鉄道写真を撮る場合、いつも明るく状態の良い場所で撮れるとは限らない。保存車輌の室内や、暗めの車庫の中などでは手持ちで撮るとシャッタースピードが稼げずに、手ブレしてしまうことがある。このような場合にはISO感度を上げることで、シャッタースピードを上げられる。しかし、ISO感度を上げすぎると、従来のカメラでは全体のディテールが甘くなり、しかもカラーノイズまで発生する。この悩みを解消してくれるのが、『K-5』の高感度性能だ。
『K-5』は標準でISO100~12800、さらに拡張設定でISO 80~51200までをカバーする。この性能があれば、暗めの車内でISO感度を1600まで上げて撮っても、シャープ感が失われないばかりか、ノイズは発生が殆ど分からないほど。さらに、ISO12800では夜間に止まっている列車を手持ちで撮ることもできる。『K-5』では、さらにボディ内に手ぶれ補正機構も搭載しており、どんなレンズを付けても手ぶれ補正をすることができる。暗い環境での撮影では、この手ブレ補正を併用することにより、手持ちでシャッタースピードが遅い場合でも手ブレを抑えることができる。この高感度と手ぶれ補正機構は暗部撮影に大きく役立ってくれる。
他にも高感度性能は様々な用途に使える。例えば、新幹線の走行写真を撮るときのように通常よりもシャッタースピードを上げたい場合や、曇天時の撮影などでシャッタースピードが晴天時より低速になる場合でも、ISO感度を上げることで、シャッタースピードを上げることができる。今までは絞りを開けてシャッタースピードを上げていたシーンでも開けずに撮ることができるのは嬉しいところだ。さらに、どうしてもシャッタースピードが上げられない暗い場所でも手ぶれ補正機能により、格段に手ブレが少なくなる。夜の駅など手持ちで撮らなければならない場合に、より成功写真を得やすい。
走行写真を撮るときには、"置きピン"と呼ばれる車輌がベストな構図位置に来たときにピントが合うように調整して撮っているケースが多いのではないだろうか? 『K-5』であれば、"置きピン"をする必要はもうない。100キロ前後で走ってくる列車に対し、カメラが自動的に動体を追尾してフォーカスを合わせる"コンティニュアスAF"でも正確にフォーカスすることができるのだ。
実際にその例を見てみよう。
作例はカーブから進入する列車を正面から逆光状態で撮ったものだ。カーブにさしかかっている状態では、ほぼ真っ正面に列車が迫ってくるように見える。この場合、絵としては車輌前面が大きくなるだけなので、カメラの性能によっては"コンティニュアスAF"ではピントが合わせにくく、下手をするとフォーカスが前後に迷ってしまう場合がある。しかし、『K-5』は、全てのカットで正確にフォーカスを合わせており、AF性能が非常に高いことが分かる。
これは中央部に9点のクロスセンサーと左右に2点のラインセンサーを備えた計11点AFシステムによるものだ。
さらにライブビューを活用すれば、コントラストAFによりフォーカスポイントを画面内の任意の位置に設定できる。三脚使用時でもフォーカス位置を自由に設定しつつ、精度の高いフォーカスが可能だ。コントラストAFは写真内のコントラスト比を検出してフォーカスするため、フォーカス速度の遅さが欠点だったが、『K-5』では大きく改善され、一瞬でフォーカスが合うようになった。
「コンティニュアスAFは慣れないから、やっぱり置きピンしたい」という場合にはライブビューとコントラストAFを併用することで、ピントを合わせた位置で正確なフォーカスができるため、置きピン時のフォーカス精度が高くなる。
『K-5』のフォーカス性能を使いこなせば、ピンぼけ写真を作る確率は極端に低くなるのは間違いないだろう。
中井カメラマンのワンポイントアドバイス!
