JR東日本は13日、上野駅にて文化創造イベント「超駅博 上野~停車場から文化創造stationへ~」の報道公開を行いました。
イベントの分野は、「まちとつながるゾーン」、「地方・暮らしとつながるゾーン」、「文化・歴史とつながるゾーン~タイムトリップ150年~」の3種類。このうち「文化・歴史とつながるゾーン」では、「AR車両フォトスポット」という、鉄道車両との新たな触れ合いが楽しめます。
古き良き国鉄型車両とスマホ越しの再開「AR車両フォトスポット」
「AR車両フォトスポット」は、15・16番線ホームの線路上に、懐かしの国鉄型車両が存在する様子を再現するというものです。
今回再現する車両は、かつて上野駅を発着していた115系電車とEF64形電気機関車。すでに発着がなくなり、姿を消して久しい国鉄型車両が、AR(いわゆる「拡張技術」)の力で令和の上野駅に戻ってくることになったのです。また、再現する車両以外の部分には自分の目で見える上野駅の風景が映し出されるため、タイミングがよければ現在上野駅を発着する車両と国鉄型車両との夢のコラボレーションを見ることもできます。
再現には、スマートフォンを使用します。端末に「XR CHANNEL」というアプリをインストールし、表示したい車両を選ぶだけ。画面越しではあるものの、2つのホームに古き良き時代の光景がよみがえります。
ARによる車両の再現の特徴は、大きく3つ。1つめは、「本物の車両をほぼそのまま再現していること」。車両の大きさはもちろん、車体の傷や汚れ、補修の跡など、モデルとなった車両のとおりに映されます。これは車内も同様で、床にできたシミ、座席のくたびれ具合なども忠実に再現されています。また、駅の照明などが車体に反射して明るくなっている部分なども再現されており、リアリティの高さを楽しむことができます。
2つめは、「音や動きも再現していること」。モーターや各種機器類の動作音が聞こえるほか、ヘッドライトの点灯や行先表示幕の回転などが見られます(EF64形は「あけぼの」のヘッドマークが固定で掲出されています)。また、115系については、車体を宙に浮かすモードがあり、忠実に再現された床下機器を観察することもできます。
3つめは、「線路上に車両がピッタリはまる位置に車両を配置できていること」。センチメートル単位という非常に細かい精度で調整されており、スマートフォン越しでも違和感のない仕上がりが実現されています。
ARで車両を再現するにあたっては、KDDI、SoVeCの2社によるAR技術を用いました。モデル構築を担当したSoVeCでは、「フォトグラメトリー」という技術を活用しました。実車の写真を大量に撮影し、これを元に3Dモデルを構築。さらに3Dモデルに写真を元にしたテクスチャを貼り付けることで、本物の車両に近い姿を作り上げているとのことです。使われる写真の枚数は、車両1本あたり数千枚にもおよぶのだとか。
加えて、駅構内の3Dデータも作成されており、センチメートル単位で車両を線路上に表示させるための情報として活用しているといいます。
JR東日本 イノベーション戦略本部 デジタルビジネスユニットのユニットリーダーを務める佐藤勲さんは、鉄道駅でこの規模の規模のARを展開する催しは、今回が世界初ではないかと説明していました。
さらに佐藤さんは、このようなバーチャル空間での鉄道保存も検討していると、今後の希望を語っています。現状、具体的な計画はまだないようですが、最先端技術で楽しめる企画も、今後は期待できるかもしれません。