4月15日、東武鉄道の新型特急車両、N100系「スペーシア X」が、南栗橋車両管区で報道公開されました。
現在の東武鉄道の特急車両とはサービスレベルが大きく異なる「スペーシア X」。その車内外をご紹介します。
「スペーシア」を引き継ぐ「スペーシア X」
スペーシア Xは、既存の100系「スペーシア」の、精神的な後継車両となる、東武の新しいフラッグシップ車両。日光・鬼怒川エリアへの旅の楽しみを、これまで以上に盛り上げる列車です。
車両愛称の「X」には、鹿沼組子の「X」模様や、旅体験(Experience)、乗客に提供する様々な価値(Excellent,Extraなど)、この車両が文化や人々が交わり(cross=『X』)縁をつくる存在であること、未知なる(X)可能性を秘めた存在であること、などの意味が込められているといいます。
車両は、従来のスペーシアと同じ6両編成です。両先頭車が流線形のデザインとなっているのも同じですが、「サニーコーラルオレンジ」などのカラー帯が入ったスペーシアに対し、スペーシア Xでは白と黒のツートンでまとめられています。
両先頭車の窓枠は、六角形の不思議な形に。これは、江戸文化の組子や竹網細工をモチーフとしたもので、愛称の「X」も意識したデザインとなっています。
側面表示器は、LEDではなく液晶ディスプレイとなりました。交通電業社の「彩Vision」で、動画表示が可能です。
ちなみに、イメージ画像などでは真っ白に見えるスペーシア Xですが、実車の色は青みがかった白色でした。ただ、公開日当日が雨天だったため、晴れの日ではまた違った印象を与えそうです。
ホテルや別荘がモチーフの「コックピットラウンジ」
スペーシア Xの設計時に意識されたのは、「多様性」というキーワード。東武日光線系統の特急は、日光・鬼怒川といった行楽地への観光利用はもちろん、短距離の日常的な移動やビジネス利用のニーズもあり、利用目的はさまざまです。また、観光客といっても、グループだったり一人旅だったりと、その内情は多種多様。これらさまざまなニーズに応えるべく、スペーシア Xでは6種類もの座席区分が用意されました。
では、1号車から順に、車内を見ていきましょう。
日光・鬼怒川方の先頭車となる1号車は、「コックピットラウンジ」。ラウンジとありますが、いわゆるフリースペースではなく、指定席車両の一つです。
この車両のコンセプトは「時を超えるラウンジ」。現存する日本最古のリゾートホテル「日光金谷ホテル」や大使館別荘などをモチーフとしているといいます。
車内は、1人用、2人用、4人用のソファーが設置されており、さまざまなグループ形態に対応。座席は背もたれが低く、特急車両のシートらしさはありませんが、座り心地は良好。浅草~日光・鬼怒川間の乗車でも、グループで談笑しながら乗車する分には気になることはなさそうです。また、先頭部の1人掛け席は、前面展望を楽しむことができる配置となっています。
1号車には、カフェカウンターも設置されています。かつてスペーシアの車内で営業していた売店の復活ともいえる設備です。4月現在、車内サービスについては調整中とのことで、どのような飲食品が提供されるのかは不明ですが、オリジナルのビールとコーヒーを提供することは発表済み。コーナーには既にビールサーバーやコーヒーマシンが設置されていました。
ゆったり座席の「プレミアムシート」
2号車の座席は「プレミアムシート」。従来車や後述の「スタンダードシート」と異なり、2+1列配置でゆったりとした座席が特徴です。
座席は電動リクライニング式。背面には「バックシェル」が設置されているため、前の人がリクライニングを倒しても、後ろの人に影響を与えません。
座席の枕は可動式で、首の形に合わせて折り曲げられる「ネックサポート」機能つき。また、枕の横には読書灯が埋め込まれています。また、スペーシア Xでは全座席にコンセントが設置されており、プレミアムシートではひじ掛け前方に埋め込まれています。
なお、車両の通路扉は中央に設けられている一方、2号車の通路は片側に寄っている関係で、最後列(12列目)の座席は1+1列配置となりました。1人での利用時には狙い目かもしれません。
ところで、このプレミアムシートの座席は、他社の特急車両でも類似したものが使われています。東武鉄道車両課の担当者によると、「他社車両と『スペーシア X」のプレミアムシートが目指す方向性が同じだったため、結果として似た形状になった」ということ。とはいえ、製造メーカーは同じコイト電工なので、他社車両向け座席のノウハウがこちらにも活かされているようです。
見た目は一緒? いやいや進化した「スタンダードシート」
スペーシア Xで最も多い数の座席が用意されているのが、3~5号車の「スタンダードシート」。その名の通り、普通席にあたる座席です。
座席自体は、500系「リバティ」のものをベースとして設計した、ということなのですが、細かい点で改善が図られているといいます。
リバティでは、コンセントの設置場所がひじ掛けの内側となっており、ここへ充電器を挿すと、腕と充電器が干渉し、居心地が悪い状態でした。スペーシア Xでは、近年の旅客機用座席のように、コンセントを座席背面に設置。使い勝手を改善しました。
また、座席背面のテーブルはアルミ削り出しとなり、従来よりも剛性があり上質感を感じさせるものとなりました。ただ、アルミ製となったことで重量は増しているため、使い勝手が悪化しないよう、テーブルの脚にダンパーを設置し、重さを感じさせないようにしています。
このほか、窓は座席1列に対して1つとし、居住性の向上が図られたといいます。
開放的なプライベート空間「ボックスシート」
スタンダードシート車両のうち、5号車にはもう一つ、別のタイプの座席が設置されています。「ボックスシート」です。
ボックスシートは、パーテーションによって区切られた半個室。周囲を高い壁で囲まれたような座席で、プライベート感が保たれています。座席の横幅は約80センチ。1つの席に大人と小さい子どもが一緒に座ることができるサイズだといいます。
スペーシアの伝統を引き継ぐ「コンパートメント」
浅草方先頭車の6号車は、客室全てが個室。5室ある個室のうち、4室は「コンパートメント」となっています。
コンパートメントは、4人用の個室。既存のスペーシアにも設置されている設備で、伝統が引き継がれた形となります。スペーシアでは、大胆にもテーブルに大理石が使用されていましたが、さすがにスペーシア Xでは素材は変更。ただし、テーブルは折り畳み式となり、使い勝手は向上しました。また、座席もスペーシアの向い合わせからコの字型へと変わっています。