枚です。画面の右側はトンネルの出口があり、列車が出てきた瞬間を狙いました。α7R IIIは最大秒間10コマの連写ができるので、こういったタイミングが取りにくいシーンでも活躍してくれます。
山下:こういう時は連写に頼るしかないんですよね。でも、連写が遅いカメラでは頼ろうとしても頼れない。状況が見えていたら1枚切りでも撮れる可能性はありますが、見えないところから出てくるので非常に難しいところです。
でも頼れる連写性能があれば、タイミングを見計らって連写すればいいわけですから。思い通りの位置に失敗なく列車を止めるためには、α7R IIIのような連写性能の高いカメラが役立ちます。
山下:次の作品では「機動性」の高さについて解説します。僕はファインダーアクションの良さも機動性や撮りやすさに繋がっていると思っているので、連写時のファインダーアクションについてお話したいと思います。
上の写真は列車の動きに合わせてカメラを振り、列車の動きにシンクロさせることで背景が流れて写るという「流し撮り」で撮影したものです。これも連写を使っていますが、流し撮りの場合は連写で構図を安定させつつ、動いている被写体を追いかけて、かつシャッターを切り続けなければならないためファインダーの見え方がカギになります。
α7R IIIは連続撮影枚数の選択が可能ですが、ここでは最高8コマ/秒と10コマ/秒で撮った時のファインダーの見え方の差について説明します。8コマ/秒で撮影すると、1コマ撮るごとにブラックアウトをして、明るくなった時はレンズの先のライブの画が見える。つまり常にライブビューで見ることができるわけです。しかし、10コマ/秒の時は静止画が連続します。速さ優先で、撮った静止画が連続して見えるという状態になるためライブビューで見ることができません。
秒間10コマでは被写体を追い続けることが難しいので、流し撮りをする場合は秒間8コマの連写を選んで流し撮りをしていただければ、バシッとキマりやすいということ。何を優先するかによって連写の特性を活かせるところも、α7R IIIが持つ機動性の高さだと思います。