10月19日、小田急電鉄のロマンスカー車両、70000形「GSE」の「ブルーリボン賞」受賞記念式典が開催されました。
ブルーリボン賞は、鉄道趣味者団体「鉄道友の会」が、前年に営業運転を開始した車両を対象に、会員の投票によって選定する賞です。小田急電鉄では、1957年にデビューした3000形「SE」以来のロマンスカーにおいて、9形式中8形式がこれを受賞しています。
鉄道友の会理事で、ブルーリボン賞の選考委員長を務めた加藤幸弘さんは、「70000形は、50000形(VSE)以来の展望席を設けたロマンスカー。ロマンスカーの伝統を継承しつつ、最新の技術を随所に採用しており、現在の鉄道車両のトレンドリーダーにふさわしい、極めて完成度の高い車両」と評価。会員投票での支持率が62.8%と第1位であったことに加え、選考委員会でも高い評価を得たことにより、最優秀車両と位置付けるブルーリボン賞に選定したと説明しました。
式典では、鉄道友の会から小田急へ、表彰状と記念盾が授与されました。小田急電鉄 取締役社長の星野晃司さんは、「GSEがブルーリボン賞に選定され、大変感激しています。多くのファンから支持を頂けたことを、とても誇りに思います」と、喜びを露わにしていました。
続いて、9時ちょうどに新宿駅を出発した「スーパーはこね」5号の車内では、記念プレートの除幕式が執り行われました。
なお、GSEの第1編成には19日より、両先頭車と4号車側面に、ブルーリボン賞受賞を記念したステッカーが掲出されています。
授賞記念式典の模様が動画でご覧になれます
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小田急ロマンスカーの歴史は昭和20年代から始まっていますが、初代ロマンスカー車両として語られることが多いのは、1957年にデビューした3000形「SE」です。「新宿~小田原間60分切り」を目指して設計されたSEは、車体の軽量化や連接台車の採用など、徹底的に高速性能を追求した車両として登場しました。
SEは、小田急の看板特急車両のみならず、国鉄に貸し出されて高速試験にも挑んでいます。東海道本線上で実施された試験では、当時の狭軌鉄道世界記録となる時速143キロを達成。機関車けん引列車ではない動力分散車両の実力を見せつけ、後に東京~大阪間を6時間50分で結んだビジネス特急「こだま」の運転へ繋がったほか、1964年の新幹線開業にも道筋をつけ、日本の鉄道史におけるマイルストーンとなっています。
鉄道友の会は、このSEを表彰すべく、ブルーリボン賞を制定。1958年、第1回ブルーリボン賞として、このSEが無投票で選出されました。
小田急電鉄ではSEに続き、1963年に初の展望席つきロマンスカーとしてデビューした3100形「NSE」や、2005年にデビューした50000形「VSE」など、30000形「EXE」を除くロマンスカー全形式で、このブルーリボン賞を受賞しています。
GSEがデビューした2018年3月のダイヤ改正では、代々木上原~登戸間の複々線化工事が完了し、線路容量が拡大。土休日ダイヤの「スーパーはこね」一部列車では、新宿~小田原間を59分で走破しており、SE設計時の「新宿~小田原間60分切り」という目標が、60年を経てようやく達成されました。
カラーリングや展望席のみならず、所要時間の追求という伝統も受け継いで走るGSE。同じく展望席つきのVSEと共に、今日も小田急電鉄の顔として、新宿と箱根を結んでいます。