鉄道大国の日本では、新幹線が国土を縦断し、都市間連絡を担う在来線特急も多く運行されています。
長距離を移動する新幹線はもちろん、高速バスなどとの競合にさらされる在来線特急にとっても重要なのが、スピードです。現在はスピードこそ正義!という時代ではありませんが、それでもサービス向上や他の交通機関との競合において、スピードアップやそれによる所要時間短縮は重視される項目の一つです。
ところで、単に「スピード」といっても、列車の場合は二つの指標があることはご存じでしょうか。絶対的な速さを表す「最高運転速度」と、目的地までの所要時間に対する速度「表定速度」です。今回は、この二つの指標で、日本で最も速い列車をご紹介します。
新幹線で最速なのはあの列車
日本の中で特にスピードが高い鉄道といえば、新幹線です。その中で最も速いスピードで運転しているのは、東北・秋田新幹線の「はやぶさ」「こまち」。最高運転速度は時速320キロです。使われている車両は、「はやぶさ」がE5系、「こまち」がE6系。いずれも時速320キロ運転用に開発された車両で、高速運転時のさまざまな障害を取り除くため、先頭部分は長い流線形となっています。
鉄道先進国の道を歩んできた日本は、1964年開業の東海道新幹線によって、鉄道が時速200キロを超えて走ることを世界の常識としました。各国もこの流れに続き、フランスの「TGV」やドイツの「ICE」が登場。2022年現在は、営業最高速度世界一の座は譲っていますが、それでも最高時速320キロと、世界2位タイの記録を誇っています。
なお、「はやぶさ」「こまち」が最高速度の時速320キロで走ることができるのは、宇都宮~盛岡間のみ。盛岡~新青森~新函館北斗間は時速260キロ、大宮~宇都宮間は時速275キロ、東京~大宮間と秋田新幹線の盛岡~秋田間は時速130キロに制限されています。
その他の新幹線の最高速度を紹介すると、東海道新幹線は時速285キロ。山陽新幹線は「のぞみ」「みずほ」などが時速300キロ運転で、「こだま」では時速285キロ運転が可能な700系・500系が主に使われています。東北新幹線では、「はやぶさ」「こまち」を除く各列車は時速275キロ。上越新幹線は時速240キロで、北陸新幹線と九州新幹線は共に時速260キロとなっています。
新幹線のうち、最高時速が260キロとなっている区間は、1973年に法律に基づいて整備計画が決定された「整備新幹線」というもの。いずれも計画時にこの速度を設計最高速度にしたことが理由で、架線などの設備もこの速度に対応したものになっています。
なお、これらの路線が今後永久に最高時速260キロのまま、というわけではありません。たとえば、整備新幹線ではありませんが、かつては時速210キロ程度で運転されていた東海道新幹線では、1992年の「のぞみ」デビューによる時速270キロ運転開始を前に、線路や設備を改良しています。JR東日本でも、北海道新幹線の札幌開業に向けた所要時間短縮のため、盛岡~新青森間の速度向上に向けた取り組みを発表しています。