3月16日のダイヤ改正にあわせ、JRおおさか東線の新大阪~放出間が開業しました。2008年の放出~久宝寺間開業に続く路線の延伸で、大阪東部の鉄道ネットワークが拡大されました。
今回の延伸開業によって新幹線発着駅へと乗り入れ、交通ネットワークの拡大に寄与したおおさか東線。同線は今後、新大阪駅より南へ延伸し、北梅田駅(仮称)への乗り入れが予定されています。そして、その北梅田駅から南へ向かい、大阪の都心を貫く路線として計画されているのが、仮称「なにわ筋線」です。
なにわ筋線とは
なにわ筋線は、北梅田駅からなにわ筋の地下を進み、JR難波駅・南海新今宮駅へと至る計画の路線。途中、中之島駅(仮称)、西本町駅(仮称)、南海新難波駅(仮称)の3駅が設置される予定です。西本町~JR難波間はJR西日本が、西本町~南海新難波~新今宮間は南海電気鉄道がそれぞれ単独で営業主体となりますが、北梅田~西本町間は、JR関西空港線・南海空港線のりんくうタウン~関西空港間と同様、2社が共同で営業する区間となります。
大阪市 「大阪都市計画都市高速鉄道 なにわ筋線に係る環境影響評価方法書」などを基に作図。駅名はいずれも仮称
整備計画では、JRが特急を日中に1時間あたり3本、快速を同4本走らせる予定。南海は、特急を日中に毎時2本、急行を同4本運転する予定としています。これらの種別を6両、8両、9両編成で、1日あたり最大560本運転する計画です。車両については、南海が特急「ラピート」で使用している50000系をなにわ筋線開業時までに置き換えるという報道があるほか、JR西日本でも、関空特急「はるか」に使用している281系の置き換えを予定しているといいます。
整備手法としては、JR東西線やおおさか東線と同様、運行主体と整備主体が分かれる「上下分離方式」が採用されます。施設を保有・維持管理し、運行主体にこれを貸し付ける整備主体は、JR東西線の施設も保有する関西高速鉄道。JR西日本と南海は運行主体として、関西高速鉄道に施設利用料を支払って列車を運行することとなります。
なにわ筋線の整備で生まれる効果
既存の地下鉄が掘られていないなにわ筋直下を通過するとはいえ、大阪メトロ御堂筋線や四つ橋線、千日前線と並行するルートを取るなにわ筋線。整備により、どのような効果が生まれるのでしょうか。
まず第一に挙げられるのが、関西国際空港へのアクセス向上です。JR西日本が運行するはるかは、新大阪~西九条間で東海道貨物支線を走行します。同線は単線区間が含まれるため、ダイヤ編成上のボトルネックとなっています。また、同線は大阪駅を素通りしてしまうため、関空から大阪駅までのダイレクトアクセスにははるかを使用できない状態となっています。また、南海が運行するラピートは、始発駅が「ミナミ」の難波駅。どちらの列車も梅田地区へは乗り換えが必須となるため、空港連絡バスなどと比較すると、利便性では劣っている状態です。なにわ筋線が開業すれば、この両列車を始めとする関空アクセス列車が北梅田駅へ直通することになり、「キタ」へのアクセスが向上します。さらに、接続するおおさか東線へと乗り入れて新大阪駅まで運転することによって、新幹線と接続することも構想されています。
混雑緩和も期待されます。先述した通り、なにわ筋線は御堂筋線などの地下鉄数路線と並行して整備されます。なにわ筋線の整備により、大阪都心部の南北軸が1本追加され、地下鉄他路線の混雑率低下が期待されます。また、各路線の駅が集中する難波に新たな駅ができることにより、難波地区の混雑緩和にも寄与することが期待されています。
このほか、ダイヤ編成上のメリットもあります。現在運行されているはるかは、関西空港方面からは阪和線~大和路線~大阪環状線~東海道貨物支線~JR京都線を経由しており、これら各路線とのダイヤの調整や、輸送障害発生時の負担といった影響がありました。はるかがなにわ筋線経由となると大阪環状線を経由しなくなるため、大阪の大動脈である大阪環状線のダイヤへの影響を減らすことができるほか、ユニバーサルシティ方面から大阪・京橋方面への直通列車増発も可能となります。