日本において、陸上の移動の主役を担う鉄道では、サービス向上のため、スピードアップに注力してきた歴史がありました。今の日本でスピードアップを掲げることはあまり多くありませんが、それでも過去の積み重ねによって、高速で運転される列車は各地に存在します。
ところで、単に「スピード」といっても、列車の場合は二つの指標があることはご存じでしょうか。絶対的な速さを表す「最高運転速度」と、目的地までの所要時間に対する速度「表定速度」です。今回は、この二つの指標で、日本で最も速い列車をご紹介します。
新幹線と在来線、日本で最も速いのは
日本で「鉄道」として開発された乗り物で、最も速い記録を持つものは、現在はJR東海が開発を進めている「超電導リニア」です。山梨県内の実験線で記録された最高速度は、時速603キロ。鉄道の世界最高速度記録として、ギネスブックにも登録されています。
超電導リニアは、東京~名古屋~大阪間を結ぶ計画の中央新幹線に採用されることが決定済み。現在建設が進んでいる中央新幹線の品川~名古屋間では、その速度自体は最高記録よりも抑えられるものの、時速500キロでの営業運転が予定されており、品川~名古屋間を最速40分で結ぶ計画です。
では、今乗れる鉄道で最も速いものは何でしょうか。それは東北・秋田新幹線の「はやぶさ」「こまち」。最高時速320キロで、東京~仙台間を最速1時間29分、東京~新青森間を最速2時間58分、東京~秋田間を最速3時間37分で結んでいます。
ちなみに、かつての東北新幹線八戸開業時に運転されていた「はやて」では、最高時速が275キロで、東京~八戸間を最速2時間59分で結んでいました。現在の「はやぶさ」は、時速45キロ分の速度向上で、八戸~新青森間に相当する所要時間の短縮を実現したことになります。
新幹線以外、すなわち在来線で最も速いのは、京成電鉄の特急「スカイライナー」。最高時速160キロで、日暮里~空港第2ビル間を最速36分で結んでいます。
北陸新幹線の金沢延伸開業前に運転されていた在来線特急「はくたか」も、かつてはほくほく線内で時速160キロ運転を実施していました。「スカイライナー」と「はくたか」がこの速度での運転を可能としたのは、線形が良いことと、高速走行区間に踏切が無いことが理由。ほかの在来線以上に安全が担保されているのがポイントです。
それ以外の在来線では、時速130キロが最高。特急「ひたち」「サンダーバード」「ひのとり」といった特急列車や、常磐線の特別快速、JR西日本の新快速、つくばエクスプレスなどが、この速度で運転されています。この速度の由来は、非常時の停止距離などを考慮したもの。踏切などで列車の進行方向に異常があった際、目視で確認してから非常ブレーキで停止できる距離は600メートルが限度で、ここから逆算で定められた、と言われています。
さらに私鉄の速度を掘り下げてみると、最高時速130キロとなっているのが、先述した「ひのとり」など、近鉄の特急。最高時速120キロが、東武鉄道、京浜急行電鉄、名古屋鉄道、南海電気鉄道の4社です。阪急電鉄は最高時速115キロ。東急電鉄、京王電鉄、小田急電鉄、京阪電気鉄道、西日本鉄道の最高時速は110キロ。阪神電気鉄道は時速106キロ、西武鉄道は時速105キロ、相模鉄道は時速100キロが、それぞれ最高速度となっています。ただし、これらの数値は各社の全列車の最高速度ではなく、たとえば時速160キロ運転を実施している京成電鉄では、成田スカイアクセス線一般列車の最高時速は120キロ、本線の一般列車では最高時速110キロと、列車や路線によって差が設けられています。
その他の中小私鉄では、都市間輸送を担うJRや大手私鉄のように速度を追求せず、時速80キロや時速60キロに抑えられているものも少なくありません。ただし、最高時速が110キロとなっている愛知環状鉄道や伊勢鉄道のように、高規格な路線で高速運転を実施している事業者も見られます。