JR貨物の貨物列車では、編成が長いものだと26両編成(貨車のみ、以下同)で、コンテナ換算では650トンもの貨物を運ぶことができます。これ以上を運ぼうとすると、長い編成に対応した駅設備の整備ももちろんですが、けん引する機関車のパワーアップが必要です。JR貨物が発足してすぐの頃、そのような発想で、現在活躍する車両以上のハイパワーな機関車が登場しました。
1990年に試作機が登場したEF200形は、JR貨物の機関車としては初めて一から開発された形式です。1両で超高出力を発揮できるのが特徴で、そのスペックは6000キロワット(1時間定格、以下同)。現在東海道本線などの貨物列車の主力として活躍するEF210形が3390キロワット、2車体連結タイプのEH200形でも4520キロワットですから、群を抜いた性能でした。
EF200形は直流専用の機関車でしたが、JR貨物は同時期に、交直両用のEF500形も開発していました。こちらもEF200形同様に6000キロワット級という性能で、東北本線系統や日本海縦貫線系統(北陸本線、羽越本線など)への投入を目指していました。加えて、EF500形よりも少し小さい、2つの台車を装備した4000キロワット級の機関車、ED500形も、メーカー主導で開発されていました。
このようなハイスペック車両が開発された背景は、バブル景気の影響で貨物需要が増えていたという、時代の流れがありました。EF200形などは、従来の国鉄型機関車の置き換えに加え、貨物列車の増結を目的に、超ハイパワー機関車として開発されたのです。EF200形においては、最終的には貨車32両編成の貨物列車をけん引する想定だったといいます。
しかし、EF200形などの3形式は、車両単体で見れば失敗に終わってしまいます。特にEF200形とEF500形は、走行路線の変電所容量が少なかったため、その高性能を発揮できる見込みが立ちませんでした。変電所の増設自体は検討されていたのですが、バブル崩壊による需要減少で計画は完遂できず終わっています。最終的に、EF500形とED500形は、導入線区に対して性能が過剰であるという判断から、本格導入を断念。貨物列車が多い東海道・山陽本線に投入されたEF200形は量産こそされたものの、性能は従来車なみに制限されます。当初目論んだ32両編成の貨物列車の運転構想は、実現せずに終わりました。
EF200形は、JR貨物初のVVVFインバータ制御車両ということで、そのノウハウ自体は続く各型式に引き継がれているため、決して無駄になったというわけではありません。しかし、これら3形式がフルスペックを発揮していれば、今は貨物列車も違った様相となっていたかもしれません。