トラバーサーの稼働実演や車両の床下見学も人気
検修庫の東側では、車両を横移動させるトラバーサーの実演が30分ごとに4回行われました。浜松工場には3か所にトラバーサーがありますが、こちらの東トラバーサーは、検査を終えて再び組み立てられた車両を出場線へ運ぶ装置。実際に車両を積載し、現役の担当社員が「前方ヨシ!」と確認・喚呼をすると、MCの女性社員による「ゴーゴーレッツゴー!」のかけ声とともに場内を往復しました。ちなみに、運搬実演に使われたN700AのG51編成1号車(783-1051)は、JR東海のN700Aで最後に製造された編成の先頭車です。2020年2月に完成、今回が2度目の全般検査で、ツアー終了後の10月29日に検査を終えて出場しました。
団体専用列車が停車している検修庫3番線の隣、2番線にはN700A G39編成が留置されています。こちらは「下から新幹線を眺めよう!」コーナーで、編成横からN700Aの床下機器を間近に見学できます。こちらも全般検査をほぼ終え、車体・床下ともまるで新車のようにピカピカです。部品のあちこちに検査・確認済みであることを示すマーキングが施され、車軸から揺れを抑えるダンパ、車体傾斜装置など、普段雑誌などでしか見られない新幹線の最新メカニズムをじっくり観察することができました。G39編成は、ツアー終了の翌週、10月23日に出場して運用に戻っています。
すっかり定着したツアーイベント、さらに多彩なイベントにも期待
さて、気がつけば11時25分。集合時間まであと10分となり、参加者が続々とツアー専用列車に戻っていきます。2時間あまりたっぷり見学できると思いきや、展示が充実していて、あっという間に過ぎました。食堂での物販コーナーを取材する時間はなく、参加者からも「大満足だけどもう少し時間がほしかった」という声がありました。
車内で参加者が揃ったことを確認し、12時05分、団体列車は手を振るスタッフの皆さんに送られて浜松工場を出発。何度か待機を繰り返し、本線で再びスイッチバックして12時59分に浜松駅に到着しました。同じ頃、新大阪発の団体専用列車が12時51分に名古屋駅を発車し、東京発と入れ替わりで浜松工場に入って、関西・東海地区の参加者がまた120分間の工場見学を楽しむことになります。東京発の団体専用列車は、「のぞみ」356号のダイヤで運行し、14時21分東京駅着。無事ツアー終了となりました。
近年は、こうした事前申込制の有料鉄道イベントが増えています。混雑に悩まされることなく、落ち着いてじっくり楽しめる点は大きな魅力ですが、参加者が「事前に申込ができる、すでに新幹線が大好きな人」に偏り、「これから好きになる人」にとっては参加しづらい面もあります。この点についてJR東海の広報担当者は「今回はツアー形式が最適と判断しましたが、今後についても、例えば地域にお住まいの皆様を対象とした小学生の工場見学など、より多くの方にお楽しみいただけるイベントも実施していきたいと考えています」と話しました。
大盛況のうちに3回目を終えた「JR東海 浜松工場へGO!」は、秋の恒例ツアーイベントとして定着しました。工場見学だけでなく、貴重な「スイッチバック」による工場線入場も体験できる、すべてのレールファン必見のイベントと言えるでしょう。