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鉄道とあわせて使いたい夜行バス 青春18きっぷユーザーの夜間移動にも

2019年2月12日(火) 鉄道コムスタッフ

春休みや夏休みといった長期休暇シーズンにおいて大活躍するのは、全国のJR線で普通列車が乗り放題となる青春18きっぷ。国鉄末期の発売開始以来、昔も今も変わらず老若男女に根強い人気を誇るきっぷです。しかしながらここ数年で、青春18きっぷとあわせて使いやすい夜行快速列車は、次々と廃止されました。2019年でも設定されているのは、東海道本線の「ムーンライトながら」のみ。青春18きっぷの利用と夜間の移動による効率的な移動を両立させることは難しくなっています。

ここで、他の交通機関、夜行高速バスに目を向けてみるのはいかがでしょうか。もちろん青春18きっぷは利用できませんが、夜間に寝ながら移動できるのは、大きなアドバンテージとなります。かつて夜行列車としのぎを削った高速バス。当時、多くの利用客が夜行列車ではなく高速バスを選んだのは、その価格と利便性が一因でしょう。他交通機関はもとより、高速バス同士でも競合が激しいこの業界。新幹線のグリーン車以上の座席を備えた超高級仕様から、在来線以下の価格まで抑えた格安仕様まで、さまざまな選択肢が提供されているのが特徴です。

今回は、特に青春18きっぷとあわせて使いやすい、価格を抑えた夜行高速バス路線をメインにご紹介します。

車内

さまざまな座席の種類がある高速バス。日本の高速バスでは大きく分けて、2列、3列、4列の3種類があります。このうち2列の座席配置は、各社で最高級クラスの便に採用されるもの。個室のように区切られていたりと快適性は十分ですが、価格帯も新幹線や飛行機と比較できるクラスです。

3列シートは、各地の夜行高速バスで多く採用されているタイプ。中央列の両側に通路を配置する1-1-1配置と、1列-2列で座席を配置する1-2配置の2タイプがあります。1-2配置の2列側でも、座席同士には若干のスペースがあるほか、夜行路線では個別カーテンを備える場合も多いため、プライバシーにはある程度配慮されています。

国際興業バスの3列シート車両。左側の覆いがある部分には、トイレが設置されています
国際興業バスの3列シート車両。左側の覆いがある部分には、トイレが設置されています

4列シートは、観光バスで多く見られるような2-2の座席配置。近・中距離の昼行高速バス路線では一般的であるほか、一部の格安系夜行高速バスでもこのタイプを採用しています。夜行バスとして見た場合は、隣の席に座る人が近い、狭い、といった面で快適とは言えませんが、その一方で3列シート便よりも手ごろな価格が魅力です。また、一口に4列シートと言っても様々なタイプがあり、補助席を省略して座席幅を広くした型や、3列シートに匹敵する居住性を誇る型など千差万別。一部事業者の予約サイトでは、予約時に充当される座席タイプの画像が表示されるため、価格と快適性を考慮しながら、座席や便を比較して選ぶことができます。

4列シート車の車内(イメージ)。写真の車両は、補助席を廃して座席幅を広くしたタイプを採用しています
4列シート車の車内(イメージ)。写真の車両は、補助席を廃して座席幅を広くしたタイプを採用しています

JRバス系列

JRバス関東などが運行する、東京~大阪間の「青春エコドリーム」
JRバス関東などが運行する、東京~大阪間の「青春エコドリーム」

かつて日本国有鉄道自動車部として、国鉄の一部を担っていたJRバス。現在は北海道から九州までの8社が、JR旅客各社の子会社としてバス事業を営んでいます。国鉄時代は鉄道線の補完や建設促進などを目的としていたバスも、現代では昼行・夜行問わず幅広い路線を手掛け、一部では鉄道路線と競合するレベルにまで成長しています。

そんなJRバスの看板商品の一つが、夜行高速バス「ドリーム号」です。東京~大阪間から始まったドリーム号は、今では全国各地で運行される人気商品。特に東京~大阪間などの人気路線では、「ドリームルリエ」などの快適性を追求した座席から、「青春エコドリーム」などの経済性に特化した座席まで、さまざまな選択肢を提供しています。

