JR西日本は17日、特急「やくも」に投入する新型車両「273系」を、報道陣に公開しました。
「山陰らしさ」を表現した「やくもブロンズ」
273系は、「やくも」で使われている国鉄型車両、381系を置き換えるために開発された車両。従来の381系と同様に、カーブの通過速度を一般車より向上できる「振り子式」を採用しています。
先頭部の造形は、287系や271系など、近年の同社特急車両同様、貫通型高運転台を採用。繁忙期には2編成を連結しての運用も想定されています。
車両のデザインは、イチバンセン代表の川西康之さんと、近畿車輛デザイン室が担当しました。川西さんは、同社の「WEST EXPRESS 銀河」や、2024年に投入するキハ189系改造の観光列車なども手がけたデザイナー。273系が走るエリアの社員の意見も反映しつつ、この車両のデザインを考案したといいます。
デザインのコンセプトは、「沿線の風景に響き自然に映える車体、山陰の我が家のようにくつろげる温もりのある車内」。外観は、「山陰や伯備線の風景に響き、自然に映える車体」を目指し、「鬱金(うこん)色」「黄金(こがね)色」「銅(あかがね)色」「赤銅(しゃくどう)色」のグラデーションからなる「やくもブロンズ」でデザインされました。塗装はメタリック風味で、JR西日本の社員は「晴れの日や曇りの日、雪の日で、印象が大きく変わりそう」と話していました。
快適性を向上した車内 2・4人用の「セミコンパートメント」も
客室内のコンセプトは、「山陰の我が家のようにくつろげる温もりのある車内」。LEDによる間接照明や、木目調の床模様により、暖かみが演出されており、従来の「やくも」よりも大幅にアップデートされた空間となりました。
グリーン車は、2+1列で座席を配置。明るく空間の広がりを感じられる黄色をベースに、富と長寿の象徴とされる亀の甲羅をイメージした「積石亀甲」模様をデザインしたシートとなっています。足下にフットレストを設置したほか、枕は可動式で、快適性に配慮。また、肘掛けにはコンセントが設置されました。
普通車では、沿線の山々をイメージした緑色をベースに、魔除けの意味がある「麻の葉」の模様をあしらったシートを2+2列で配置。こちらも、可動式枕やコンセントが設置されています。シートピッチは、新幹線と同等の数値に拡大。在来線特急用車両の普通車としては、最大級の間隔となりました。
また、これまでの「やくも」に無い設備として、グループ向けの座席「セミコンパートメント」が導入されました。
セミコンパートメントは、グリーン車と同じ1号車の半室に設置するもの。2人用と4人用のボックス席で、大型テーブルや簡易的な仕切りが設置されています。また、座面をスライドさせると、フラットなスペースに生まれ変わります。
このセミコンパートメントは、普通車指定席と同額で利用できるということ。2人用は2人利用、4人用は3~4人利用時に限り、きっぷを購入できます。各コンパートメントには「11」「12」といった番号のみが振られており、「A席」「B席」といった座席位置の英字は使用されていません。
このほか、バリアフリー対応や、空気清浄機の設置による快適性向上、防犯カメラ設置による車内安全性の向上など、近年の鉄道車両らしいアップデートも図られています。
側面の表示器は、フルカラーLEDを採用。通常は273系用の「やくも」ロゴを表示しますが、ちょっとしたお遊びとして、キハ181系、381系と、「やくも」で使われた歴代車両のヘッドマークを模した表示も可能となっています。