JRや大手私鉄の一般形車両では、性能や車両設備などの仕様をそろえ、さらには量産効果によるコスト削減も狙えるため、同じ形式を多く製造することが一般的です。しかしながら、増発目的で数本だけが必要だった、当時は置き換え対象車両がわずかだった、などの理由により、結果的に少数のみの製造で終わってしまう車両も見られます。
試作車両ではないにも関わらず、わずかな製造数で終わってしまった車両たち。その中から、北海道・東日本エリアで現在も活躍を続ける形式をご紹介します。
初めての交直両用通勤型電車
交直両用電車では初めての通勤型車両としてJR東日本が導入したのが、E501系です。
1995年にE501系がデビューした当時、常磐快速線の取手以南では通勤型の103系が使われていましたが、取手以北の土浦・水戸方面から直通する列車では、近郊型の415系が主力でした。
この3ドア・セミクロスシートが基本の415系では、扉数が少ない、セミクロスシートのため乗車効率が悪い、というデメリットがあり、通勤利用客が増えていた常磐線には不適当な車両となりつつありました。国鉄時代末期からはロングシート仕様の415系も導入されてはいましたが、結局は3ドア車両のために抜本的な改善とはなりませんでした。
そこでJR東日本は、京浜東北線に投入された209系の車体に、交直流車両としての機器を組み合わせた形で、E501系を製造。1995年に上野~土浦間の列車に投入し、取手以北からの列車の混雑緩和を図りました。
常磐線における混雑の抜本的解決に用いられると思われたE501系ですが、製造されたのは、10両編成と5両編成がそれぞれ4本の、計60両のみ。全ての415系が置き換えられることはなく、取手以北からの列車では、E501系と415系が共に使用されることとなりました。
415系の置き換えは、2005年に登場したE531系によって実現しました。この際、少数派であったE501系も上野駅発着の列車から撤退することとなり、2007年をもって上野~土浦間での営業運転を終了。現在は、土浦~いわき間の普通列車でのみ運転されています。