3月13日、中央・総武線各駅停車で「6ドア車両」サハE230形を組み込んでいた編成2本が、運用を離脱しました。これをもって、6ドア車両は国内から姿を消すこととなります。
ドアを増やしてラッシュ時に対応した6ドア車両
6ドア車両とは、通常は片側に乗降用のドアを4か所持つ20メートル級の車両において、ドア数を6か所に増やした車両です。
朝夕のラッシュ時間帯においては、他の時間帯よりも乗り降りに要する時間が多く必要となります。そこで、発足直後のJR東日本が乗降時間短縮に向けて開発したのが、この6ドア車両でした。
また、車内はラッシュ時間帯に対応するため、座席を全て折りたたみ式としました。JRでは朝10時以降に座席を引き出して座れる設定としていましたが、それ以前の時間帯では全て立席の状態。この車両で座ることができなくなった反面、立つスペースが従来車よりも拡大されるため、収容力も向上していました。
JR東日本は1990年、6ドア車両の試作車1両を製造。当時山手線の主力車両であった205系に組み込みました。翌年からは量産車が登場し、当時10両編成だった山手線を11両編成と増結するのにあわせ、全編成に6ドア車両を導入していきました。
この6ドア車両は効果が認められ、1993年に登場した京浜東北線向けの209系量産車を皮切りに、横浜線の205系、中央・総武線各駅停車のE231系、山手線のE231系500番台など各線へ導入されました。E231系の投入によって置き換えられた山手線205系の6ドア車両は、埼京線へ転出。混雑が激しい同線において、6ドア車両を2両連続で連結した組成とし、効果を発揮しました。
さらには、混雑が深刻化していた東急田園都市線でも、5000系にこの6ドア車両を導入。当初は10両編成中2両、後に3両を組み込んで、朝ラッシュ時間帯の混雑列車へ集中的に投入されました。
なお、日本において乗降時間短縮を目的に開発された多扉車両は、1970年に登場した京阪5000系が始まり。3ドア車両が一般的な京阪において、編成中全車両のドア数を5つに増やし、ラッシュ時間帯に対応しました。関東私鉄でも、京浜急行電鉄が1978年から4ドア車両の800形を導入。東京メトロ日比谷線でも、8両編成中4両を、3ドアから5ドアに増やした編成が導入されました。
消えゆく多扉車両
ラッシュ時間帯に威力を発揮した6ドア車両ですが、次第にその数を減らしていきます。
その大きな要因は、各線で設置が進むホームドアです。一般的な扉が左右に開くタイプのホームドアでは、6ドア車両への対応が構造上難しくなっています。山手線では、2010年より設置を開始したホームドアに対応するため、同年より6ドア車両の置き換えを開始。2011年までに全ての編成が4ドア車両に統一されました。東急でも、2020年までのホームドア全駅設置計画を2015年に発表した際、6ドア車両の全廃もあわせて発表。新造した4ドア車両と順次差し替えられ、2017年5月までに全て置き換えられました。
また、定員が増加した新型車両の導入や、利用者の減少なども理由に挙げられます。209系の代替としてE233系が投入された京浜東北線では、拡幅車体となったことによる定員の1割増加に加え、将来の上野東京ラインの開業による利用者減少を見据え、6ドア車両は導入されませんでした。同様に、205系の代替でE233系が投入された横浜線や埼京線でも、6ドア車両の導入は見送られました。
最後の6ドア車両運用路線として残った中央・総武線各駅停車でも、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催までに、競技場最寄り駅となる千駄ヶ谷駅、信濃町駅、代々木駅へホームドアを設置する工事が進められていました。同線の車両は、山手線への新型車両投入によって捻出されたE231系500番台によって置き換えが進められたほか、残存する一部の編成は編成を組み替えて6ドア車両を外していました。
そして、最後まで6ドア車両組み込み編成として残っていたB80編成とB82編成が3月13日をもって運用を離脱。6ドア車両の営業運転は終了となりました。
京阪や日比谷線でも、多扉車両はまもなく終焉を迎えます。日比谷線では、2016年に東京メトロ13000系、2017年に東武70000系が運用を開始し、5ドア車両を含む従来形式を置き換えました。京阪でも2020年度を目標に京橋駅へのホームドア設置計画を進めており、これに対応できない5000系は、2016年から廃車が始まっています。