JR東海は5月25日、名古屋工場を報道公開しました。
鉄道車両の検査は、車両配置があるような車両基地で実施する「仕業検査」「交番検査」、専用の工場で部品を取り外す大がかりな検査「重要部検査」、自動車の車検に例えられることも多い、最も大がかりな検査「全般検査」というように、検査内容によって複数にレベル分けされています(名称は事業者によって異なります)。
JR東海では、車両配置のある名古屋車両区や大垣車両区、車両配置のない静岡車両区浜松派出など、仕業検査等を実施する計8か所の在来線車両基地を有しています。そして、車両区に所属する在来線車両の全般検査や重要部検査を一手に担うのが、名古屋車両区の近隣に位置する名古屋工場です。
名古屋工場の検査能力は、年間約450両。JR西日本に委託している285系を除く同社全ての在来線車両のほか、東海交通事業のキハ11形、愛知環状鉄道の2000系、名古屋臨海高速鉄道の1000形の検査を実施しています。
JR東海の在来線車両の運行に欠かせない名古屋工場は、耐震補強工事の必要性に迫られていました。そこでJR東海では、2014年より約8年かけて、整備能力を保ちつつ工場の耐震化を実施。耐震補強に加え、一部では施設の建て替えとともに新たな設備を導入することで、作業の効率化も図りました。
普段目にする機会がなかなかないJR東海の工場、その新しくなった設備の数々をご紹介します。
全自動で塗装するロボットが登場
今回の耐震工事では、「車体塗装場」「東車体修繕場」「輪軸検修場」などが建て替えの対象となりました。これと同時に、機械設備の更新や修繕ラインの改良も実現しています。
車体塗装場とは、その名の通り、入場した車両を塗装する建屋です。
JR東海の在来線車両は、JR西日本に検査を委託している285系を除き、すべて塗装が不要なはずのステンレス車両。ではなぜ塗装を……と思われる方もいるかもしれません。たしかにステンレス車体自体は塗装は不要ですが、実は313系などの同社の多くの在来線車両では、先頭部では塗装が必要な普通鋼を採用しています。そのため、同社でも車両塗装用のブースが必要なのです。
また、検査入場した車両は、出場時には足回りが綺麗に塗装されています。こちらもステンレス車であっても欠かせない作業となっています。
さて、今回の建て替えによって、車体塗装場では車体前面を水性塗料で塗装するロボットを導入しました。こちらは日本初の導入ということで、作業の効率化が図られています。また、塗料も油性から水性へと変更したことで、環境負荷低減や作業者の健康への負担軽減を実現しました。
また、塗装前に車体を自動で洗浄する機械も、車体前面上部の清掃に対応しました。従来は作業者が作業台に登って洗浄していたということで、こちらも作業効率化が図られました。