この作例では、フォーカスポイントを架線に合わせて『置きピン』してます。液晶モニターに表示された画像のなかで、どこら辺に列車の正面がきたときにシャッターを切るかを予め想定しておきます。そして、その部分の架線にピントを合わせれば、列車にピントをピタリと合わせることができますよ。これもフォーカスエリアが自由に設定できるからこそできる『置きピン』です。
夢中で列車を追いかけていると、ついカメラの水平位置がうまくできずに傾いた写真になってしまうことがある。また、三脚にカメラを設置して撮影する場合に、水準器で水平を合わせたつもりでも、撮ってみると微妙にズレている。そんなケースを経験した読者も多いのではないだろうか?
『K-5』はこのような場合にも助けてくれる優秀なカメラだ。
傾きを自動補正できる!
『K-5』はなんと写真の傾きを検知して自動的に補正する機能を搭載している。以下の中井カメラマンの作例を見て欲しい。
手持ちなどで撮影した場合、このような微妙に傾いた写真になる場合がある。駅の屋根を見てみると、やや傾いているのが分かる。しかし、同じ位置で傾き補正機能を使うと・・・
水平を正確に表示する電子水準器
三脚にカメラを据えたときに便利なのがこの機能だ。三脚でカメラ位置を調整するときに、以下のような水準器をカメラの液晶に表示させることができる。
この水準器は左右にカメラが傾いているときには、中央のラインで傾きを警告してくれる。また、右隣のメーターはカメラの上下の傾きを表示する。微妙な傾きでも繊細に検知して教えてくれるので、傾きを作らないようにカメラを設置できる。上の自動補正と組み合わせれば、間違って傾き写真を作ることはなくなるに違いない。なお、ファインダーで撮影時も左右の傾きを知らせてくれる水準器が表示できる。
カレンダーでは夏の花畑だったが、今回訪れたのは11月。当然花畑もなく、荒れ地に近い状態だったため『K-5』で同じカットを撮ることはできなかった。しかし、中井カメラマンはこの状況でも『K-5』で素晴らしい作品を作ってくれた。
中井 精也
(なかい せいや)
1967年10月東京生まれ
小学校6年のときに父親からカメラをもらったのがきっかけで鉄道写真を撮り始め現在に至る。中学から大学までずーっと鉄道研究会に所属する筋金入りの鉄ちゃんでもある。大学卒業後、鉄道写真家の真島満秀氏に師事。雑誌、広告撮影のほか、テレビ出演、「JAL旬感旅行」の鉄道写真ツアー講師など幅広く活躍している。2004年春から毎日必ず一枚鉄道写真を撮影する「1日1鉄!」(ブログ)を更新中!鉄道の旅の臨場感を感じさせる写真を撮りたいといつも考えている。
社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
日本鉄道写真作家協会(JRPS)副会長
ブログ『1日1鉄!』 >>
- 有効画素数
- 約1628万画素
- 連続撮影速度
- 最高約7コマ/秒
- ISO感度
- ISO100~12800、カスタム設定により拡張ISO80~51200使用可能、バルブ時はISO1600まで
- 動画撮影機能
- フルHD(最高1920×1080 25fps)
Motion JPEG(AVI) - ファインダー
- ペンタプリズムファインダー 視野率約100%、
倍率約0.92倍(50mmF1.4レンズ、∞) - 液晶モニター
- 3.0型 約92.1万ドット 反射防止ARコート
- カスタムイメージ
- 鮮やか、ナチュラル、人物、風景、雅(MIYABI)、ほのか、モノトーン、 リバーサルフィルム、銀残し
- サイズ/重量
- 131(幅)×97(高さ)×73(厚さ)mm/約660g(本体のみ)
- ラインナップ
- ・K-5 ボディ
・K-5 18-135レンズキット
※smc PENTAX-DA18-135mm
F3.5-5.6ED AL[IF]DC WR(フード付き)が付属
・K-5 18-55レンズキット
※ smc PENTAX-DA18-55mm
F3.5-5.6AL WR(フード付き)が付属