JRバスの「青春エコドリーム」に使用されるエアロキングの車内(イメージ)。リクライニング角度は標準以上と言えるものの、天井は低く座席間隔も詰められており、窮屈さがあります。値段と快適性がトレードオフとなるつくりです
JRバスの「青春エコドリーム」に使用されるエアロキングの車内(イメージ)。リクライニング角度は標準以上と言えるものの、天井は低く座席間隔も詰められており、窮屈さがあります。値段と快適性がトレードオフとなるつくりです

乗車料金は標準的か若干高め。とはいえ、早期購入割引や学割などのさまざまな割引が用意されているほか、先述のとおり座席タイプによってはかなり低価格で購入することができます。たとえばハイシーズンのドリームルリエでは東京~大阪間で1万8500円などの設定ですが、一方で同区間を走る青春エコドリームの最安価格は3500円と、大きな開きがあります。快適性を取るか、経済性を取るか。東京~名古屋・大阪・金沢間のような一部路線に限られますが、さまざまな座席タイプを選ぶことができるのも魅力です。

一般バス事業者系列

小田急バスが運行する、東京と広島を結ぶ「ニュー・ブリーズ」号
小田急バスが運行する、東京と広島を結ぶ「ニュー・ブリーズ」号

鉄道業界でJRに対し私鉄があるように、バス業界でもJRバスグループのほか、さまざまな会社が事業を展開しています。

これらの事業者では、長距離は3列シート、中距離は4列シートといったモノクラスが一般的。JRバスのような上級クラスは、西日本鉄道の「はかた号」や中国バスの「ドリームスリーパー」など、一部に限られます。

鉄道では私鉄に当たるこれらの事業者は、地域に密着した停留所の多さが魅力。国鉄路線の補完から始まったJRバスや、都市中心部の高需要地発着に絞り利益を上げていた後述の新規参入事業者系列と異なり、各地方の出発地域でこまめに停車することで、地元から乗りたい利用客のニーズに応えています。

乗車料金は、事業者にもよりますが、5000円台から1万円台といった標準的なもの。格安な設定としている事業者は多くはありません。割引を設定する事業者もありますが、各社で異なるため、事前の確認が必要です。

新規参入事業者系列

ツアーバス発祥事業者としては最大手のWILLER EXPRESS
ツアーバス発祥事業者としては最大手のWILLER EXPRESS

かつて格安なバスとして台頭した「ツアーバス」。道路運送法に基づく乗合バスではなく、旅行業法に基づいた貸切バス、つまりツアー内容が片道のバス乗車のみという旅行商品扱いで販売していました。

しかしながら、その値下げ競争が続いたこともあり、2012年には運転手の居眠りによる大事故が発生。これを機に、国土交通省がツアーバスと従来からの乗合高速バスを一本化し、新たな制度が2013年にスタートしました。

現在は、JRバスや西日本鉄道といった旧来の事業者も、WILLER EXPRESSなどのツアーバス発祥の新規事業者も、同じ法律の下に安全基準を適用し、運行しています。乗務員に対してはモニタリングシステムを適用している事業者があるほか、バス車両への衝突被害軽減ブレーキなど安全装備の搭載も進んでおり、安全性についてはかつてより向上し、従来からのバス事業者と同じレベルといえるでしょう。

座席については、快適性を極めた高級クラスから、通常の観光バススタイルの4列シートまでさまざま。4列シートでも快適性を考慮した座席など、バラエティに富んでいます。インターネットでの予約時には画像つきで座席タイプを確認できることが多いので、時間のみならず座席で便を選ぶ楽しさもあります。

WILLER EXPRESSの「リラックス≪NEW≫」。格安な4列シートながら、140度のリクライニング角や顔を隠せるフードなど、居住性に配慮したつくりが人気です
WILLER EXPRESSの「リラックス≪NEW≫」。格安な4列シートながら、140度のリクライニング角や顔を隠せるフードなど、居住性に配慮したつくりが人気です

