かつては各地で相次いだ新路線の開業も、近年は下火の傾向にあります。2020年の新規開業路線は、富山地方鉄道富山港線(富山駅南北接続線)の富山駅~(旧)富山駅北間約90メートルのみ。わずかな距離の開業ながら、富山駅の南北を直通するという歴史的な出来事でしたが、距離だけを見ると大規模なものではありませんでした。
しかしながら、日本ではまだまだ新路線の建設が進められています。今後の開業を目指し、今まさに工事が進められている鉄道路線は10路線(索道・軌道含む)。今回は、そのうちの新幹線2路線をご紹介します。
日本アルプスを貫くリニア中央新幹線
東海道新幹線に代わる、新たな東名阪間の高速移動手段として建設が進む、リニア中央新幹線。2027年の一部開業を目標に、準備が進められています。
リニア中央新幹線は、品川~名古屋~新大阪間を結ぶ計画。2027年の開業を目指す品川~名古屋間では、途中、神奈川県相模原市の橋本駅付近、山梨県甲府市大津町付近、長野県飯田市上郷飯沼付近、岐阜県中津川市の美乃坂本駅付近と、静岡県を除く経由地各県に中間駅を設置します。
各駅とも、島式ホーム2面を配する2面2線の構成。品川駅と名古屋駅を除く各駅では、建設費と開業後の運営費を圧縮したコンパクトな駅として建設します。列車は全車指定席とし、かつ検討中の「新たな販売システム」の導入を前提とし、乗車券発売窓口は設置しない計画です。
また、神奈川県相模原市(宮ヶ瀬湖付近)には「関東車両基地(仮称)」、岐阜県中津川市(岐阜県駅、美乃坂本駅付近)には「中部総合車両基地(仮称)」と、2か所に車両基地を設置する計画。関東車両基地では留置線9本と検査設備を、中部総合車両基地では留置線7本と検査設備を、それぞれ整備する予定となっています。
2021年1月現在は、ルート中のほとんどのトンネル・橋梁が工事契約を締結済みで、両ターミナルの品川駅と名古屋駅のほか、品川駅付近の「第一首都圏トンネル」などでは、実際に工事が始まっています。
品川駅は東海道新幹線の、名古屋駅は東海道本線などの在来線の、それぞれ地下にリニア新幹線の駅を建設しています。現場を直接見ることはできませんが、各駅の線路下に仮蓋が設けられており、地下で工事が進められていることがうかがえます。
このほか、山梨リニア実験線として供用されている約43キロの区間も、リニア中央新幹線開業時にはこれに取り込む予定です。
リニア中央新幹線品川~名古屋間約285キロの開業は、2027年度を予定しています。しかしながら、建設するトンネルによって大井川の流量が減ることによる静岡県の反発や、新型コロナウイルスの感染拡大といった要因によって、工事は遅延しています。当初予定通りの開業は、難しいとみられています。