EOS 7Dの特長 |
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写真は撮るだけで満足してはいけない。それを作品に仕上げて初めて価値が出る。今回のプレミアム講座の締めくくりは、撮影した写真のプリントだ。プリントにはキヤノンEOS学園の教室を特別にお借りすることができた。やはり、より質の高い作品に仕上げるためには、撮影した写真をより鮮やかに高精細にプリントできるプリンターが必要だ。EOS学園には、最新のA3ノビ対応の染料系プリンター「PIXUS Pro9000 Mark II」が設置されており、これを使用して作品づくりを行った。なお、「PIXUS Pro9000 Mark II」については下のコラムを参照して欲しい。
今回の講座ではレタッチなどは行わず、カメラで撮影した写真をそのままプリントすることになった。EOS 7Dほどの高性能のカメラであれば、撮影がうまくいっていれば、そのままプリントしても十分に絵になる作品がプリントできる。そのため、プリントの流れとしては、EOS 7Dの付属ソフト、「Digital Photo Professional」(以下DPPと略)を使用し、プリントする写真をセレクトして、最初に2L判でプリントし、気に入った作品はA3ノビサイズでプリントするという流れになった。DPPには気に入った写真を「1」、「2」というふうに数字のフラグを付けることができるため、一番気に入ったのは「1」、次点は「2」というふうに分類することができる。付けたフラグは「1」だけ印刷というように一括で印刷したり、編集することができる大変便利なソフトだ。これが無料でカメラに付属しているから、 EOS 7Dには全く隙がない。カメラ本体で撮る以外にも、撮った後のPCでのセレクトからプリントのワークフローに関してもきちんと考慮されているのだ。
広田先生によると、EOS 7Dのような約1800万画素の高画素で「よく写るカメラ」ほど作品づくりはシビアになるという。撮影時の被写体ブレなどはモニターで見たのでは分からない場合もあり、プリントすることで初めて自分の撮影精度を確認できるとのことだ。
EOS 学園の教室にて、撮影した写真をセレクト中。
広田先生からセレクトの方法などのレクチャーを受ける受講者。
4人受講者は黙々と作品をセレクトしていたが、プリントが出てくると、自分の作品をじっくりチェックしたり、他の受講者のプリントを見たりと、今日の撮影の成果を真剣に確認していた。また、広田先生は各受講者の作品をチェックして撮影法やセレクト法のアドバイスを一人一人行ってくれた。
受講者と一緒に作品を見る広田先生。画面の端から先頭車が飛び出すギリギリでシャッターを切って編成全体をダイナミックに入れた作品だ。撮影した受講者自身もこのタイミングにシャッターを切れたことに驚いていた。
受講者の作品を丹念にチェックする広田先生。一人一人に丁寧なアドバイスを与えていた。
作品づくりのテクニックとして広田先生からは次のようなアドバイスがあった。
E217系のように先頭部のラインが丸みを帯びてカーブしているような車輌の連結部を撮ると、作品にリズムが出る。
EOS 7Dの高画素と、PIXUS Pro9000 Mark IIによる高精細で鮮やかなA3ノビプリントの組み合わせは、受講者に予想以上のインパクトを与えたらしく、あまりの出来の良さに「これが自分の作品か?」と疑うシーンすら見受けられた。やはり2L判では味わえないダイナミックさがA3ノビプリントにはあるため、予想以上に満足できる作品が作れたようだ。
受講者4人ともが今日1日で得たものが多かったようで、A3ノビの作品を手土産に、とても満足した表情で帰っていた。
