JR東日本が発足した後、同社は新幹線電車として400系、E1系の2形式を投入していました。しかし、前者は在来線区間直通用、後者は定員増を目的とした車両と、一点に特化して開発されており、1990年代後半まで、東北・上越新幹線での主力車両は、国鉄時代に投入された200系が担っていました。
この200系に次ぐ汎用新幹線車両として開発されたのが、1997年にデビューしたE2系です。
3つの要素を実現した新世代新幹線
上越新幹線から分岐し、軽井沢や長野を経て北陸へ至る北陸新幹線は、1998年に開催された長野オリンピックの輸送を担うべく、高崎~長野間が「長野新幹線」として先行整備されました。
この長野新幹線で特筆されるのが、明治より鉄道を苦しめてきた碓氷峠です。在来線開業時はアプト式で、1963年以降は補助機関車のEF63形による手助けで乗り越えてきた碓氷峠。長野新幹線では在来線ルートより大きく北側へ迂回するルートを取りましたが、それでも30パーミル(1000メートル進む間に30メートル上る勾配)の急勾配が30キロも続く過酷な線形を余儀なくされたのです。
また、北陸新幹線は、電力会社から供給される電源の周波数が50ヘルツのエリアと60ヘルツのエリアをまたいで走ります。そのため、北陸新幹線を走る車両には、双方に対応した性能も求められました。
一方、東北新幹線に投入する車両としては、さらなる高速化が求められていました。それまで東北・上越新幹線の主力を担っていた200系は、通常の営業最高時速は240キロ。一部の編成は時速275キロでの運転に対応していましたが、これは下り勾配で加速する特殊例。東海道新幹線「のぞみ」の300系のように、時速270キロ台で巡航する性能はありませんでした。
このような急勾配対応、異周波数対応、高速化の3点を全て実現し、東北新幹線と長野新幹線の双方に投入できる車両として、E2系は開発されました。
主変換装置(新幹線の制御装置に相当するもの)には、E1系に引き続きVVVFインバータを採用。これと大出力の交流モーターの組み合わせで、高速性能と急勾配の登坂性能を確保しました。また、急勾配を下る際に必要な抑速ブレーキも搭載。時速200キロを超える速度で、安全に連続勾配を下ることができる性能を持ちました。
当初投入されたグループである0番台は、東北新幹線用のJ編成が8両編成15本、長野新幹線用のN編成が8両編成13本の、計27本224両が製造されました。J編成には秋田新幹線「こまち」との連結用に自動分割併合装置が搭載されていましたが、その他の仕様は同一。運用開始当時は、J編成が長野新幹線の運用に入ることもありました。
E2系の営業運転開始は、1997年3月22日。同日に運転を開始した「こまち」と連結する「やまびこ」などに投入され、東北新幹線での時速275キロ運転を実現。東北新幹線の速達化に貢献しました。同年10月1日には、長野新幹線が開業。E2系は在来線特急から「あさま」の名を受け継ぎ、長野新幹線の全定期列車の運用を担いました。
見た目は同じでも大幅改良
E2系の営業運転開始から4年後の2001年、新たなE2系が誕生します。東北新幹線の八戸延伸開業を見据え、モデルチェンジを受けた1000番台です。
外観からうかがえる大きな変更点は、側面の窓が大型になったこと。屋根上のパンタグラフも、従来の下枠交差式からシングルアーム式となり、大きなパンタグラフカバーが廃されたシンプルな形状となりました。このほか、走行中の振動を抑えるアクティブサスペンションの搭載や、車体構造の変更など、半ば別形式のような車両となっています。
また、編成長も従来の8両編成から10両編成に増強されました。1000番台の登場にあわせ、0番台も1000番台2両を組み込む形で10両編成に増強されており、小窓が並ぶ編成内に大窓車が挟まれる姿が見られました。
一方、10両編成で製造された1000番台は、長野新幹線用の異周波数対応機能をオミット。10両編成となったこともあり、長野新幹線へ乗り入れることはなくなりました。これにあわせ、カラーリングも新しいものに変更。従来は赤色だった帯がピンク色となり、側面のエンブレムも青森を意識したりんごとなりました。
2002年12月、東北新幹線の盛岡~八戸間開業にあわせて実施されたダイヤ改正では、「やまびこ」に代わる東北新幹線の最速達列車「はやて」が運転を開始されます。E2系は「はやて」の全列車に投入され、東京~八戸間を最速2時間56分で結びました。
東北新幹線の八戸開業から8年後、2010年12月の八戸~新青森間開業に際しても、E2系は増備されました。車両番号は同じ1000番台ですが、側面表示機のフルカラーLED化、車内の座席コンセント設置など、E5系やE3系2000番台の要素を盛り込んだマイナーチェンジ車両として製造されました。
1000番台の製造数は、10両編成25本。0番台組み込み用の中間車も、14編成分28両が製造されました。1000番台の編成番号は、0番台と区別するためJ51~J75を名乗っています。