かつては各地で相次いだ新路線の開業も、近年は下火の傾向にあります。2020年の新規開業路線は、富山地方鉄道富山港線(富山駅南北接続線)の富山駅~(旧)富山駅北間約90メートルのみ。わずかな距離の開業ながら、富山駅の南北を直通するという歴史的な出来事でしたが、距離だけを見ると大規模なものではありませんでした。
しかしながら、日本ではまだまだ新路線の建設が進められています。今後の開業を目指し、今まさに工事が進められている鉄道路線は10路線(索道・軌道含む)。今回は、そのうちの新幹線2路線をご紹介します。
北へ延びる北海道新幹線
東北新幹線の実質的な延伸区間として、新青森~札幌間を結ぶ予定の北海道新幹線。2016年に新青森~新函館北斗間の148.8キロが開業し、2021年1月現在は、残る新函館北斗~札幌間約210キロの工事が進められています。
新函館北斗~札幌間では、現在特急「北斗」が走る苫小牧経由ではなく、函館本線に近接したルートを経由。途中、新八雲(仮称)、長万部、倶知安、新小樽(仮称)の4駅が設置されます。
2021年1月現在は、多くの工期を要するトンネル部を中心に工事が進行中。トンネル部39工区のうち、2工区が本体の掘削作業が終了しており、33工区で本坑または作業坑が掘削中となっています。駅舎の本体工事まで着手した箇所はありませんが、倶知安駅のように、構造物建設前の準備工事に取り掛かっている箇所があります。
この北海道新幹線延伸で、計画立案時に議論となったのが、札幌駅の新幹線ホームの位置です。
当初は、現在の在来線札幌駅ホームの1面2線を新幹線に転用し、新幹線ホームと在来線ホームを並んだ位置に設置する計画でした。このプランの場合、新幹線ホームは現在の札幌駅と離れることが無いため、新幹線と在来線や地下鉄、バスとの乗り換えといった利便性を損なうことはありません。
しかしながら2015年、JR北海道が新幹線ホームの設置位置変更を検討していることが明らかになりました。この理由について同社は、在来線ホームを新幹線ホームに転用した場合、在来線の処理能力が低下し、1日あたり100本程度の列車が札幌駅へ乗り入れることができなくなると説明しました。
これを機に、JR北海道、鉄道建設・運輸施設整備支援機構、国土交通省、道、札幌市は協議。現状維持(認可見直し)、東側への設置、地下駅の建設といった案が出されました。そして最終的には、2018年に東側へ設置する計画変更が発表されました。
決定した計画では、新幹線ホームは現駅の東側、創成川の上空に設置。ホームは2面2線の対向式で、在来線ホームとの間には乗り換え用のこ線橋を設置します。また、新幹線駅の設置にあわせ、新幹線駅設置予定地付近を再開発。バスターミナルを設ける再開発ビルと駅舎を連絡させる計画です。
なお、在来線ホームについては、新幹線の線路空間を捻出するため、現在は島式の1・2番線ホームを片面ホームに変更し、1番線を廃止。これの代替として、北側に片面ホーム1線を増設する工事が進められています。
新函館北斗~札幌間の開業は、2030年度末を予定。約10年後の開業に向け、各地で工事が進められています。