参加者全員がドクターイエローの車内を見学
時刻は9時20分。ここから参加者は自由行動となり、公開されているエリアを自由に見て回ることができます。集合時間は11時35分で、この時刻までに団体専用列車の自席に戻る決まりです。
ドクターイエローは、8本ある留置線のうち一番南側の8番線に、2本が縦列する形で展示されていました。手前にJR東海所有のT4編成、奥にJR西日本所有のT5編成が並んでいます。2本のドクターイエローが一堂に会するのも珍しいことですが、1本のレール上に並ぶのはさらに珍しいことです。T4編成は2025年1月の引退が発表されていますから、浜松工場で2本がこのような形で並ぶのは、これが最後の機会となるかもしれません。留置線の向かいは、2017年まで検修施設があった場所に芝生が広がっており、一部がフォトスポットとして開放されて、向かい合ったドクターイエローを撮影できるようになっていました。
本ツアーの目玉のひとつが、ドクターイエローの車内見学です。参加者は集合時刻が記された整理券を配られており、長時間並ぶことなくドクターイエローの車内を見学できるのです。ただし、全員がスムーズに見学できるように、車内での撮影は禁止されています。それでも、多くの人が憧れのドクターイエローの車内見学を楽しんでいました。中には、車両から降りるとき、愛おしそうに黄色い車体に触れている男性も。お話を伺うと東京から参加したご夫婦で、昨年もこのツアーに参加したそう。ご主人がレールファンですが、奥さまも「やっぱりドクターイエローを見れば嬉しくなりますよね」と心から楽しんでいる様子です。
専門知識豊富でフレンドリーな現役社員による案内
今回の展示は、ドクターイエローだけではありません。芝生広場の西側通路は「架線を見て、触ってみよう!」コーナー。新幹線に電気を供給する架線を展示し、普段は絶対に触れない架線に触ることができます。子どもたちは、「すごい、架線って太いね!」と興味津々です。
「いまの架線はここに光ファイバー入っていてね。もし架線が削れてしまうと、『もうすぐ切れちゃいますよ』って、自分で知らせてくれるんだよ」
横にはJRや関係会社の社員がいて、丁寧に教えてくれます。普段、浜松工場で働いている社員は関係会社を含めて約1500人。今回のツアーでは、他の部署からの応援も含め約100人のJR社員が迎えてくれました。各コンテンツの説明者は関係する部署から選ばれた専門家で、案内スタッフについては社内公募で立候補した人たちとのこと。普段の仕事を多くの人に知ってもらう機会ということで、皆さんとてもフレンドリーで、説明もわかりやすかったのが印象的でした。
検修庫の間の留置線では、新幹線の台車や、先頭部の非常用連結器で連結された先頭車のほか、保守車両も展示されています。ヤドカリのようなパーツを備えた車両はバラスト整理車。バラスト(砕石)の更換作業後などに、バラストを集めたり軌道内を清掃したりして道床を整える役割を果たします。
「古いバラストはどうなるんですか?」「更換したバラストは、バラスト整理車ではなく、その前のNBSという機械で新しい石を流し込むのと同時にベルトコンベアで搬出します」
こちらにも、専門の説明員がいて、レールファンからの質問にもしっかり答えてくれます。どの人も通りいっぺんの説明ではなく、その部署の専門家としてわかりやすく教えてくれるので、鉄道の知識を深めることができます。以前の公開イベントでは、人が多くてこれほどきちんと教えてもらうことは難しかったですから、これもツアーに絞った利点と言えるでしょう。