JR東日本は9月26日、東京駅にて「テロ対応実働訓練」を開催しました。
「10時00分に東京駅 総武地下4階コンコースで爆破テロが発生。爆破によるけが人は約30名、爆破箇所付近では煙が充満している(火災発生はなし)」という想定で、駅係員の初動対応や避難誘導のほか、消防や救命救急センターとの連携などを訓練しました。
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10時00分になると同時に、コンコースに仕掛けられた爆発物が爆破されました。もちろん想定ではありますが、これによって周囲を歩いていた駅利用者にけが人が発生。周囲は叫喚や絶叫に包まれます。しばらくすると駅員が駆けつけ、無線で状況を報告。被災者の救出が始まります。
被災者は、自力で歩ける軽傷者から、骨折や下肢切断といった重傷者などさまざま。パニック症状を起こした人もいます。駅員によって被災者の救出が始まりますが、とても全員にまで手が回る状況ではありません。軽傷者にも声を掛け、駅員と駅利用者が協力しての避難が始まりました。
地下コンコースで避難が始まったころ、地上では現地対策本部が設置され、駅員による初期対応の準備が整えられていました。
爆破直後の駅員による無線連絡にて、警察や消防への手配は既に済んでいます。しかしながら、現場到着までにはタイムラグがあり、その間の被災者への対応が求められます。駅員らは駅の常備品である救急品や止血帯などを用い、応急手当を進めていました。
しばらくすると、消防と警察が到着。救急隊による救護が始まります。まずは被災者の状況を確認し、より重篤な被災者から優先的に処置するための「トリアージ」の作業が開始されました。
今回のトリアージでは、生命に関わる危険は無い「緑」、今すぐ生命に関わらないものの早期の処置が必要な「黄色」、一刻も早い処置が求められる「赤」の3段階に分類。軽傷者や鼓膜損傷などのけが人は緑のスペースに、骨折などの現時点で生命に関わらない重傷者は黄色のスペースに、それぞれ移動します。そして、下肢切断や開放性気胸といった命に関わる状態の被災者から、優先的な救命処置が施されました。
トリアージが進められている間、現地対策本部には東京医科歯科大学 医学部付属病院 救命救急センターの医師も到着。救急隊員とともに救命処置にあたります。同病院の救命救急センターでは、病院へ搬送されてきた患者への救護のほか、今回の訓練のように重大な事故・事件が発生し、現場での高度救命措置が求められる場合、ドクターカーにより医師を派遣。より高度な医療措置を現場で提供します。
爆破から約30分後、救命処置と並行して、搬送が可能な被災者から、救急車による搬送が開始されます。10人を数える重傷者は次々とストレッチャーに乗せられ救急車へ。搬送は10分ほどで終了し、10時39分に軽傷者の搬送が始まります。本番であればこの後も続々と搬送作業が続きますが、今回はここまで。10時40分、訓練は無事終了しました。
今回の訓練の目的は、どこにあるのでしょうか。JR東日本 総務・法務戦略部 危機管理室長の石田昌也さんは、「東京駅では2014年に、東京医科歯科大学付属病院と、医療連携の覚え書きを締結し、防災訓練やトリアージ訓練といったさまざまな取り組みを実施してきました」と背景を説明。今回は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に備え、同大会などを狙ったテロ事案の対策実働訓練を実施する運びとなったと語りました。
今後は、東京駅以外の駅や、車内での訓練も実施していきたいと説明した石田さん。「鉄道利用者に安全・安心に利用してもらうため、今後もこのような取り組みを進めていきたい」と話しました。