空港アクセス鉄道の今後
京成電鉄では、2019年10月にスカイライナーを大増発するダイヤ改正を実施しました。2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を見据え、それまでは一部時間帯で40分間隔だったスカイライナーを、ほぼ終日20分間隔に。早朝や夕夜間の列車も新設し、改正前の1.4倍となる82本が設定されました。
しかしながら、2020年に感染が拡大した新型コロナウイルスの影響で、成田空港を発着する国際線の利用者は激減。スカイライナーも一部の運休を余儀なくされました。7月時点では国内線利用者の客足は戻りつつあるものの、海外への渡航は未だに難しい状況となっており、スカイライナーの増発で期待されていた外国人旅行客の利用も望めません。
京成電鉄では、一部スカイライナーを青砥駅に停車させ、青砥~空港間での利用を可能としたほか、成田空港発着の航空便利用でライナー券が500円で購入できる「ライナーでGo!キャンペーン!!」を実施し、利用者の拡大を狙っている状況です。
また、コロナ禍が落ち着いた後も、成田空港の将来性は未知数です。
羽田空港では、オリンピック開催による国際線航空便の利用者増加を見込み、2020年3月に発着枠が拡大されました。羽田空港を発着できる航空便の枠が増加した結果、都心部から離れた成田空港から、都心部に近い羽田空港へとシフトする航空会社が現れました。
多くの航空会社では、羽田空港と各地を結ぶ国際線を新規設定したほか、成田空港発着だった路線を羽田空港発着に変更。アメリカのデルタ航空や、ロシアのアエロフロート・ロシア航空など、成田空港から完全に撤退し、羽田空港のみの就航となった航空会社もあります。
もちろん、羽田空港に移管された分、成田空港の発着枠には余裕ができるので、新たな路線の就航が可能となります。しかしながら、羽田空港へシフトした路線は、その多くが幹線路線。一方、新たに就航する路線は、中型機による亜幹線のほか、LCC(格安航空会社)による便となることも。客単価の低いLCCの利用者が、以前の幹線路線の利用者と同じように、スカイライナーなどの有料列車一定数の利用があるとは断言できません。
近年、国際空港を取り巻く環境は激化しています。世界各地を結ぶ航空便を多数就航させることで、空港の利便性が向上し、空港の利用者も増加します。また、空港の収入には、航空機の着陸1回ごとに支払われる「着陸料」があり、多くの航空便を就航させることが、空港の収入増加にも繋がります。
そのため、多くの滑走路やターミナルを備えることで多数の航空便の就航を可能とし、利便性を強化した「ハブ空港」が、世界各国で建設されています。アジア圏では、韓国・ソウルの仁川国際空港、中国・北京の北京大興国際空港、シンガポールのチャンギ国際空港など、成田空港以上の規模となる空港が整備されており、これらの間での競争が激化しています。
成田空港を運営する成田国際空港株式会社(NAA)では、羽田空港や海外のハブ空港へ対抗するために、かねてより成田空港の拡張計画を進めていました。2018年には、国土交通省や千葉県、周辺市町村との間で、滑走路やターミナルの増設といった空港拡張案が合意されており、2028年度末の完成を目指し事業が進められる予定となっています。
未だ終息の見通しが立たない新型ウイルスと、成田空港の地位低下といった、2つの不安要素に揺れる成田スカイアクセス線。この路線の行く先は、成田空港の将来計画に懸かっています。