8月28日の発売を予定する、ニコンの新型カメラ「ニコン Z 5」。ニコンのミラーレスカメラ「Z」シリーズとしては4番目の製品で、2018年発売の「ニコン Z 7」「ニコン Z 6」に続く、フルサイズセンサー搭載機となっています。
Z5は、先行するZ7・Z6と異なり、価格を重視したエントリークラスの製品です。機能こそ先行機より絞られていますが、写真撮影に関する機能は必要十分。フルサイズ機に興味があるユーザーにはうってつけです。
鉄道コム編集部では、このZ5を発売前にお借りすることができました。新たなエントリークラスカメラのZ5、スタッフの我流ではありますが、その実力を鉄道撮影で測ります。
機能は絞りつつ、性能は妥協せず
Z5のセンサーは、有効画素数が2432万画素。Z7と同じ画像処理エンジン「EXPEED 6」を搭載しており、常用ISO感度は100-51200となっています。シャッタースピードは1/8000秒~30秒。ハイブリッドAF(オートフォーカス)の測距点は273点で、撮像範囲の水平・垂直約90%をカバー。一眼レフカメラよりも多いフォーカスポイントを有します。
ボディはZ7やZ6とほぼ同じサイズですが、奥行きが2ミリ拡大され、グリップ性が向上しました。一方、肩部にあった液晶は省略され、シャッタースピードなどの情報はモニターや電子ビューファインダー(EVF)で確認する方式となっています。前面にマグネシウムを採用したボディは高耐久性能があり、防塵防滴シーリングも施されています。
背面のモニターはチルト式で、タッチ操作に対応します。ミラーレスカメラの特徴とも言えるEVFは約369万ドットで、ファインダー倍率は約0.8倍。接眼保護窓を除き、Z6と同じ構造・材質を採用しています。
記録メディアはSDカードを採用し、UHS-IIに対応。先行機では高速性能が魅力なXQDカードを採用していますが、こちらはまだまだ高価なため、広く普及したSDカードを採用したということです。
フルサイズセンサーとは
デジタル一眼レフやミラーレスカメラ、スマートフォンのカメラなどのデジタルカメラでは、レンズを通してカメラに入った光を「イメージセンサー」が受け止め、デジタル信号へと変換します。このイメージセンサーが大きければ大きいほど、多くの光を受け止めることができるため、高画質な写真が撮影できる傾向にあります。
Z5を初めとするフルサイズ機が搭載するセンサーは、約36ミリ×約24ミリというサイズ。かつての35ミリフィルムとほぼ同じサイズであることから、「フルサイズ」という名前が付けられています。フルサイズセンサーは価格こそ高価ですが、高画質な写真を撮影できることから、ニコンの「D6」など、各社のフラッグシップ機を始めとする高価格帯の機種に採用されています。
一方、各社のエントリークラスやミドルレンジの製品によく搭載されるのが、APS-Cサイズのセンサー。メーカーや機種によって異なりますが、約24ミリ×約16ミリと、フルサイズセンサーよりも一回り小さいサイズとなっています。
こちらは製品の価格を抑えることができ、さらに重量も軽くすることが可能。そのため、ニコンの「D3500」や、キヤノンの「EOS Kiss」シリーズ、ソニーの「α6400」など、各社の価格帯を重視した製品を中心に採用されています。
なお、ニコンでは同社独自の名称として、フルサイズセンサーを「FXフォーマット」、APS-Cサイズセンサーを「DXフォーマット」としています。
フルサイズ機の利点は様々ありますが、その1つが「ボケ」を出しやすいこと。APS-C機と同一条件で撮影した場合でも、フルサイズ機はその特性上ボケを出しやすいため、手軽に幻想的な写真が撮影できます。
以下は、フルサイズ機のZ5と、APS-C機のD500で、焦点距離200mm(D500は35mm版換算で約200mm)、絞りF5.6、シャッタースピード1/640秒、ISO200と、条件を揃えて撮影したもの。別のレンズを使用しているために完全に同一条件ではありませんが、フルサイズ機のZ5の方が背景がボケているのがわかるでしょうか。
このようなボケのある写真を撮るために、フルサイズカメラを購入するユーザーも多いとのこと。そこで低価格で売り出しているZ5は、まさにうってつけの製品なのではないでしょうか。
もちろん、APS-C機はフルサイズ機に全て劣る、というわけではありません。APS-C機の利点としては、フルサイズ機よりも手軽に望遠で撮影できること。フルサイズ機よりもセンサーが一回り小さいAPS-C機は、レンズの同じ焦点距離で撮影した場合でも、フルサイズ機よりも約1.5倍(ニコン製品の場合)に拡大された画角で撮影できます。
そのため、航空機などの望遠を必要とするユーザーは、あえてAPS-C機を使うことも。かくいう筆者もその一人で、ニコンのAPS-Cフラッグシップ機である「D500」を愛用しています。
ところで、近年高性能化が図られているスマートフォンでは、躯体にセンサーを収める関係上、どうしてもサイズに制約が出てしまいます。国産製品では7.5ミリ×5.6ミリの1/1.7型というスマートフォンでは大型のセンサーを搭載した機種も出ていますが、大手カメラメーカー各機種のセンサーには遠く及びません。
スマートフォンでも多数のレンズ搭載やAIの採用などで高性能化を進めており、広角側では既存カメラを凌駕する写真が撮影できる機種もありますが、本当に高画質な写真を撮影するならば、一眼レフやミラーレスカメラの方がまだまだ優秀です。