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未来の鉄道路線

2029年度開業予定、羽田空港アクセス線経由地の今を見る

2021年5月1日(土) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

日本の玄関口の一つである羽田空港。現在は東京モノレールと京浜急行電鉄の2路線が乗り入れていますが、JR東日本も「羽田空港アクセス線(仮称)」を建設し、3本目の鉄道アクセス路線として乗り入れる計画を進めています。

将来JR線が乗り入れることとなる羽田空港
将来JR線が乗り入れることとなる羽田空港

この羽田空港アクセス線は、一部でかつての貨物線を転用する計画。現在は草に埋もれている貨物線が、将来ふたたび日の目を見ることとなります。

2029年度の開業を予定する羽田空港アクセス線、その経由地の現状を取材しました。

【2023年4月4日追記】羽田空港アクセス線の開業予定は、2031年度となることが発表されました。

羽田空港アクセス線とは

羽田空港アクセス線は、羽田空港と都心方面を結ぶ構想の路線。羽田空港~東京貨物ターミナル間で約5キロの新線を建設するほか、既存路線のルートを一部流用・改良して運行する予定です。これら新線や改良線を経由して、羽田空港から宇都宮・高崎方面、常磐線方面への列車を運行する計画となっています。

羽田空港アクセス線の計画区間(国土地理院「地理院地図Vector」の淡色地図に加筆)
羽田空港アクセス線の計画区間(国土地理院「地理院地図Vector」の淡色地図に加筆)

羽田空港アクセス線の線路として転用されるのは、東海道本線の貨物支線のうち、通称「大汐線」と呼ばれる区間です。

1872年の鉄道開業時に東京側のターミナル駅として開業した新橋駅は、1914年に東京駅が開業すると同時に、旅客機能を現在の新橋駅へ移管し、駅名を汐留駅に変更。貨物専用の駅となりました。汐留駅はこれ以降、東海道本線の東京側の貨物ターミナル駅として、重要度を高めていきました。

一方、戦後の高度経済成長期に突入すると、貨物の需要が増大し、従来の設備ではこれらを捌くことが難しくなります。そこで、東京の郊外を中心に貨物線のバイパス線を敷設し、貨物線上に新たな貨物駅を建設する計画が進められました。この計画によって建設されたのが、現在の武蔵野線や京葉線、東京臨海高速鉄道りんかい線。そして、このプロジェクトの一貫として、東京の新たな鉄道貨物の拠点、東京貨物ターミナル駅が、大井ふ頭に建設されました。

そして、新たな拠点駅となる東京貨物ターミナルと、従来の汐留駅を結ぶ路線として1973年に開業したのが、通称大汐線です。しかしこの路線は、1986年に汐留駅が廃止となり、途中で分岐していた浜松町~品川間の区間も1996年に廃止となったことで、貨物線としての役目を終えることとなりました。1998年以降は休止状態となっており、現在は一部が草に埋もれている状況です。

新幹線と並走する大汐線

2021年現在、大汐線の起点は浜松町駅ですが、この近辺は再開発によって線路が剥がされており、線路が現れるのは浜松町~田町間の駅間です。大汐線の線路は、東海道新幹線よりさらに海側に敷設されており、東海道本線や山手線の線路とは接していません。

田町駅付近。一番手前が大汐線の線路です
田町駅付近。一番手前が大汐線の線路です

羽田空港アクセス線を走る列車は、東海道本線から大汐線へ乗り入れる形となりますが、現状の配線では東京駅から大汐線に直接入ることができません。そのためJR東日本では、田町駅付近に単線のトンネルを建設し、大汐線への接続線とする計画です。

大汐線への接続線は、東海道本線の上下線間に建設する予定。このスペースを捻出するため、山手線の引き上げ線を廃止し、跡地に山手線外回りを、山手線外回り跡地に京浜東北線南行を……と、一線ずつスライドする工事を実施します。羽田空港アクセス線の着工は2022年度を予定していますが、田町駅引き上げ線代替となる同駅南側の山手線渡り線設置工事は、2020年より進められています。

京浜東北線の列車が走行している場所に東海道本線の上り線を移設し、上り線の跡地に接続線トンネルを建設する計画です
京浜東北線の列車が走行している場所に東海道本線の上り線を移設し、上り線の跡地に接続線トンネルを建設する計画です
羽田空港アクセス線に先行して進められた、田町駅南側の山手線渡り線設置工事(2020年12月撮影)
羽田空港アクセス線に先行して進められた、田町駅南側の山手線渡り線設置工事(2020年12月撮影)

田町駅を過ぎると、大汐線は東海道新幹線の車庫回送線とともに、東海道本線から東へと分岐していきます。ここから東京貨物ターミナル駅・大井車両基地までの間は、大汐線と新幹線回送線が一体で建設された区間。4線分の高架線が、約4キロにわたって並走しています。

品川コンテナふ頭の横を高架線で通過する大汐線
品川コンテナふ頭の横を高架線で通過する大汐線
新幹線の回送線(左)と大汐線(右)が並ぶ区間
新幹線の回送線(左)と大汐線(右)が並ぶ区間

なお、新たに建設される接続線は、トンネルで東海道新幹線の下をくぐり抜け、東海道新幹線本線と回送線の高架橋が別れるまでに、大汐線の路盤に合流する計画です。

 

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