在来線の鉄道車両は、早ければ製造から20年程度、一般的には30~40年ほどで運用を終えます。そのため、製造期間が10年以内に終了した車両では、デビューからおよそ40年ほどで完全引退となる事例が多数です。
しかしながら、国鉄時代に開発された車両は、20年以上の長期にわたって製造されたものがあります。東海道新幹線開業とほぼ同時期に生まれた形式が、製造途中の改良や後年の改造こそあるものの、現在も現役で活躍しているのです。
今回は、デビューから50年を超え、まだまだ定期列車で活躍するJRの車両をピックアップしました。
国鉄最多製造数を誇る103系
国鉄の通勤型電車の顔ともいえる103系。製造期間は1963年から1984年まで21年間におよび、製造総数は3447両。これは新幹線の0系(3216両)やJR東日本のE233系(3287両)を上回り、旅客車両としては日本最多の記録となっています。
そんな103系も、第1編成の製造から50年以上が経過し、JR東日本とJR東海では引退済み。残るJR西日本とJR九州でも、既に主力路線からはほとんど撤退しています。現在も定期運用に就いているのは、JR西日本が48両、JR九州が15両の、計63両。製造総数の2%程度の残存数となっています。
JR西日本で現在も103系が走るのは、奈良線、和田岬線、播但線、加古川線の4線。このうち、奈良線と和田岬線では、原型に近い姿を残した車両が今も使われています。
奈良線の103系は、4両編成2本が残存。前面に白帯こそ入っていますが、103系初導入線区の山手線と同じウグイス色をまとっています。かつては大和路線や大阪環状線での運用もあったウグイス色の103系ですが、221系や205系によって置き換えが進み、2016年以降は奈良線のみの運用となっています。
奈良線用103系のNS407編成とNS409編成は、いずれも1973年製の先頭車を含むベテランです。そんな古参車両ながら、NS409編成は2020年12月に検査を受け、車体や足回りが塗りなおされて出場するなど、まだまだ活躍が続く様相を見せます。
一方でJR西日本では、JR京都線・JR神戸線に225系を追加投入し、捻出した221系で大和路線などの201系を置き換えると発表しています。103系については触れられていないものの、201系より古く、2編成のみの在籍となっている奈良線の103系についても、去就が注目されます。
和田岬線の103系は、6両編成1本の在籍。前面窓が金属押さえとなっている奈良線用に対し、こちらはHゴム使用と、より原型に近いスタイルを維持しています。
225系の追加製造で動きがありそうな奈良線に対し、こちらは当面変化は無い様子。兵庫運河に絡めた和田岬線そのものの存廃の議論もありましたが、こちらも特に進展はなく、今後もしばらくは103系が走る続けることになりそうです。
播但線と加古川線は、両線の電化時に導入されたもの。いずれも2両編成仕様に改造されています。
播但線用の103系3500番台は、前面は原型を踏襲したデザイン。一方の加古川線用3550番台は、105系のような貫通型として改造されました。いずれの車両も体質改善工事を受けているため、車内は207系に近い水準までレベルアップしています。
JR九州の103系は、筑肥線・唐津線の筑前前原~西唐津間で運用。3両編成5本が在籍しています。
同社の103系は、1983年に筑肥線と福岡市営地下鉄線が相互直通運転を開始する際に導入された車両。製造時は6両貫通編成でしたが、後年に4本が6両編成から3両編成に改造。一時期は、福岡空港~筑前前原間を6両で運転し、筑前前原駅で3両を切り離すという運用も組まれていました。
2010年代に入ると老朽化が進み、305系に置き換えられる形で2015年に地下鉄直通運転から撤退。以降、筑肥線・唐津線の筑前前原~西唐津間での活躍が続いています。