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助川康史の「鉄道写真なんでもゼミナール」

適切な「ホワイトバランス」や「AFモード」を選んでいますか? カメラを知ると鉄道写真はもっと面白くなる! 後編

2024年8月3日(土) 鉄道カメラマン 助川康史

カメラを制す者は鉄道写真を制す!

前回の「カメラを知ると鉄道写真はもっと面白くなる!前編」では、「撮影モード」と「画作りをするモード」の2つを解説しました。

カメラを制す者は鉄道写真を制す!カメラの設定モードを使いこなして、鉄道写真撮影をもっと面白くしましょう
カメラを制す者は鉄道写真を制す!カメラの設定モードを使いこなして、鉄道写真撮影をもっと面白くしましょう

「撮影モード」はシャッタースピードや絞り、ISO感度の設定に関わるモードで、かたや「スタンダード」や「風景」などの「画作りをするモード」は写真の色味やシャープさを決める、どちらも写真を撮る上では基本となる設定です。

特に「撮影モード」は、撮影の成功or失敗を大きく左右するモード。自分が今撮ろうとする写真がどのようなものなのか考えてセッティングすることが大切です。「画作りするモード」は、イメージに近い色味になるかどうかが焦点になりますが、RAW(撮影後のレタッチに向いている生データ)であれば撮影後でも調整できます。ただし、JPEGのみの撮影という人は要注意。JPEGは、撮影時に必要な色情報などだけを圧縮して保存する形式だけに、レタッチで明るさや色味を変えようとすると、すぐに色が破綻してしまいます。もしJPEGのみで撮影するのであれば、「画作りするモード」もしっかり決めて撮影する必要があります。

もちろん、どちらのモードにも完全にカメラ任せのオート設定がありますが、それは「手ブレやピンボケと言った基本的な失敗をなるべくしないように……」という設定であって、被写体の状況や撮り方によっては失敗する原因になります。また、撮影者の個性を出しにくいとい一面もあります。そのためにも、自分のカメラの性能や機能を理解してモードを使いこなすことは必須です。そしてそれは作品をさらに磨くことにも繋がります。「カメラを制す者は鉄道写真を制す!」ということなのです。

「撮影モード」や「画作りモード」について解説した前編はこちら

ホワイトバランスはオートに頼るな!

頼るな!とは、ちょっと過激な言い方でしょうか(笑)。カメラを買ったばかりの人で、撮影モードを変更しても、ホワイトバランス(以下WB)はオートにしているという人は、意外と多く見ます。これはベテランと言われる方でも時々見られるほどです。

もちろん、オートWBが絵的に良くないと言っているわけではありません。私も、夜間の人工光下の撮影では、オートWBを使うことがよくあります。そもそも、人工光下は蛍光灯やLED、白熱灯など様々な光源が混じる「ミックス光」であることが多く、特定の光源に絞ったWBに設定にすると、その設定した光源以外の光が干渉して、自然な色味ではなくなることがあります。それどころか、見た目と全く違う発色をしたりします。そうなると調整するのが難しいので、オートWBにして、それから微調整を加える形が一番良い方法になります。「白を白く見せる」という点であれば、カメラのWBはかなり優秀なのです。

ちなみに、人間の脳もかなり高性能なオートホワイトバランスを持っています。人間は、どのような光でも「白は白」と認識するようにできています。たとえば、蛍光灯の光はかなりグリーンがかっていますが、白い紙を見れば白に見えますね。さらには、色つきのサングラスを着けて風景を見たとしても、最初はサングラスの色も感じますが、少し時間が経つと自然な色味に見え、最後にはいつもの風景と変わらなく見えます。これは脳が普段見ている景色の色の記憶をたどり、自動的に色味を判断して修正をするからだそうです。光源の違いで発色の違いも多少わかりますが、「白いものが緑に見える」という極端なことにはなりません。それほど人間の脳は高性能なWBを持っているのです。

さて、話を戻しますが、ではなぜカメラの優秀なWBに対して「頼るな!」というのかというと、それは優秀過ぎるからです(笑)。優秀過ぎるからこそ、本来人間の目には見えていた「偏った」色味が補正されてしまい、その場の風景の色が変わってしまうからです。

WBの基本は色温度の調整です。色温度はK(ケルビン)と呼ばれますが、ざっくりいうと「温度放射体(仮想物体)である黒体を加熱した際に達した温度の放射エネルギー(光)の色」ということです。何のことやらと思うかもしれないので、「色温度が『高い』(=数値が高い)時の光は青く、色温度が『低い』(=数値が低い)時の光は赤く見える」と覚えてください。カメラのWBは、その色温度に対して白になるよう、画像の色味を対になる方向へ調整することで、光のバランス(=「ホワイト」の「バランス」)を取るものです。

色温度のイメージ(編集部作成)
色温度のイメージ(編集部作成)

ちなみに、ディスプレイなどの色温度の基準、つまり赤でも青でもない状態は6500Kとなっていますが、カメラで6500Kを手動設定すると、通常よりもアンバー(赤味)がかった色になります。光源の色温度はその逆の青色です。どういうことかというと、WB設定の数値は「色温度が6500Kの青い光に対して、カメラがその分赤くすれば、白は白で表現される」というカメラ側の補正値を表示しているからです。そのため、カメラのWBをK(ケルビン)を手動で設定すると、数値が低い場合は青く、数値が高い場合は赤く表現されるのです。

カメラのWBは他にもマゼンタ⇔緑などの色の補色もあわせて行いますが、カメラのオートWBはあらゆる色を分析して完璧に白を白で表現しようとしてくれる優秀な機能なのです。ですが優秀過ぎるが上に、実際の被写体の色味や、想像した色味を出すことが難しくなることもよくあります。たとえば、晴天時の雪原は青空の色も反射してやや青白くなります。しかし、この状態でオートWBを使うと、青空と青白い雪が画面いっぱいになったことで、全体的に白く補正しようとしてしまいます。そのため、雪はややアンバーを掛けたような色になってしまい、実際に見た雪の青白さがなくなるのです。そうなると、冷たさや寒さといった印象が半減してしまいます。このように、作品の印象を大きく左右する色味を司るのがWBです。

では次に、私が鉄道写真撮影でおすすめするWBのモードをご紹介しましょう。

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「太陽光」&「晴天」これはまさしく、晴天時の順光で白を出す時に使うWBです。各メーカーによって数値は若干違いますが、概ね5200Kを基準としています。鉄道写真撮影では、編成写真や鉄道風景写真などの分野に関わらず、日中の自然光が強い時は、ほとんどこの「太陽光」や「晴天」をおすすめします。日中の自然光が

 

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