編成の先頭から最後尾までおさえた編成写真を撮るなら、車輌の細部のマーキングや、車体に取り付けられた部品などの表現ができるだけクッキリと出ているほうが、よりカッコイイ印象の写真になる。有効画素数1628万画素で撮った写真は、単純に考えても一昔前の800万画素カメラの倍の情報量を持っている。このため、低画素のカメラでは表現できなかったような、より細かい部分がシャープで明瞭に写すことができる。例えば、車体や帯のラインがクッキリと撮れるのはもちろん、編成をアップで撮った場合の社名マーキングやリベット、溶接跡など肉眼では見えないような細かい部分まで写せる。さらに、風景を入れて遠景で撮った写真では、車輌が小さく潰れてしまうことがあるが、高画素カメラであれば潰れずに驚くほど正確に表現することができる。
【上写真の一部を拡大表示】
方向幕の「千葉」はもちろん、その下の「成田周り CHIBA」までしっかり読める。床下部分の汚れもリアルに表現されている。汚れに埋もれてはいるものの、前面のジャンパ栓部分の三相電源部分を示す「三相」の文字も読める。
鉄道写真、特に走行写真を撮る場合には、ファインダーの視野率は非常に重要だ。写真の構図が適切に作れるかはファインダーの視野率で決まるとも言って過言ではない。ファインダーの視野率とは、ファインダーを覗いたときに見える映像と、実際に写真に写る映像の撮影範囲がどれだけ合致しているかという数値だ。多くのエントリー機では、ファインダーの視野率が95パーセント前後と低いため、ファインダーを覗いたときに見える映像よりも実際に写真に写る映像の方が広くなる。このため、せっかくファインダー内で適切な構図、この場合は”どこの範囲まで写すか”という構図を作っても、実際の写真ではそれ以上の範囲が写ってしまうため、意図通りの写真を作るためにはトリミングをしたり、撮影範囲を経験則から判断してファインダー内で意図的に狭くする必要がある。しかし、ファインダーの視野率が100%の『K-5』ならば、ファインダー内に見える映像がそのまま写真として写るため、ファインダー内で構図をキッチリと作ることができる。
これにより、編成の端から端までをキレイに収めたり、写真の端に架線柱など余分な物体が映り込むのを避けることができる。また、この本体サイズで視野率100%の性能を持つカメラはなかなか存在しないため、その点でも『K-5』は優秀なカメラだと言える。その他にも『K-5』には、11点のワイドな測距点で被写体が中央になくてもピント合わせができるような機能などを備え、構図作りをサポートする。この機能については次回以降で詳しく紹介する。
編成をギリギリまでアップで撮影。車輌に対し、下側の空間を少なくし右端もやや空間を空けてカッコイイ構図を作っているのはプロならではのテクニックだ。100キロオーバーで迫って来る列車に対し、様々なテクニックを意識して撮るには、やはり視野率が100パーセントでないとやりにくい。なお、構図に関してはこの後の「撮影テクニック講座」で詳しく解説する。
視野率が低いカメラで撮るとこのような写真になってしまうことがある。右端にファインダーでは外したつもりの架線柱が僅かに映り込んでいたり、下側の空間を少なめに構図をとっても多めに入ってしまっている。こうなると、レタッチソフトなどでトリミングするしかない。
中井カメラマンのように撮り慣れたプロの写真家や、動体視力の良い人ならば、走行写真でも1ショットで適切な構図に車輌を持ってくることができるが、初心者や列車が来ると焦ってしまって上手く撮れないような人では1ショットできめることは難しい。そんなときには、「連写」が有効だ。ベストな構図の少し前からシャッターを押し続ければ、適切な位置に車輌が来るカットが得られることが多い。とはいえ、高速で迫ってくる列車は一瞬にしてファインダー内を移動するため、連写してもカット数が少ないと、ベストな位置では写っていないことがある。しかし、『K-5』の秒間7コマという連写性能を使えば、近距離での撮影でさえも得られるカットが多く、ベストな構図を作りやすい。
