鉄道コム

素晴らしい力作が続々登場、懐かしの鉄道写真コンテスト講評会

2019年11月22日(金) 鉄道コムスタッフ

上位5賞以外も生講評

続いては「生講評」のコーナーです。惜しくも上位5賞から漏れてしまったものの、すばらしい力作揃いであった各入賞作品、今回のイベントでの講評を希望された来場者の作品、そして鉄道コム賞の候補となった作品、計35作品の中から、一部作品を講評していただきました。本記事ではそのうちの一部をご紹介します。

「MILKY WAY」

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山下:星って懐かしさを感じさせる重要な素材ですよね。星空が広がっているとどんな時代でも懐かしさを覚えます。

助川:見事なのは、天の川を写していることなんですよね。私も天の川と鉄道を撮ろうと何度かトライしていますが、かなり大変なんです。星の方向を調べて、その時間その方角に列車が来るか。そして、他に人工の光源があると星空が綺麗に写りません。この写真の場合、奥に全く何も無い状況です。そして綺麗に天の川が出る時間帯と列車、これが見事にマッチしています。これはすごいなと思いました。

「早朝のSL」

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助川:静態保存された車両の写真ですね。「キマロキ」という、昔の除雪時の編成を再現しています。朝日を受けて夜露が光り、これから出番に向けて待機しているように見えて、ドラマチックに感じました。動いていない車両の写真ですが、見事な良い写真だなと思いましたね。

山下:夜露に目をつけたところが良いですよね。

助川:撮ろうと思わないと撮れませんからね。たまたま散歩に行って撮ろうと思って撮れる写真ではない、素晴らしい写真です。

「港祭りの夏」

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山下:理屈でなく好きな作品です。列車が両側にいるというだけでなく、柱が写真を真ん中で分割していて、旅客もシンメトリー感があって。そういう面白さに惹かれました。キハ183系が新しく出て、いよいよ新しい時代に入る頃の写真なのかなと思いますが、そういう楽しさがありました。

助川:「おおとり」と「北海」ですからね。終着駅が札幌でない長距離列車というのも熱いです。

「出発準備」

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山下:車を乗せる貨車と、旅客が乗る客車を連結して運転していた「カートレイン」という列車です。存在は知っていましたが、実物は見たことがありません。しかも撮影された写真も走行シーンばかりなので、こうして車を貨車に積み込んでいたんだと記録されていたのが嬉しかったですね。

助川:カートレインが運転された期間って短かったんですよね。しかも貨物専用駅の汐留駅から発車する列車で、そこから車を積み込むという面白い列車でした。私も何度か撮影しましたが、このシーンは撮ったことがありません。撮ろうと思ってもなかなか撮れないですよね。何気ない風景ですが、これがまさしく宝です。

「秘密基地からの眺め」

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山下:予備知識が必要な作品ですね。寝台車の上段にある明かり窓から覗いた風景です。とても好きな写真ですが、個人的には非常に強く懐かしさを感じました。しかも外の風景が当たり前のものではなく、明け方に新潟県内を走っているシーンかなと、選考時に盛り上がりました。

助川:列車は「きたぐに」でしょうか。山下さんはこの作品を推していましたよね。

「雪明かりに照らされる夜汽車」

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助川:サボに「上野行 上越線経由」とあります。青森駅での出発待ちシーンでしょうか。鉄ちゃんなのでこの1枚の作品から少ない情報を読み取ろうとしてしまうのですが、ED75のガイシが少なく、ケーブルも少ないので700番台のようです。とするとそれで引っ張る列車は何だろうと……。

山下:選考時、恐らく何だろうという話になったんでしたっけ?

助川:荷物車が連結されていて急行だから「津軽」か、でも津軽は上越線経由ではないので「天の川」か。10系のオロネが付いているのが熱いです。

山下:作品として見ると、ホームの雪の積もり方が均一で綺麗で、非常に良いシーンだなと思います。また、古い写真なのに緻密な描写が残っていて、その点もポイントが高かったです。

「哀愁」

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助川:乗ってきた列車が遠くに行ってしまうという哀愁感があります。昔の鉄道写真は編成写真がほとんどでした。それはそれで記録として素晴らしいものですが、当時はフィルム1本辺りいくら、という制限もあり、なかなか変わった構図は撮れませんでした。それなのにこのような撮り方をされた視点が素晴らしいなと思います。

「子供も力を合わせ方向転換。」

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山下:非常にほほえましく、ドラマを感じます。現代ではなかなかこういう状況にはならないなと思います。

助川:一番右が運転士で、左で子ども達が手伝っていて、線路の上を歩いている人は手助けする気はさらさら無いという(笑)。

山下:子どもを抱えているお母さんですかね。

助川:転車台を人力で押すのは今でも大井川鐵道でやっていますが、イベント的な要素もあります。しかしこの作品は本物の日常です。車両も渋いですよね。

「唸りを上げて」

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助川:写真としては古いものかと思いきや、最近撮られた写真なんですよね。

山下:高松琴平電鉄で、今も動態保存されている旧式の車両です。

助川:鉄ちゃんだと編成を撮りたくなると思うのですが、あえてこの町並み、しかもアーケードで円筒形の街の美しさを入れつつ、列車を撮ったというダイナミックな撮り方が目を引きます。運が良かったのか人がいない。私がこのように撮ろうとすると、だいたい買い物中の人に前を遮られたり(笑)。かといって、人が全くいないわけでもないので、寂しさもありません。

山下:商店街の生活感もアクセントになっていますよね。

――最後に、みなさんへのアドバイスをお願いします。

山下:「懐かしの」と付けられると、簡単なようで難しかったのではないかなと思います。自分ならばどうしようと思いますね。今は走っていない車両の写真を応募するのか、それとも懐かしさを別のとらえ方でトライするのか、みなさん悩むと思います。それをさまざまな形で表現してくださったみなさんの作品を見れて、審査していてとても楽しいコンテストでした。鉄道車両がメインでない写真の点数も多くあれば、なお良かったなと思いました。

助川:写真は人類の宝になる重要なアイテムになると思います。今回のコンテスト、みなさんが「懐かしいな」と思った写真を応募していただいたと思いますが、人の心を打つというのは何かというと、自分が子どもの頃に感じていたもの、憧れていた風景というのが写真の中に空気感、におい、動き、思い出が出てくるからこそ心をうつ、そういうものが上位作品にあったと思います。昔の写真を今は撮れないよ、という人も、そう感じている懐かしい風景、子どもの頃の思い出というのを、今の鉄道に反映させて撮ることができるんです。ユース賞の作品のようにレールだけを表現する、それだけでも懐かしさを表現できます。鉄道写真は幅広い表現ができるので、「今日はこういう写真を撮ろう」とテーマを明確に決めて撮影してみてください。そうすると、自分の心にはまるような写真が撮れると思います。何線に行こう、だけでなく、どういうテーマでやろう、と決めると、素晴らしい作品が撮れると思います。そしてまた次回のコンテストに応募してください。

――ありがとうございました。

後編へ続く

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