「弘法筆を選ばず」という格言があるが、これは本当の達人の域に達した者であれば、 どんな道具でも使いこなすことができるという意味だ。 これを裏返すと、達人の域に達していない者は、道具を選ぶ必要があるのだ。 本当に自分はもう達人だと胸を張れるユーザーはそう多くないだろう。
ならば、鉄道写真という一瞬のシャッターチャンスで作品の善し悪しが決まる勝負の世界では、 なおさらその一瞬に応えてくれるよりよい道具が必要になる。 今後もカメラの進化は留まることはないが、 現時点においてはEOS 7Dというカメラは鉄道写真にとって「よりよい道具」であると、講座に参加した全員が感じたようだ。
また、今回の受講者は、ブログに写真を掲載するほど、ある程度撮影には慣れたユーザーではあるものの、 その日に初めて渡されたカメラでこれだけの作品が撮れるというのは、各個人の適応能力の高さもさることながら、 操作性の高さの証明と言えるだろう。
フォーカス面ではAIサーボAF IIにより、 高速で移動する列車をファインダー内で追っていてもしっかりと追随してくれる。 また、ミラー駆動とシャッターチャージを各専用モーターで高速駆動する、2モーターシステムは、 シャッターを押したときのカメラの反動を抑えてくれるので、手ブレ防止に有効だ。 ここぞという時にぶらさないで安心して撮れるのは心強い。 最高秒間約8コマという高速連写性能も見逃せない。 詳しくは下で紹介するが、これを利用すると編成パノラマ写真も作ることができる。
そして魅力的なのはそのダイナミックレンジの広さだ。 床下機器を撮影してもノイズが少なく、暗部までしっかりと描写してくれるし、 「高輝度側階調優先」機能を使えば、晴天下で白い車体を撮影しても白飛びをかなり抑えてくれる。 このため今まで時間帯によっては光線状態が悪くて諦めていた撮影地でもEOS 7Dなら撮れる可能性が出てくる。 そのためEOS 7Dは撮影の自由度を広げてくれるカメラと言っていいだろう。 ぜひ店頭やEOS学園のEOS 7Dの使い方講座に参加して、その性能を自分自身で確かめて欲しい。
以上で今回のレポートは終わるが、もし、広田先生の講義を自分も聴いてみたいというなら、EOS学園にて先生の講座が開講されているため、以下を参照して欲しい。きっと得られるものがあるはずだ。
1969年東京生まれ。スピード感あふれる乗り物に幼いころから興味をいだき2歳で初めて鉄道写真を撮る。現在は写真展などで作品を発表するなかカメラやレンズを初めとする機材全般のインプレッションや開発を多く手掛ける。
また写真教室や撮影会、TVなどで写真の楽しさを広く伝えようと活動中。2008年よりデジ侍のメンバーとして活動を開始。2009年はNYで写真展を開催。EOS学園東京校講師。
「EOS学園」とは、キヤノンが運営する写真教室だ。東京・東銀座の「東京校」、大阪・西梅田の「関西校」、名古屋・伏見の「名古屋校」と全国に3カ所が設置されている。EOS学園では、広田先生の「鉄道情景スナップ講座」(東京校のみ)はもちろん、撮影の基礎から応用までレベル別に4段階の講義が受けられる。さらに、今回ご紹介したEOS 7Dの使い方講座なども開講しており、キヤノン製カメラの使い方から、写真の基礎、RAW現像、ハイレベルなテクニックなど様々な講座を受けることができる。なお、キヤノンフォトサークル会員には受講料の割引制度もある。
今まで我流で鉄道を撮影していて今ひとつうまくいかない…という悩みを持っていたら、広田先生の講座を受けてみると、目から鱗が落ちるかも知れない。撮影テクニックを上達させたいなら、ぜひ初心に返って講座の門を叩いてみてはどうだろうか?
【2009年?2010年の講座の開講予定表】各講座は先着20名で締め切ります。お早めに!