料金は3・4列シートならば標準的か割安。観光バススタイルの座席の場合、オリオンバスの東京~大阪間で3500円、といった格安設定もあります。この記事の趣旨からは外れますが、もちろんハイグレードな設備を追求した設定もあり、たとえば海部観光が運行する徳島~東京線の「マイ・フローラ」では、1万3100円からの設定ながら2列12席配置と、バスで可能な最大限の設備をきわめています。

購入

乗車券の購入は、現在はインターネットが一般的。JR系の「高速バスネット」、中央高速バスを多く扱う京王系の「ハイウェイバスドットコム」、独立系の「発車オ~ライネット」が、多くの路線を扱う代表的なサイトです。このほか、ツアーバスが発祥の各事業者は、自社サイトでのみ予約を取り扱うことが多くみられます。

窓口などでの購入ももちろん可能。バスターミナルではみどりの窓口のような窓口があり、こちらで乗車券を購入できます。また、一部ターミナルでは券売機が設置されており、こちらでの購入も可能。JRの指定席券売機のように、自分で席を選ぶこともできます。

JRバス関東の自動券売機。シートマップから座席を選択することもできます
JRバス関東の自動券売機。シートマップから座席を選択することもできます

乗車

乗車段階で気をつける必要があるのが、バスの乗り場。大阪エリアで梅田や淀屋橋、難波と、私鉄のターミナル駅が離れているように、東京や名古屋、大阪など一部の都市では、バス運行会社の系列ごとに乗り場が離れていることがあるのです。

東京駅八重洲口バスターミナル
東京駅八重洲口バスターミナル

東京駅では、JRバスを始めとする従来の高速バスが東京駅八重洲口から、WILLER EXPRESSなどの新規参入事業者のバスが東京駅鍛冶橋駐車場から発車します。特に鍛冶橋駐車場は東京駅から離れているため、時間に余裕を持った行動が大切です。名古屋駅でも、高速バス乗り場は太閤通口の2箇所と桜通口側の名鉄バスセンター、計3か所に点在。大阪駅では、JRバスなどが発着する大阪駅JR高速バスターミナル、阪神バスなどのハービスOSAKAバスターミナル、阪急バスなどの阪急三番街高速バスターミナルなどなど、高速バスが発着する乗り場だけでも10か所に分散しています。別の乗り場へ行ってしまい乗り遅れた、なんてことのないように、事前によく確認しましょう。

大阪駅JR高速バスターミナル
大阪駅JR高速バスターミナル

乗車する際、客席付近に収納できない大きな手荷物は、床下などの荷物スペースにて預かってもらうことができます。ただし、二階建てバス「エアロキング」や「アストロメガ」を使用する便の場合、通常のハイデッカー車両より荷物スペースが少ないため、手荷物預かりを断られる場合も。このような場合は、なるべく荷物を少なくするか、早めに乗車待機列に並ぶ必要があります。

一般的な高速バス車両の荷物スペース
一般的な高速バス車両の荷物スペース
二階建てバス「エアロキング」の荷物スペース。車両後部のものはかなり小型で、スペースが限られています
二階建てバス「エアロキング」の荷物スペース。車両後部のものはかなり小型で、スペースが限られています

乗車中にトイレに行きたくなった場合はどうすればいいのでしょうか。長距離バスの場合はトイレつきの車両で運行することが多いですが、格安設定の一部の便では、トイレなしの場合もあります。そのような場合でも大丈夫。夜行バスでは基本的に、途中のサービスエリアやパーキングエリアに立ち寄る休憩が設定されています。深夜早朝では売店は営業していないことが多いですが、それでも車両の外に出られるのは至福のひと時。朝日に照らされながら、自販機で購入したコーヒーを飲む時間は格別です。

宮島サービスエリアにて休憩する、中国バスの「広福ライナー」
宮島サービスエリアにて休憩する、中国バスの「広福ライナー」

全国各地で、全盛期の夜行列車かそれ以上が運行される夜行バス。鉄道のみならず、夜間に効率的に移動できるバスや中長距離フェリーを組み合わせることで、プランニングの幅はかなり広がります。ぜひ有効活用されてみてはいかがでしょうか。それでは、良い旅を。

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