3月21日、JR富山駅の下をくぐる富山地方鉄道市内線の線路が開通し、旧富山ライトレールと市内線が接続、直通運転が開始されました。これは、2006年にJR富山港線が一部路面電車化して富山ライトレールに移管された時から始まった南北接続事業の集大成。14年ぶりに富山市内の公共交通網が完成しました。
旧富山ライトレールの富山港線は、JR西日本の富山港線から移管した路線で、増発をはじめ、駅の新設や低いホームの設置、超低床車両の導入によって、お年寄りでも楽に利用できる市内交通に生まれ変わりました。
この富山港線のような新しい進化を遂げた軌道交通を、「LRT」(Light Rail Transit)といいます。これは、道路とは隔離された専用軌道を主に走る、手軽な軌道交通を指す言葉で、「次世代型路面電車」と呼ばれることもあります。
各地で導入される「LRT」とは
LRTは、定義はさまざまですが、専用軌道中心のため定時性に優れ、超低床車両と低床ホームの導入によって、ほぼ段差のない乗降システムを実現した鉄軌道によるシステムです。一部道路との併用軌道や、人道・車道との平面交差も許容するので、建設費も都市鉄道よりも安く済みます。
また、運賃の収受は乗車前にきっぷを購入するかICカード乗車券などを使用し、どの乗降扉からでも乗り降りできるようにして、スムーズで運行遅延の少ない乗降を実現します。
富山ライトレールでは、LRT化により、利用者はJR時代の1日2300人から4800人(平日)に倍増。沿線の新築住宅の着工件数も、富山市内全体では減少傾向が続いているなか、富山ライトレール沿線だけは増加に転じるなど、市内交通としての鉄道に確かな需要が存在することを証明しました。
日本では、富山地方鉄道のほか、江ノ島電鉄、東急世田谷線、京福電鉄嵐山線(嵐電)、筑豊電気鉄道などがLRTの仲間とされていますが、その多くは「バリアフリーを導入した路面電車(またはそれに近い鉄道路線)」です。特に運賃収受は旧来の後乗り・前降り方式がほとんどで、定時運行のボトルネックになっています。
LRTで「交通が不便な町」返上を目指す宇都宮市
そんな中、全くゼロからLRTを整備しようとしているのが、栃木県宇都宮市です。宇都宮市では、2022年の開業を目指して、宇都宮駅東口(仮称)〜本田技研北門(仮称)間約14.6kmの「宇都宮ライトレール線」を建設しています。
宇都宮市は人口約52万人。市東部に平出工業団地、清原工業団地といった工業団地があり、さらに隣接する芳賀町には芳賀工業団地や本田技術研究所オートモービルセンターなど産業拠点が数多く存在しています。
これらの工場の従業員は約3万5000人。工業団地への通勤はほとんどがマイカー通勤に頼っている状況で、鬼怒川を渡る柳田大橋周辺には毎朝渋滞が発生しています。家族を合わせると、10万人を超える関係者がこの地域に暮らしているうえ、それ以外の市民からも、「宇都宮は市内交通が不便」という評価が広まっていました。
そこで、計画されたのが、宇都宮ライトレールです。宇都宮駅東口〜本田技研北門間のうち9.4kmを自動車との併用軌道、5.1kmを専用軌道で建設し、所要44分、6〜10分間隔で3車体の連接車両(定員160人)を運行するというものです。
途中停留場は19カ所。うち5カ所は鉄道やバス路線と接続するトランジットセンターとなり、「歩かせない、(雨に)濡らさない、待たせない」という三要素をコンセプトに、ライトレールのすぐ目の前にバスが停車しスムーズに接続するようになります。総事業費は458億円。このうち206億円を宇都宮市が、23億円を芳賀町が負担し、宇都宮市は年間最大13億円ずつ、20年かけて償還していく計画です。