※講座の日程は予告なく変更になる場合がございます。最新の情報はEOS学園のページでご確認ください。
キヤノン PIXUS Pro9000 Mark IIの特長 |
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撮影した写真を「作品」として仕上げることができるのがプリンターだ。特に鉄道撮影にこだわるユーザーならば、A3ノビに対応したプロフェッショナル仕様のプリンターを使いたい。L判やA4サイズなどもいいが、名作をモノにできたなら、半切やA3ノビサイズでプリントをすると、思わず額に入れて飾りたくなるダイナミックな出来映えになる。
講座でも使用した「PIXUS Pro9000 Mark II」は、A3ノビに印刷できるのはもちろん、キヤノンのA4サイズプリンターでは最大でも6色?5色しか使用しないところ、全8色ものインクを2ピコリットルという微細なサイズで吹き付けることで、高精細かつ鮮やかで奥深い色表現が可能なのだ。(ちなみに、1ピコリットルは1兆分の1リットル。人間の髪の毛の10 分の1の大きさだ。)
本製品では、赤と緑の色表現をより広げるために、「レッド」と「グリーン」という専用のインクタンクを装備している。鉄道写真には意外とこの「赤」と「緑」が重要だ。今回のような成田エクスプレスの写真の善し悪しはアクセントの「赤」がいかに綺麗に出るかが問題だ。他にも交流電気機関車やJR東日本のEF81で使われている赤2号や、名鉄パノラマカーなど、赤をきちんと表現したい車輌は多い。緑は、ゆふいんの森やトワイライトエクスプレスはもちろん、そもそも野外で撮影すると背景が森林や草原、田畑などの緑になることが多いため、鮮やかな緑が出ると全体の雰囲気が華やかになる。このため、A3ノビの大判が印刷できることもさることながら、色表現という面でも「PIXUS Pro9000 Mark II」はオススメだ。
「物井駅?佐倉駅」間の通称「モノサク」には、様々な撮影ポイントがあるがその一部を紹介する。
なお、「モノサク」の区間は太陽が線路をまたいで通るため、午前中は上り線側、午後は下り線側が順光になる。また、物井側は絶えず逆光になるため、佐倉側にカメラを向けるのが基本的な撮り方になる。
線路と併走する農道は鉄橋からカーブしてくる列車を近距離でダイナミックに撮影できる。 もちろん、列車に近寄りすぎないように、レポート第1回で広田先生が解説している通り、架線などの外側から運転士に対して安全だと分かる位置で撮影すること。
使用機材 | Canon EOS 7D + EF-S18-200mm f/3.5-5.6 IS | ||
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撮影モード | シャッター速度優先AE | 焦点距離 | 18.0mm |
シャッター速度 | 1/1600 | 絞り数値 | 6.3 |
ISO感度 | 200 | AFモード | AIサーボ AF |
「モノサク」で一番有名な地点。いつも誰かが撮影している場所。架線柱に影響されず、勾配を上ってくる列車を真正面で狙うことができる。作例は13時頃撮影したため、まだ日が下り線側に回りきっていない。
使用機材 | Canon EOS 7D + EF-S18-200mm f/3.5-5.6 IS | ||
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撮影モード | シャッター速度優先AE | 焦点距離 | 90.0mm |
シャッター速度 | 1/1600 | 絞り数値 | 5.6 |
ISO感度 | 200 | AFモード | AIサーボ AF |
写真下にある、右と左を向いた三角形のカーソルキーのどちらかを押すことで、6輌目付近から1輌目(左)~12輌目(右)まで成田エクスプレスE259系の全ての車輌側面を見ることができます。ズーム機能や上下のカーソルキーは使えません。
物井~佐倉間の農道から、走行中のE259系成田エクスプレスの側面を連続撮影して作成したパノラマ写真。 合計38枚の写真を横一列に接合して作成したもの。 ちなみに、上記のデータはWebで閲覧しやすいように、12130×300ドットにリサイズしてあるが、 元データは約11万×2700ピクセルと、約3億画素にも及ぶ。EOS 7Dの最大毎秒約8コマという連写性能と、 UDMA Mode6に対応した高速なコンパクトフラッシュへのデータ書き込み性能があれば、 少し離れた線路脇から走行中の車輌側面を連写するだけで、このようなフル編成の側面写真を作ることができる。 リサイズしてある上記のデータではわかりにくいが、 元データでは車番の位置や床下機器の形状とそこに書かれている表記などが克明にわかるため、 模型を制作したり、グレードアップする資料として役に立つ。 なお、カメラを中心として180°の水平方向に広いパノラマ写真を作る場合には、添付ソフト「PhotoStitch」を使うと、 撮影した写真をPCの画面上で並べて、「合成」のボタンを押すだけで、カンタンにパノラマ写真を作ることができる。 風光明媚な撮影地に行った際には、ぜひ鉄道をいれつつカメラをぐるりと一周させながら撮影して、 ダイナミックなパノラマ写真を作ってはどうだろうか?
なお、さらに縮小して編成全体を見てみると、以下のようになる。
鉛筆など長細いものに貼り付けると面白いかも知れない。たまにはこうした写真を作って遊んでみるのもせっかくなら面白いだろう。EOS 7Dを買ったらぜひチャレンジしてみて欲しい。