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開業10周年! 都心と空港を結ぶ成田スカイアクセス

2020年7月17日(金) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

在来線最速の「スカイライナー」

スカイライナーは、1978年の成田空港(当時は新東京国際空港)開港にあわせ、京成上野~成田空港(現在の東成田駅)間で運転を開始しました。1991年には終着駅を現在の成田空港駅へと変更。そして2010年の7月、成田スカイアクセス線の開業にあわせ、経由ルートを京成本線から成田スカイアクセス線へと変更しました。

現在スカイライナーに使用されているのは、2代目AE形。初代AE形、AE100形に続く、3世代目の車両です。車両のデザインはデザイナーの山本寛斎氏が担当し、外観は「風」、内装は「凜」というデザインコンセプトが定められています。

スカイライナーの一番の特徴は、時速160キロで運転すること。これは新幹線を除く鉄道路線では最も速く、2015年3月まで北越急行ほくほく線経由で運転されていた特急「はくたか」と同じ記録です。

時速160キロで走るスカイライナー
時速160キロで走るスカイライナー

成田スカイアクセス線では、時速160キロ運転に対応するための、特徴的な設備が見られます。

まず1つが、成田湯川駅付近にある巨大なポイント。成田湯川~空港第2ビル間は単線となるため、成田湯川駅の東側には複線から単線になるポイントがありますが、ここで速度制限を受けてしまうとタイムロスが生まれてしまいます。そこで、成田スカイアクセス線では、38番分岐器(分かれる線路が1メートル離れるのに38メートル進む規模の角度)という巨大なポイントを用い、分岐側でも制限速度を受けることなく通過できるようになっています。

なお、この38番分岐器は、上越新幹線と北陸新幹線が分岐する高崎駅北側でも使用されていますが、日本国内での採用例はこの2箇所のみです。

また、信号機の現示も特徴的。色灯式信号機を用いる鉄道路線では、最高速度での運転が可能な最上位の現示は、緑1灯が点灯した「進行」(G現示)です。しかし、時速160キロで運転する路線において、最上位現示を「進行」とすると、その1つ下の現示(成田スカイアクセス線では制限時速105キロの「抑速」)との速度差が大きく、不都合があります。

そこで、成田スカイアクセス線では、「進行」の1つ上となる緑2灯の「高速進行」(GG現示)を設定。「進行」を制限時速130キロ、「高速進行」を制限時速160キロとすることで、急激な制限速度の変化が起こらないようになっています。

「高速進行」を現示している信号機
「高速進行」を現示している信号機

この「高速進行」は、スカイライナーのみに出される特別な現示。そのため、スカイライナー用のAE形には列車種別を地上装置に伝達するトランスポンダが設置されており、列車側から地上側へ種別情報を伝達することで、初めて「高速進行」が現示される仕組みとなっています。成田湯川駅で列車を見学していると、出発信号機が緑1灯の「進行」現示となり、スカイライナーが通過する直前に緑2灯の「高速進行」へと現示が変わる様子が観察できます。

「高速進行」は、かつて「はくたか」が時速160キロで運転されていたほくほく線でも導入されていました。同線での特急列車運行が終了した現在、路線最高速度は時速130キロとなっており、「高速進行」を現示することもできなくなっています。

なお、スカイライナーが時速160キロで運転するのは、印旛日本医大~空港第2ビル間の18.1キロのみ。北総線区間となる京成高砂~印旛日本医大間は最高時速130キロで運転されており、その他の京成本線区間ではさらに低い速度での運転となっています。

実は設備を保有していない京成電鉄

成田スカイアクセス線は京成電鉄の路線ではありますが、実は京成高砂~成田空港間は京成電鉄は施設を保有していません。

鉄道事業者には、法律上の区分として、設備を保有して列車を運行する「第1種鉄道事業者」、JR貨物のように、他社が保有する線路を借りて列車を運行する「第2種鉄道事業者」、設備を保有し、列車を運行する事業者に使用させる「第3種鉄道事業者」の3つがあります。

成田スカイアクセス線においては、京成高砂~小室間は北総鉄道が、小室~印旛日本医大間は千葉ニュータウン鉄道が、印旛日本医大~成田市土屋の区間は成田高速鉄道アクセスが、成田市土屋~成田空港の区間は成田空港高速鉄道が、それぞれ施設を保有しています。北総鉄道の京成高砂~小室間は自社でも北総線として列車を運行している第1種鉄道事業者ですが、その他の3社は設備のみを保有する第3種鉄道事業者です。そして、この4社の設備を使用する京成電鉄は、第2種鉄道事業者となっています。

成田スカイアクセス線区間の運行会社と設備保有会社
成田スカイアクセス線区間の運行会社と設備保有会社

北総線区間のうち、アクセス特急が停車する東松戸、新鎌ヶ谷、千葉ニュータウン中央、印旛日本医大の各駅は、北総鉄道管理駅ですが、京成電鉄との共同駅という扱いです。ただし、京成電鉄の企画乗車券などでは、成田スカイアクセス線の通過利用は可能でも、北総線内での乗り降りは不可能となることが多く、京成電鉄の他駅とは明確に区別されています。

一方、成田スカイアクセス線と北総線の関係においては、アクセス特急は北総線の特急列車のような扱い。北総線の普通列車とアクセス特急の接続も考慮されたダイヤとなっています。車内放送ではそれぞれ「京成電鉄をご利用いただきまして~」「北総線をご利用いただきまして~」となっていますが、利用者目線では特に運行事業者の違いを気にすることはありません。

北総線の列車(右)と接続するアクセス特急(左)。利用者目線では、運行会社の違いを気にすることはありません
北総線の列車(右)と接続するアクセス特急(左)。利用者目線では、運行会社の違いを気にすることはありません
 

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