線路わきの約2mぐらいの場所から撮った作例。連写を使うことで、これだけのカットを撮ることができる。1ショットでベストな位置を狙わなくても最後のカットは迫力のある良い走行写真となった。
ファインダーの部分でも触れたが、適切な走行写真の構図とはどのようなものだろうか? 中井カメラマンの作例を見ながらそのテクニックを見てみよう。
中井カメラマン: 鉄道写真を撮るときに、構図で気をつけなければならないのは以下の3点です。この3点を気をつけて撮影すれば、素人っぽさが抜けてよりプロが撮ったものに近い構図になってきますよ。
【1】下側の地面の面積
写真内で地面の面積を狭くします。地面の面積が狭いと、車輌が座っているように安定するため、よりダイナミックに見えます。
【2】架線柱の位置
架線柱を1輌目の後方から2輌目付近にもってくることで、先頭部分に邪魔なものがなく、車輌の先頭がより引き立ってきます。
【3】左右の空間
左右の空間がある程度空いており、しかも均等になっていると、車輌が構図内で安定して、バランスの良い写真になります。
悪い作例でイマイチ車輌が格好良く見えないのは、上記の3点がきちんとできてないからです。どうです? 比べてみると、違いが分かるでしょう?
中井 精也
(なかい せいや)
1967年10月東京生まれ
小学校6年のときに父親からカメラをもらったのがきっかけで鉄道写真を撮り始め現在に至る。中学から大学までずーっと鉄道研究会に所属する筋金入りの鉄ちゃんでもある。大学卒業後、鉄道写真家の真島満秀氏に師事。雑誌、広告撮影のほか、テレビ出演、「JAL旬感旅行」の鉄道写真ツアー講師など幅広く活躍している。2004年春から毎日必ず一枚鉄道写真を撮影する「1日1鉄!」(ブログ)を更新中!鉄道の旅の臨場感を感じさせる写真を撮りたいといつも考えている。
社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
日本鉄道写真作家協会(JRPS)副会長
ブログ『1日1鉄!』 >>
- 有効画素数
- 約1628万画素
- 連続撮影速度
- 最高約7コマ/秒
- ISO感度
- ISO100~12800、カスタム設定により拡張ISO80~51200使用可能、バルブ時はISO1600まで
- 動画撮影機能
- フルHD(最高1920×1080 25fps)
Motion JPEG(AVI) - ファインダー
- ペンタプリズムファインダー 視野率約100%、
倍率約0.92倍(50mmF1.4レンズ、∞) - 液晶モニター
- 3.0型 約92.1万ドット 反射防止ARコート
- カスタムイメージ
- 鮮やか、ナチュラル、人物、風景、雅(MIYABI)、ほのか、モノトーン、 リバーサルフィルム、銀残し
- サイズ/重量
- 131(幅)×97(高さ)×73(厚さ)mm/約660g(本体のみ)
- ラインナップ
- ・K-5 ボディ
・K-5 18-135レンズキット
※smc PENTAX-DA18-135mm
F3.5-5.6ED AL[IF]DC WR(フード付き)が付属
・K-5 18-55レンズキット
※ smc PENTAX-DA18-55mm
F3.5-5.6AL WR(フード付き)が付属
- 画角
- 76~11.9度
- 構成枚数
- 11群・13枚
- 最小絞り
- F22-F38
- 最短撮影距離
- 0.4m
- フィルター径
- 62mm
- 最大径×長さ
- 73×76mm
- 質量 (重さ)
- 405g
- 画角
- 76~29度
- 構成枚数
- 8群・11枚
- 最小絞り
- F22-F38
- 最短撮影距離
- 0.25m
- フィルター径
- 52mm
- 最大径×長さ
- 68.5×67.5mm
- 質量 (重さ)
- 235g