車内の様子は?指定席はゆったりした座席に
車内は、構造自体は東海道新幹線用のN700Sから大きく変更されていませんが、座席などではJR九州の独自性が見られます。
指定席となる1~3号車の座席は、東海道新幹線用の3+2列配置とは異なり、800系と同じ2+2列の配置。座席そのものは800系用がベースで、木材を多用したもの。通常の新幹線座席よりもゆったりとした横幅が特徴です。また、座席モケットは各車ごとにデザインが異なり、1号車はグレーの「菊大柄」、2号車はグリーンの「獅子柄」、3号車はベージュの「唐草模様」となっています。
自由席となる4~6号車では、座席は3+2列配置。座席自体も東海道新幹線用の車両と同じですが、シートモケットはJR九州オリジナルのイエローに変更されました。また、床面のデザインも東海道新幹線用と異なりますが、さらに西九州新幹線では、指定席と自由席で別デザインとなっています。
なお、指定席、自由席ともに、各座席にはコンセントを設置。指定席用座席は、800系用からの変更点の一つとなっています。
このほか、各車両の客室内端部にはラゲッジラック(荷物スペース)が設置されています。東海道新幹線用の車両に対し、当該部分の座席の代わりにラゲッジラックを設置している格好ですが、車体構造自体を変更しているわけではないため、当該部分にも窓が設けられ、常にロールカーテンが降ろされた状態となっています。
なお西九州新幹線では、東海道・山陽・九州新幹線と同様に、車内への「特大荷物」の持ち込みに事前予約が必要となる制度「baggage160」を導入する予定。ラゲッジラックとは別に、客室内端部の荷物棚や床面へbaggage160の案内を掲出しています。加えて、東海道新幹線などで2023年度に提供を開始する予定のデッキ部特大荷物スペースも、落成時点で準備されています。
その他の特筆される設備としては、3号車に多目的トイレや多目的室を設置。1・5号車には通常のトイレを設けています。
実は4本で3タイプ 搭載機器が面白いN700S
6両編成で製造された西九州新幹線用の車両は、JR東海がN700Sに求めた、ある設計思想が活きています。
16両編成を組む東海道・山陽新幹線用の車両は、ただ単に中間車を抜けばさまざまな両数に変更できるのでは、と思われるかもしれませんが、必ずしもそれが可能な設計ではありません。複数の車両で1つのユニットを組み、走行に必要な機器をユニット内の1両にまとめて配置する、という方式が採られてきたためです。そのため、3両1ユニットを組んでいた300系は16両編成のみ、4両1ユニットを組む500系、700系、N700系では8両編成または16両編成の2パターンのみの組成。2両1ユニットだった0系では、4、6、8、12、16とさまざまな編成両数に対応できていましたが、300系以降の車両では、このような組成の自由度はありませんでした。
JR東海ではこれを解消するため、N700Sでは小型化した機器を活かし、中間車の数を機器面では2種類のみに設定。その結果、N700系などでは不可能だった両数での組成が可能となりました。今回デビューする西九州新幹線のN700Sは、この自由な組成を適用した第1号。JR東海の設計思想が活きた車両となっているのです。
とはいえ、単純に16両編成のN700Sを6両編成に短縮した、というわけでもありません。東海道新幹線用のN700Sは、両先頭の2両にはモーターが搭載されていませんが、西九州新幹線のN700Sは6両全車がモーターを搭載。また、16両編成中2両にパンタグラフを設置している東海道新幹線用に対し、西九州新幹線用は短編成ながらパンタグラフは2両に装備しています。
また、短い区間を走る西九州新幹線では、「ドクターイエロー」のような線路設備検測の専用車両を導入するのは非効率です。そのため、西九州新幹線のN700Sでは、Y1編成とY3編成に軌道検測機器を、Y2編成に架線検測機器を搭載。この結果、6両編成4本という小所帯ながら、3タイプのバリエーションに富んだグループとなっています。ちなみに、営業用車両に検測機器を搭載する例は、同じJR九州の800系でも見られます。
このほか、山陽・九州新幹線用のN700系と同様に、車体傾斜装置は省略されるなど、東海道新幹線用とは若干仕様が異なる西九州新幹線のN700S。一方で、停電時や車両基地での入換時に活躍する自走用バッテリーは、東海道新幹線用と同様に装備しています。